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ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
第34話 ジャンヌ、撃たれる
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ジャンヌはグラスデールを睨みつけると、突然要塞のほうへ駆け出した。
「ジャンヌ! 危険だ!」
セイはとっさに叫んだが、ジャンヌは聞く耳をもたなかった。堀に身を踊らせると、ちかくに倒れていたはしごを壁に建てかけ、一目散に上へあがりはじめた。
あまりにも衝動的な動きだったため、セイもジャンもその行動をとめられなかった。
数段あがったところで、上から狙いすませた矢が、ジャンヌのからだを射ぬいた。
ジャンヌは力なく堀へと落下していった。
「ジャンヌ!!!」
セイだけでなく、それを見ていただれもがおもわず彼女の名を叫んでいた。
と同時に要塞の上から、イングランド軍から歓声が湧きあがっていた。
「悪魔をやったぞ」
「淫売をしとめた」
「捕まえて、さらし者にしろ」
数名のイングランド兵が砦をでて、ジャンヌのほうへむかってくるのが見えた。
セイはジャンヌの元へ走ったが、すでにそこにはラ・イール、ジル・ド・レ、そしてル・バタールが集まっていて、彼女を担ぎ出そうとしていた。
「ラ・イール。ジャンヌの傷は!」
「セイ殿、心配ない。首と肩のまんなかあたりだ。命に別状はない!」
ラ・イールがセイ以外にも聞こえるように叫んだ。怒っているような口調だったが、なによりもジャンヌにむかって忠告しているように聞こえた。
戦場から連れ出されて、草の上に寝かされ武具を外すと、矢がうしろまで突き抜けていることがわかった。
「思ったより深い」
「だが急所をはずしている。大丈夫だ」
ル・バタールやラ・イールたちの間でいろいろな意見が飛び交う。
ふいにジャンヌの目から涙がつたった。
「痛いのかい。ジャンヌ」
セイが声をかけると、ジャンヌは首を横にふった。
「ううん。神の子、セイ。怖いの」
「戦争だもの。だれだって怖いよ」
「ちがうの。神の御心に導かれて、ここまで来たのに、もしかしたらそれを果たせず死んでしまうかもしれない、って思ったら……怖くなって……」
「大丈夫。きみはそんなことにならない」
「神の子、セイ。手を握っててくれる」
セイはジャンヌの手をぎゅっと握りしめた。
その瞬間、ル・バタールがジャンヌの肩口から、矢を引き抜いた。
ジャンヌは痛みに顔をしかめてセイの手を握りつぶしそうなほどの力で握りしめた。だが彼女は声をあげることも、泣き言をいうこともなかった。それどころか、オリーブ油と脂肪を塗って包帯を巻くだけという、当時のありきたりの治療を受けると、ジャンヌはふたたび甲冑を身にまといはじめた。
「な、なにをするんだい」
「戦場に戻るのです」
「そんな無茶な。なんできみはそんなにまでして戦うんだ?」
「神がお命じになるからです、セイ」
「ジャンヌ! 危険だ!」
セイはとっさに叫んだが、ジャンヌは聞く耳をもたなかった。堀に身を踊らせると、ちかくに倒れていたはしごを壁に建てかけ、一目散に上へあがりはじめた。
あまりにも衝動的な動きだったため、セイもジャンもその行動をとめられなかった。
数段あがったところで、上から狙いすませた矢が、ジャンヌのからだを射ぬいた。
ジャンヌは力なく堀へと落下していった。
「ジャンヌ!!!」
セイだけでなく、それを見ていただれもがおもわず彼女の名を叫んでいた。
と同時に要塞の上から、イングランド軍から歓声が湧きあがっていた。
「悪魔をやったぞ」
「淫売をしとめた」
「捕まえて、さらし者にしろ」
数名のイングランド兵が砦をでて、ジャンヌのほうへむかってくるのが見えた。
セイはジャンヌの元へ走ったが、すでにそこにはラ・イール、ジル・ド・レ、そしてル・バタールが集まっていて、彼女を担ぎ出そうとしていた。
「ラ・イール。ジャンヌの傷は!」
「セイ殿、心配ない。首と肩のまんなかあたりだ。命に別状はない!」
ラ・イールがセイ以外にも聞こえるように叫んだ。怒っているような口調だったが、なによりもジャンヌにむかって忠告しているように聞こえた。
戦場から連れ出されて、草の上に寝かされ武具を外すと、矢がうしろまで突き抜けていることがわかった。
「思ったより深い」
「だが急所をはずしている。大丈夫だ」
ル・バタールやラ・イールたちの間でいろいろな意見が飛び交う。
ふいにジャンヌの目から涙がつたった。
「痛いのかい。ジャンヌ」
セイが声をかけると、ジャンヌは首を横にふった。
「ううん。神の子、セイ。怖いの」
「戦争だもの。だれだって怖いよ」
「ちがうの。神の御心に導かれて、ここまで来たのに、もしかしたらそれを果たせず死んでしまうかもしれない、って思ったら……怖くなって……」
「大丈夫。きみはそんなことにならない」
「神の子、セイ。手を握っててくれる」
セイはジャンヌの手をぎゅっと握りしめた。
その瞬間、ル・バタールがジャンヌの肩口から、矢を引き抜いた。
ジャンヌは痛みに顔をしかめてセイの手を握りつぶしそうなほどの力で握りしめた。だが彼女は声をあげることも、泣き言をいうこともなかった。それどころか、オリーブ油と脂肪を塗って包帯を巻くだけという、当時のありきたりの治療を受けると、ジャンヌはふたたび甲冑を身にまといはじめた。
「な、なにをするんだい」
「戦場に戻るのです」
「そんな無茶な。なんできみはそんなにまでして戦うんだ?」
「神がお命じになるからです、セイ」
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