『忘れられた公爵家』の令嬢がその美貌を存分に発揮した3ヶ月

りょう。

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礼を取ったセスティーナは頭を上げるといつものようにニコリとほほ笑んだ。

「それ、わたくしのことが書かれている資料でしょう?」

彼女が指を指したのは、先ほどまでレイモンドが手に持っていた資料だった。
アルバードは驚いた表情でセスティーナを見つめ、レイモンドは諦めたように頬杖をついた。
先ほど自らを国宝と告げ、そして渡されている資料を言及しようとしているセスティーナに、レイモンドは待ったをかける。

「セスティーナ、これは国家機密であり、皇太子にしか受け継がない内容だよ」
「ええ、ですがアルバード様は血縁関係となりますから」
「私はお前の夫になるなど一言も言っていないだろう!」

セスティーナはニコニコとほほ笑みながらレイモンドを見ると、そういえば、と違う話を始めた。
全く話を聞かないセスティーナにレイモンドとアルバートは呆気にとられながら、しかし、彼女の話に耳を傾ける。

「そういえば、防御膜?でしたか。あれを付け替えるようお父様と話し合いましたの。だってそろそろこの国も外部とのやり取りを行う必要がありますでしょう?国の中だけでは人がただ増え続けるだけだし、文化もそろそろ発展が進まなくなっているし。すべての地域が国の名産と成りえる状態になった今が最適!そう思いませんか?」
「セスティーナ、私もまだ資料を全て目を通した訳ではないんだ。順を追って説明してくれないか」
「あらあら、うふふ。ではここは国宝、いいえ、使らしく、魔法で解説いたしますわ!」

パチン!

セスティーナが指を鳴らすと一瞬にして周りの景色が変化した。
先ほどまで執務室の中にいたはずが、どこか街の中にいるようだ。

「な、これは……」
「安心してくださいませ、場所は移動しておりません。貴方方の視界を、少々切り替えさせていただきました」


セスティーナが述べた通り、街を歩く人々は急に現れた3人の事を全く気にするそぶりはない。
ふと、レイモンドはある事に気がついた。
まるで本物の火が止まったような電灯が、街に点在している。
何より驚いたことは動く鉄の塊が動いていることだった。


「……」
「外では化学という学問が発展して、どんどんと国が発展しております。これはほんの一部に過ぎませんわ。まだこれらは全て高価な物として一般には普及していませんが、きっと……」
「なるほどな……他国との文化の差が大きくなる前に、門を開けるべきと言うことか」
「ええ、陛下にお伝えした際に、レイモンド様がこの催しを開催したタイミングがよいだろうと言われましたわ」


レイモンドは微笑むセスティーナに目を向けた。目が合った彼女はここ数か月間の中で最も美しい表情をしているように見える。

今まで外との関わりを断つ事で国を安定させていたが、このままでは防御膜では塞ぎきれない何かが開発される可能性だってあるだろう。

確かに外との交流を持つには良いタイミングかもしれない。


しかし……

「セスティーナ……」
「はい?」
「先ほど、魔法使いと言っていたかな。まぁ、今の状況も魔法以外何と説明して良いか分からないけど」
「ええ!魔法使いの説明はその、資料を読んでくださいませ」

レイモンドが視線を下げると、周りの景色は消えて部屋へと戻って来ていた。
現実を突きつけるように多量の資料が目に入り、無意識にため息が漏れる。

「これを読んでいたらこの後のパーティに参加できないな……」
「それはいけませんわ!メレディ様とちゃんと交流していただきませんと!」
「あ、ああ……まぁ」
「は!!今兄上に近寄る不届きものの名前が!」


少し目を泳がせたレイモンドを確認したアルバードは、しかし、左腕をセスティーナにガッチリと掴まれている事に気がつく。

「な、何を」
「アルバード様、さぁ、わたくしと交流しましょう!先ほどの国の事、気になってますでしょう?」

先ほどの光景を目を輝かせて見回していた事を見られていたのだろう。
セスティーナは、ここぞとばかりに「もっと見ますか?」と言ってくる。

「う、うう……」

断りきれない状況につけ込まれたアルバードは、気がつけばセスティーナとレイモンドの話し合いを数時間ほど待っていたのだった。
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