上 下
27 / 87

第27話 岡山県① カキおこ、後楽園

しおりを挟む

 竹田城跡の美しく幻想的な光景を見たあとは一度宿へと戻り朝食を取って一休みする。今回の旅は基本的に昼前くらいの時間帯に出発することが多い。朝一で出発しても観光地が開いていなかったり、お店が開いていないことが多いからな。朝はのんびりと出られるのはありがたい。



「真っ白で美しい城じゃな!」

「それにとても大きなお城ですね」

「姫路城は日本で初めて世界文化遺産に登録された場所なんだ。大天守と3つの小天守の4つの天守閣があることで有名なんだよ。壁が真っ白なのは当時の権力を示すためと、火事を防ぐために白い漆喰しっくいが塗られていたらしいよ」

 さらにこの姫路城は美しいだけでなく、城としての防衛機能も非常に高い。

 壁や土塀には狭間さまと呼ばれる丸型や三角型、四角型の穴がところどころに空いている。城が攻められた時には、この穴から鉄砲や弓矢を使って敵を攻撃する。

 城内は迷路のように枝分かれしており、人ひとりがやっと通れるような『るの門』と呼ばれる門があり、敵の侵入を防ぐようになっている。

 石垣は登れば登るほど急な勾配になっており、登るのは非常に難しくなっており、石垣の上には石落としと呼ばれる仕掛けや、攻撃をするための隠し部屋なんかもあったりする。

 城の仕掛けって戦うための要塞って感じで、男のロマンだよね。ミルネさんも興味がありそうだったが、喜屋武さんはあまり興味がなさそうだった。まあ城の魅力とかって女性にはあまり響かなそうな気もする。



「おお、これはお好み焼きという料理じゃな!」

「そうだね。だけどこれはただのお好み焼きじゃなくて、牡蠣がたくさん入っているカキおこっていうんだよ」

 兵庫県をあとにして岡山県へとやってきた。岡山県備前市にある日生ひなせでは牡蠣をたっぷりと入れたお好み焼きのカキおこが有名だ。

 元々は漁師さん達の間で食べられていたお好み焼きだが、B級グルメのイベントに出たことで一気に有名になったらしい。

「むむ、大阪で食べたお好み焼きとは違うのじゃ! こっちは貝がたくさん入っておるのじゃな!」

「これはすごいですね。ソースの味も強いのですが、牡蠣の量が多いので口の中が牡蠣の味でいっぱいになります」

「このあたりだと牡蠣という貝が有名なんだよ。お好み焼き1枚に10個近く入っているから、本当に贅沢だよね」

 兵庫県、岡山県、広島県の瀬戸内海付近では海の中に豊富な栄養があるため、牡蠣が他の地域よりもよく育つらしい。その牡蠣をたっぷりと使ったお好み焼きだ。うまくないはずがない。

 身が大きく肉厚でプリプリとした食感がたまらない。それに牡蠣は栄養がたっぷりある。他にも牡蠣のバター炒めや蒸し牡蠣や牡蠣入り焼きそばなど、様々な牡蠣料理を出しているが、全部食べていたら次が食べられなくなるのが悲しいところである。



「これは見事な庭園じゃな。妾の国の庭園とは少し様式が違うみたいじゃが、これはこれでとても見事じゃ!」

「ここは後楽園といって日本三大庭園のうちのひとつだよ。確かに日本の庭園はこの世界の外国と比べても、独特な雰囲気なものが多いからね」

 続けて移動してきたのは、偕楽園、兼六園と並ぶ日本三大庭園のひとつである後楽園である。後楽園は1700年ごろに作られた庭園で、四季に渡って様々な花を見ることができ、多くの行事を行なっている。

 この時期は梅が見どころのようだな。4月とかだと桜やツツジや藤などといった多くの花が見どころらしい。夜にはライトアップされた幻想庭園というものまで楽しめるようだ。

 日本の庭園は和をイメージして作られているため、外国のそれとはだいぶ異なっている。大きな池には岡山城や松などが綺麗に映っており、池を渡す橋や石などは日本の美をよく表している。

「朝に見た竹田城もそうじゃが、本当にこの国は美しい景色があるのじゃな」

「別の世界から来たミルネさんにそう言ってもらえると嬉しいよ」

「じゃが、妾達の国の景色も素晴らしいものはあるのじゃぞ! 確かに料理としては完敗かもしれんが、食材の方は美味なものも多くあるのじゃ!」

「ああ。もちろんそれぞれの国に他の国とは違った誇れるものがある。難しいかもしれないけれど、この旅が終わったらミルネさんの国を見てみたい気がするよ」

「さすがに今は難しいかもしれませんが、いつかは食材の交易などができるようになり、お互いの国に行き来できるようになるかもしれませんからね」

 もしかしたら食文化や技術なんかはこちらの世界のほうが進んでいるかもしれないが、ミルネさんの国はミルネさんの国で、綺麗な景色や美味しい食材があるに違いない。難しいかもしれないが、いつかはミルネさんの世界にも行ってみたいものである。

「うむ! その時は妾自らが2人を招待するのじゃ!」

「……ありがとうございます。ミルネ様のお気持ち、本当に嬉しいですよ」

「期待しているよ。特にこちらの世界にはドラゴンは存在しないから、ドラゴンの肉を食べてみたいな」

「任せておくのじゃ!」

 うむ、ドラゴン肉のお中元、期待しているぞ。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...