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ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜

第54話 もうすぐドラゴンが地面に激突する

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 耳をつんざく音がして、電撃が空気の層に襲いかかった。

 何ヶ所かに穴があく。そこを通り抜けた光が、ドラゴンの羽根に穴を穿ち、リアムの足元近くを焦がす。肉を焼ける臭いが、そこかしこから立ちのぼる。

「セイっ!」
 リアムはあわててうしろを振り向いた。
 セイが倒れている周りからぶすぶすと煙があがっていた。リアムがカッと目を見開く。
 だが、セイが軽く手を挙げて、駆け寄ろうとしたリアムを制した。

「だ、だいじょう……ぶです。当たってません」
「あ、ああ……」
「次の攻撃がきます」

 セイにうながされてリアムは諸手をあげて、空気の層を強化した。

「セイ! もうすぐドラゴンが地面に激突する。きみだけでも逃げられるか? わたしはあの攻撃を受け流すだけで精いっぱいだ」
「なんとかお腹の修復はできました……でも……」
「上出来だよ、セイ。並の精神力じゃあねぇな。しかもこんな短時間で」

 そう言った瞬間、上空からハマリエルの攻撃。
 今度は派手な音も、振動もなかった。
 ただバスッと空気の壁を貫いて、一条のビームがドラゴンのからだを突き抜けただけだった。そのビームはリアムから数十センチ先に当たり、ぽっかりと穴をあけた。ドラゴンのぶ厚いからだを完全に貫くほどの威力。
 リアムは足元に空いた穴を見おろした。
 フリスビーほどのサイズの穴から地表が見えた。
 ぐんぐんとロワール川の水面が近づいてくるのがわかる。

「セイ、時間がない! 速く逃げろっ!」
「どうやって? ぼくは空を飛べやしませんよ」
「刀を…… 自分で浮かせた剣につかまれ!」

 セイが軽くうなずいた。顔をしかめながら右腕を上に挙げると、中空から日本刀を呼びだした。セイは刀の柄をぐっとつかんでから言った。
「リアムさん、あなたはどうするつもりです?」
「心配するな。自分の身ひとつくらいなんとかできるよ」

 セイは口元をかるくゆるめると、掲げもった日本刀に力をこめた。刀身に光がつつまれるやいなや、セイのからだはあっと言う間に空へと飛び去っていった。
 刀の浮遊する力で上空に留まるセイをみあげて、リアムは「よしっ!」と気合いをいれた。自分自身を墜落の衝撃から守るために、足元に空気の層を展開しようと、手を下にむけた。

 そのとき、ドラゴンの背中を突き抜けた穴からなにかが飛び出した。
 それがなにかはわからなかった。
 だがリアムはそれを避けきれなかった。

 ドラゴンの身体が轟音をたてて、地面に激突した。衝撃でドラゴンの長い尾っぽがおおきくしなり、ロワール川の水面を渾身の力で打ちつけた。


 数十メートルもの水柱があがり、あたりに激しい水音と一緒に水をまき散らした。
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