31 / 117
第五章その3 ~夢のバカンス!~ 隙あらば玉手の竜宮編
沖縄の宴会! 一度参加してみたい
しおりを挟む
「また急にあったかくなったわね」
鶴の言うとおり、辺りは再び南国の日差しに包まれている。
アスファルトで舗装されていない、土のままの道を進むと、時折古めかしいボンネットバスとすれ違う。
やがてたどり着いたのは、広い平屋の民家だった。
高い石垣や風除けの庭木。漆喰で接着した赤い瓦屋根。
いかにも台風に強そうな、昔ながらの沖縄民家であった。
「せっかくの竜宮ですから、堅苦しいのは抜きで!」
「沖縄の家庭料理をお楽しみ下さい!」
子犬達はそう言って、嬉しそうに跳ね回った。
誠達が玄関に入ると、沢山の靴が所狭しと並んでいた。
いかにも親戚が集まった感じであり、席は座布団にあぐらをかいて座るスタイルである。
いくつも並べられた長テーブルに、どんどんご馳走が運ばれてくるが、そのどれもが沖縄風の家庭料理であった。
有名なゴーヤチャンプルー、ニンジンシリシリもあったし、麺料理はソーキソバにソーミンチャンプルー。
豚の足を煮込んだテビチ、耳皮を刻んだミミガーまでは分かったが、味噌を入れた赤い料理は何か分からなかった。でもおいしい。
他にもお肉の入った炊き込みご飯と、ちょっと勇気のいる香りのヤギ汁。プチプチした海ぶどうも食感が楽しい。
煮物に入っている薄緑で肉厚な野菜は、断面が白くてトロリとした食感だった。正体は不明だ。
誠の大好物・豚の角煮……にそっくりなラフテーも山盛りになっていて、さっそく食べようと思ったが、子犬達が縁側に足を乗せ、目を輝かせていたので分けてあげた。
誠も遅れて食べてみると、意外にあっさりした味付けに加え、皮の食感がプルプルして最高である。文句無しにこれはうまい!
近所の魚が泡盛を持って集まり、べろんべろんに酔っ払って話しかけてくるも、一同は適当に話を合わせて楽しんだ。
料理はどれも好みだし、この場の雰囲気のおかげか、特別に美味しく感じるのだ。
「ええやんええやん、テレビで見たでこういうの。沖縄の人は陽気やし、みんなでワイワイ騒ぐんよな」
難波は関西人なので、すぐ雰囲気に馴染んでくつろいでいる。
誠は箸を置き、ゆっくりと右手を開閉した。
「……痛むの?」
カノンが心配そうに尋ねるので、誠は首を振った。
「いや、今はあんまり。みんなもカノンもいるし、楽しいからかな?」
魔王ディアヌスと戦い、全身の神経に多大なダメージを負ったはずだが、この場にいると、そんな痛みも薄れるようだ。
鳳が横から補足してくれた。
「魔王ディアヌス……八岐大蛇は川の神、海とは逆の気を持ちます。だから竜宮の気を染み渡らせれば、邪気のダメージも回復しやすいはずですよ」
「あ、それでディアヌスは海を渡れなかったんですか」
「そういう事ですね」
宴は更に盛り上がり、完全に出来上がった魚達は、三線の音色に合わせて踊りまくった。
沖縄版・鯛やヒラメの舞い踊りであるが、メンバーのほとんどは熱帯魚であり、元ネタより色鮮やかで綺麗である。
誠達は拍手喝采したが、踊る魚達に混じって、見慣れた若者達の姿が見える。
「久しぶりで楽しいデース!」
「ダディも一緒だ!」
九州で共闘したキャシーとヘンダーソン、そしてその一家は、半透明の姿ながらも楽しげに踊っている。
「やっぱり知り合いに見えますけど……?」
誠が言うと、鳳は気まずそうに咳払いした。
「……オホン、気のせいです。ほ、ほら黒鷹様、おソバおいしいですよ?」
鳳はソーキソバをこちらに手渡して誤魔化した。
鶴やコマ、難波や宮島も踊り始め、魚達が声援を送ってくれる。
鶴に引っ張られて参加したカノンや鳳は遠慮がちであり、照れた様子が微笑ましい。
……とにかく、夢のように楽しい時間だった。
これから日本はどんどん復興していくし、間違いなく楽しい時代がくるはずだ。
素直にそんなふうに思えたのだ。
鶴の言うとおり、辺りは再び南国の日差しに包まれている。
アスファルトで舗装されていない、土のままの道を進むと、時折古めかしいボンネットバスとすれ違う。
やがてたどり着いたのは、広い平屋の民家だった。
高い石垣や風除けの庭木。漆喰で接着した赤い瓦屋根。
いかにも台風に強そうな、昔ながらの沖縄民家であった。
「せっかくの竜宮ですから、堅苦しいのは抜きで!」
「沖縄の家庭料理をお楽しみ下さい!」
子犬達はそう言って、嬉しそうに跳ね回った。
誠達が玄関に入ると、沢山の靴が所狭しと並んでいた。
いかにも親戚が集まった感じであり、席は座布団にあぐらをかいて座るスタイルである。
いくつも並べられた長テーブルに、どんどんご馳走が運ばれてくるが、そのどれもが沖縄風の家庭料理であった。
有名なゴーヤチャンプルー、ニンジンシリシリもあったし、麺料理はソーキソバにソーミンチャンプルー。
豚の足を煮込んだテビチ、耳皮を刻んだミミガーまでは分かったが、味噌を入れた赤い料理は何か分からなかった。でもおいしい。
他にもお肉の入った炊き込みご飯と、ちょっと勇気のいる香りのヤギ汁。プチプチした海ぶどうも食感が楽しい。
煮物に入っている薄緑で肉厚な野菜は、断面が白くてトロリとした食感だった。正体は不明だ。
誠の大好物・豚の角煮……にそっくりなラフテーも山盛りになっていて、さっそく食べようと思ったが、子犬達が縁側に足を乗せ、目を輝かせていたので分けてあげた。
誠も遅れて食べてみると、意外にあっさりした味付けに加え、皮の食感がプルプルして最高である。文句無しにこれはうまい!
近所の魚が泡盛を持って集まり、べろんべろんに酔っ払って話しかけてくるも、一同は適当に話を合わせて楽しんだ。
料理はどれも好みだし、この場の雰囲気のおかげか、特別に美味しく感じるのだ。
「ええやんええやん、テレビで見たでこういうの。沖縄の人は陽気やし、みんなでワイワイ騒ぐんよな」
難波は関西人なので、すぐ雰囲気に馴染んでくつろいでいる。
誠は箸を置き、ゆっくりと右手を開閉した。
「……痛むの?」
カノンが心配そうに尋ねるので、誠は首を振った。
「いや、今はあんまり。みんなもカノンもいるし、楽しいからかな?」
魔王ディアヌスと戦い、全身の神経に多大なダメージを負ったはずだが、この場にいると、そんな痛みも薄れるようだ。
鳳が横から補足してくれた。
「魔王ディアヌス……八岐大蛇は川の神、海とは逆の気を持ちます。だから竜宮の気を染み渡らせれば、邪気のダメージも回復しやすいはずですよ」
「あ、それでディアヌスは海を渡れなかったんですか」
「そういう事ですね」
宴は更に盛り上がり、完全に出来上がった魚達は、三線の音色に合わせて踊りまくった。
沖縄版・鯛やヒラメの舞い踊りであるが、メンバーのほとんどは熱帯魚であり、元ネタより色鮮やかで綺麗である。
誠達は拍手喝采したが、踊る魚達に混じって、見慣れた若者達の姿が見える。
「久しぶりで楽しいデース!」
「ダディも一緒だ!」
九州で共闘したキャシーとヘンダーソン、そしてその一家は、半透明の姿ながらも楽しげに踊っている。
「やっぱり知り合いに見えますけど……?」
誠が言うと、鳳は気まずそうに咳払いした。
「……オホン、気のせいです。ほ、ほら黒鷹様、おソバおいしいですよ?」
鳳はソーキソバをこちらに手渡して誤魔化した。
鶴やコマ、難波や宮島も踊り始め、魚達が声援を送ってくれる。
鶴に引っ張られて参加したカノンや鳳は遠慮がちであり、照れた様子が微笑ましい。
……とにかく、夢のように楽しい時間だった。
これから日本はどんどん復興していくし、間違いなく楽しい時代がくるはずだ。
素直にそんなふうに思えたのだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる