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#155 健康診断の時間割り作り
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食堂、昼の営業を終えると、茂造が何枚かの用紙と付けペン、インクを手にダイニングに現れる。
壱は珈琲を、サユリはミルクを飲んで一息吐いているところだった。
「ノルドに渡す、健康診断の時間割を作るからの。邪魔するぞい」
「うん。紅茶淹れる?」
「おお、それはありがたいのう。よろしくの」
茂造はテーブルで早速作業を始め、壱は紅茶を淹れる為にキッチンに立つ。
まずは薬缶で湯を沸かす。蓋がカタカタと鳴るまでに沸騰させて。
まずはその湯でティポットを温める。
茶葉をスプーンで量り、温めたティポットに入れ、湯を静かに注いで行く。
蓋をして、蒸らし時間は3分程。砂時計などは無いので、適当に時計を見て測る。
時間になったら温めたティカップに入れる訳だが。紅茶は高い所から空気に触れさせながら注ぐと風味が立つと聞くが、あまり高くしてしまうと跳ねて周りを汚してしまう。
掃除が面倒と言うよりは、勿体無い気がしてしまうので、跳ねない高さを保ちつつ、慎重に注いて行く。
「はい、じいちゃん、紅茶入ったよ」
「ありがとうのう。良い香りじゃ」
茂造は手を止めて、早速ティカップを持ち上げ、そっと一口。
「うん、旨いのう。壱は紅茶を淹れるのも巧いんじゃな」
「本当? ありがとう」
壱は普段紅茶を飲まないので、淹れる事も殆ど無い。なのであまり慣れていないので、世辞でもそう言って貰えると安心する。
茂造はこうやっていつも壱を褒めてくれる。爺馬鹿な面もあるのかも知れないが、褒めて伸ばす手段なのかも知れない。
壱は叱られてもそれを素直に聞き入れる質である。
実際、実家の味噌蔵で修行していた時はしょっちゅうお叱りを受けていた。なので叱られ慣れていると言うとおかしいかも知れないが、それを嫌な事だとは捉えていないのだ。
茂造も、壱が悪い事をしてしまえば叱るだろう。しかしこれまでその機会は無かった。それはそれで、喜ばしい事なのだろう。
茂造は何口か紅茶を口にした後、また付けペンを手にし、作業を続ける。壱が珈琲を啜りながら手元を見ると、淀み無く描かれる、やはり壱には読めない、しかしやや見慣れつつある、この世界の文字。
壱も早く覚えなければと、あらためて思う。
そうして壱とサユリにとっては静かな時間が流れ──
「ふむ、こんなもんかのう」
茂造から声が上がった。小さく息を吐き、手元で数枚の用紙を揃えている。
「時間割り出来たの? 見せて」
「ふむ」
茂造に手渡され、壱は上から順に見てみる。が、やはり。
「読めない……」
がっくりと項垂れる。その様子を見て、茂造はおかしそうにほっほっほっと笑う。
「明日には文字の一覧表を作ってやるからの。勉強してみたら良いぞい」
「そうする」
そう言い時間割りを茂造に返そうとすると、サユリが口を開いた。
「壱、我にも見せるカピ」
そう言われ、サユリの前に並べて置いてやる。
「ふむ」
サユリはそれをじっくりと眺め、やがて納得した様に頷いた。
「良いカピな。これなら仕事も滞る事無く行けるカピ」
「サユリさんにそう言って貰えたら、益々安心じゃの。ではの、夜にノルドに渡してやるかの」
その時、壱は時計を見る。休憩時間はまだ少しあった。
「じいちゃん、俺少し散歩に行って来るから、渡して来ようか? 営業中だったら、俺らは良いけど、ノルドさんが恐縮しそう」
「そうじゃの。ではそうしてもらおうかの」
茂造が頷くと、壱はサユリの前に広げていた時間割りを取り、それぞれの右上に振られている番号順に重ね、揃える。
「壱よ、ノルドなら察すると思うが、念の為、埋めるのに聞きに行く時間帯も、この時間割りに合わせてくれたら良いと、伝えてくれんかの」
「解った。じゃあ行って来るね。サユリはどうする?」
「……行くカピ」
サユリは言うと、のっそりと立ち上がり、床に降りた。
ノルドの診療所の場所は聞いていたので、行った事の無い壱でも迷う事無く到着する。
横に広く作り直されたであろう木製のドアの横には、やはり壱には読めない文字で書かれた、木造りの看板。多分「診療所」とでも書かれているのだろうが。
ドアをノックしてみる。しかし返事は無かった。奥にでもいて聞こえないのだろうか。
「いないのかな」
「開けて声を掛けてみたら良いカピ」
「え、良いの?」
「大丈夫カピ」
壱は遠慮しつつ、静かにドアを開ける。そっと中を覗いてみると、電気は消えていたが、カーテンが開かれた窓から陽の光が入って、中の様子が良く見えた。
待合室になっているのだろうか、壁際に数人が座れるベンチが置かれている。そしてそう広くは無い空間の奥にはドアが3つ。それぞれ診察室、患者用の手洗い、居住スペースへのドアだと思われる。
「こんにちはー!」
奥に向かって大きな声で呼んでみる。するとドア越しに、どのドアからは判らないが、「はい!」と張りのある返事があった。
ややあって、ノルドは右側のドアから姿を現した。
「おや、イチくんとサユリさん、こんにちは。どうしました? 不調でもありましたか?」
「いえ。昨日じいちゃんが言ってた、健康診断の時間割りを持って来たんです」
言いながら用紙を差し出すと、ノルドは眼を見開いた。
「そんな、わざわざ持って来てくれたのですか!? 夜に頂きに行くつもりでしたのに!」
恐縮し、狼狽えるノルド。予想はしていた事だが。
「ああでも、営業中でもお時間を頂くのは申し訳無いと常々」
これも予想の通りだ。勿論どちらも、壱たちにとっては何でも無い事なのだが。
「大丈夫ですよノルドさん。そんなに恐縮しないでください。俺たちの方が恐縮してしまいますよ」
壱が笑みを浮かべながら言うと、ノルドはまだ慌てた様に頭を下げた。
「そう言っていただけると……ありがとうございます」
「いえいえ、本当に」
ノルドにプレッシャーを与えない様にと、笑みを絶やさない。
そんなノルドを見て、サユリはやや呆れた様に小さく息を吐いた。
「では、この時間割りはありがたく活用させていただきます。ええと」
壱から時間割りを受け取ったノルドは、それに素早く眼を通す。
「皆さまにお伺いするのも、この時間割りに沿うのが良いですね」
「はい」
やはりノルドは医者だけあって、頭も良いのだろう。茂造の想像通りだった。
「明日の朝から回って行きましょう。俺、朝いちは苗の水遣りがあるんで、それが終わったらここに来ますね」
「ああいいえ、そこまでご足労させる訳には。私が迎えに行きますので、壱くんは食堂でお待ちください」
ここはノルドの性格的に、そうした方が良さそうだ。
「じゃあお願いします。待ってますね」
「はい。明日、よろしくお願いします」
壱の台詞に、ノルドはまた頭を下げた。
壱は珈琲を、サユリはミルクを飲んで一息吐いているところだった。
「ノルドに渡す、健康診断の時間割を作るからの。邪魔するぞい」
「うん。紅茶淹れる?」
「おお、それはありがたいのう。よろしくの」
茂造はテーブルで早速作業を始め、壱は紅茶を淹れる為にキッチンに立つ。
まずは薬缶で湯を沸かす。蓋がカタカタと鳴るまでに沸騰させて。
まずはその湯でティポットを温める。
茶葉をスプーンで量り、温めたティポットに入れ、湯を静かに注いで行く。
蓋をして、蒸らし時間は3分程。砂時計などは無いので、適当に時計を見て測る。
時間になったら温めたティカップに入れる訳だが。紅茶は高い所から空気に触れさせながら注ぐと風味が立つと聞くが、あまり高くしてしまうと跳ねて周りを汚してしまう。
掃除が面倒と言うよりは、勿体無い気がしてしまうので、跳ねない高さを保ちつつ、慎重に注いて行く。
「はい、じいちゃん、紅茶入ったよ」
「ありがとうのう。良い香りじゃ」
茂造は手を止めて、早速ティカップを持ち上げ、そっと一口。
「うん、旨いのう。壱は紅茶を淹れるのも巧いんじゃな」
「本当? ありがとう」
壱は普段紅茶を飲まないので、淹れる事も殆ど無い。なのであまり慣れていないので、世辞でもそう言って貰えると安心する。
茂造はこうやっていつも壱を褒めてくれる。爺馬鹿な面もあるのかも知れないが、褒めて伸ばす手段なのかも知れない。
壱は叱られてもそれを素直に聞き入れる質である。
実際、実家の味噌蔵で修行していた時はしょっちゅうお叱りを受けていた。なので叱られ慣れていると言うとおかしいかも知れないが、それを嫌な事だとは捉えていないのだ。
茂造も、壱が悪い事をしてしまえば叱るだろう。しかしこれまでその機会は無かった。それはそれで、喜ばしい事なのだろう。
茂造は何口か紅茶を口にした後、また付けペンを手にし、作業を続ける。壱が珈琲を啜りながら手元を見ると、淀み無く描かれる、やはり壱には読めない、しかしやや見慣れつつある、この世界の文字。
壱も早く覚えなければと、あらためて思う。
そうして壱とサユリにとっては静かな時間が流れ──
「ふむ、こんなもんかのう」
茂造から声が上がった。小さく息を吐き、手元で数枚の用紙を揃えている。
「時間割り出来たの? 見せて」
「ふむ」
茂造に手渡され、壱は上から順に見てみる。が、やはり。
「読めない……」
がっくりと項垂れる。その様子を見て、茂造はおかしそうにほっほっほっと笑う。
「明日には文字の一覧表を作ってやるからの。勉強してみたら良いぞい」
「そうする」
そう言い時間割りを茂造に返そうとすると、サユリが口を開いた。
「壱、我にも見せるカピ」
そう言われ、サユリの前に並べて置いてやる。
「ふむ」
サユリはそれをじっくりと眺め、やがて納得した様に頷いた。
「良いカピな。これなら仕事も滞る事無く行けるカピ」
「サユリさんにそう言って貰えたら、益々安心じゃの。ではの、夜にノルドに渡してやるかの」
その時、壱は時計を見る。休憩時間はまだ少しあった。
「じいちゃん、俺少し散歩に行って来るから、渡して来ようか? 営業中だったら、俺らは良いけど、ノルドさんが恐縮しそう」
「そうじゃの。ではそうしてもらおうかの」
茂造が頷くと、壱はサユリの前に広げていた時間割りを取り、それぞれの右上に振られている番号順に重ね、揃える。
「壱よ、ノルドなら察すると思うが、念の為、埋めるのに聞きに行く時間帯も、この時間割りに合わせてくれたら良いと、伝えてくれんかの」
「解った。じゃあ行って来るね。サユリはどうする?」
「……行くカピ」
サユリは言うと、のっそりと立ち上がり、床に降りた。
ノルドの診療所の場所は聞いていたので、行った事の無い壱でも迷う事無く到着する。
横に広く作り直されたであろう木製のドアの横には、やはり壱には読めない文字で書かれた、木造りの看板。多分「診療所」とでも書かれているのだろうが。
ドアをノックしてみる。しかし返事は無かった。奥にでもいて聞こえないのだろうか。
「いないのかな」
「開けて声を掛けてみたら良いカピ」
「え、良いの?」
「大丈夫カピ」
壱は遠慮しつつ、静かにドアを開ける。そっと中を覗いてみると、電気は消えていたが、カーテンが開かれた窓から陽の光が入って、中の様子が良く見えた。
待合室になっているのだろうか、壁際に数人が座れるベンチが置かれている。そしてそう広くは無い空間の奥にはドアが3つ。それぞれ診察室、患者用の手洗い、居住スペースへのドアだと思われる。
「こんにちはー!」
奥に向かって大きな声で呼んでみる。するとドア越しに、どのドアからは判らないが、「はい!」と張りのある返事があった。
ややあって、ノルドは右側のドアから姿を現した。
「おや、イチくんとサユリさん、こんにちは。どうしました? 不調でもありましたか?」
「いえ。昨日じいちゃんが言ってた、健康診断の時間割りを持って来たんです」
言いながら用紙を差し出すと、ノルドは眼を見開いた。
「そんな、わざわざ持って来てくれたのですか!? 夜に頂きに行くつもりでしたのに!」
恐縮し、狼狽えるノルド。予想はしていた事だが。
「ああでも、営業中でもお時間を頂くのは申し訳無いと常々」
これも予想の通りだ。勿論どちらも、壱たちにとっては何でも無い事なのだが。
「大丈夫ですよノルドさん。そんなに恐縮しないでください。俺たちの方が恐縮してしまいますよ」
壱が笑みを浮かべながら言うと、ノルドはまだ慌てた様に頭を下げた。
「そう言っていただけると……ありがとうございます」
「いえいえ、本当に」
ノルドにプレッシャーを与えない様にと、笑みを絶やさない。
そんなノルドを見て、サユリはやや呆れた様に小さく息を吐いた。
「では、この時間割りはありがたく活用させていただきます。ええと」
壱から時間割りを受け取ったノルドは、それに素早く眼を通す。
「皆さまにお伺いするのも、この時間割りに沿うのが良いですね」
「はい」
やはりノルドは医者だけあって、頭も良いのだろう。茂造の想像通りだった。
「明日の朝から回って行きましょう。俺、朝いちは苗の水遣りがあるんで、それが終わったらここに来ますね」
「ああいいえ、そこまでご足労させる訳には。私が迎えに行きますので、壱くんは食堂でお待ちください」
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「じゃあお願いします。待ってますね」
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