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#156 藁をいただきに行きましょう
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サユリと並んで食堂に戻る途中、壱は藁が欲しかった事を思い出す。
「サユリ、麦畑に寄りたいんだけど」
「良いカピよ」
方向転換、麦畑に向かう。
鰹のタタキを作るのに使うのだ。今日の夜営業に使う魚類と一緒に入荷して貰う様に、漁師に頼んである。
漸く藁焼きのタタキが食べられる。壱は高知料理屋でいただいたタタキを思い出し、楽しみで喉を鳴らす。
麦畑に着くと、精麦小屋の横に茶色く乾燥した藁が積まれていた。その殆どが牛や豚などの餌になる。
その中から2掴み分でも貰えると嬉しいのだが。
畑仕事に勤しんでいる女性に声を掛けた。
「ボニーさん、こんにちは」
「あら、イチくんサユリさん、こんにちは」
明るい笑顔で返してくれた。
「藁を分けて貰いたいんですけど、良いですか?」
「良いよ。どれぐらいいる?」
言いながら藁の山に向かって歩き出す。壱は後に付いて行った。
「2掴みとかあれば有難いです」
「そんなもんで良いの? もっと持って行きなよ」
「でも家畜の餌にするって聞いてるので」
「全部じゃ無いから大丈夫だよ。でも何に使うの? 肥料か何か?」
「肥料にもなるんですか?」
「なるよ。余った分は麦畑の肥料にしてるよ。だから大丈夫なの」
「じゃ、じゃあ3掴みくらい?」
「あははっ、欲が無いねぇ」
ボニーは楽しそうに笑い、藁山に手を伸ばすと、両腕でごっそりと藁を抱え上げた。
「ほら、持ってって」
そう言いながら、藁の束を壱に押し付ける様に。
「わっ、こんなに! 良いんですか?」
「良いんだって。余ったら裏庭にでも撒いておいたら良いよ」
「じゃあ有り難くいただきますね。ありがとうございます!」
これだけあれば何節分のタタキが作れるか。しかしこれで余裕を持って作れそうだ。何せ藁の燃える速度が判らないのだから。
「何に使うの?」
「これで鰹の表面を炙るんです。美味しいですよ」
「鰹? 臭みがあって村の者は食べないけど、食べるの?」
ボニーがやや驚き、興味深げに訊いて来る。
「俺の世界では良く食べられるんですよ。表面だけを焼く食べ方が多いんですけど、藁を燃やした炎で炙るのが一番美味しいと思います」
「へぇ、それはちょっと興味あるなぁ」
ボニーが眼を輝かせる。
「食べて貰える機会もあると思います。楽しみにしててください」
「うん。ありがとうね!」
「こちらこそありがとうございました」
壱はボニーに頭を下げ、またサユリと並んで、今度こそ食堂に戻るべく、麦畑を辞した。
「サユリ、麦畑に寄りたいんだけど」
「良いカピよ」
方向転換、麦畑に向かう。
鰹のタタキを作るのに使うのだ。今日の夜営業に使う魚類と一緒に入荷して貰う様に、漁師に頼んである。
漸く藁焼きのタタキが食べられる。壱は高知料理屋でいただいたタタキを思い出し、楽しみで喉を鳴らす。
麦畑に着くと、精麦小屋の横に茶色く乾燥した藁が積まれていた。その殆どが牛や豚などの餌になる。
その中から2掴み分でも貰えると嬉しいのだが。
畑仕事に勤しんでいる女性に声を掛けた。
「ボニーさん、こんにちは」
「あら、イチくんサユリさん、こんにちは」
明るい笑顔で返してくれた。
「藁を分けて貰いたいんですけど、良いですか?」
「良いよ。どれぐらいいる?」
言いながら藁の山に向かって歩き出す。壱は後に付いて行った。
「2掴みとかあれば有難いです」
「そんなもんで良いの? もっと持って行きなよ」
「でも家畜の餌にするって聞いてるので」
「全部じゃ無いから大丈夫だよ。でも何に使うの? 肥料か何か?」
「肥料にもなるんですか?」
「なるよ。余った分は麦畑の肥料にしてるよ。だから大丈夫なの」
「じゃ、じゃあ3掴みくらい?」
「あははっ、欲が無いねぇ」
ボニーは楽しそうに笑い、藁山に手を伸ばすと、両腕でごっそりと藁を抱え上げた。
「ほら、持ってって」
そう言いながら、藁の束を壱に押し付ける様に。
「わっ、こんなに! 良いんですか?」
「良いんだって。余ったら裏庭にでも撒いておいたら良いよ」
「じゃあ有り難くいただきますね。ありがとうございます!」
これだけあれば何節分のタタキが作れるか。しかしこれで余裕を持って作れそうだ。何せ藁の燃える速度が判らないのだから。
「何に使うの?」
「これで鰹の表面を炙るんです。美味しいですよ」
「鰹? 臭みがあって村の者は食べないけど、食べるの?」
ボニーがやや驚き、興味深げに訊いて来る。
「俺の世界では良く食べられるんですよ。表面だけを焼く食べ方が多いんですけど、藁を燃やした炎で炙るのが一番美味しいと思います」
「へぇ、それはちょっと興味あるなぁ」
ボニーが眼を輝かせる。
「食べて貰える機会もあると思います。楽しみにしててください」
「うん。ありがとうね!」
「こちらこそありがとうございました」
壱はボニーに頭を下げ、またサユリと並んで、今度こそ食堂に戻るべく、麦畑を辞した。
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