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もっと、もっと早く。エディに早く会いたいがために、馭者を急かすコーリー。まあ、落ち着きなさいとやんわり宥めるルソー伯爵。
「あまり速度を上げると、危険なんだ」
「けど、お父様。あたし、お兄様が心配で……」
「なに。いくらなんでも、命にかかわるようなことは、ジェンキンス伯爵たちもせんだろう」
「だって、お兄様はミアに脅迫されているんですよ?!」
こんなやり取りをすること、数日。ルソー伯爵とコーリーは、予定通りの日数で、ジェンキンス伯爵の屋敷に辿り着いた。
コーリーは、やっとね、と意気込んでいたが、ルソー伯爵は、屋敷を囲う兵士の数に、冷や汗をかいていた。
「ようこそ。旦那様たちが、中でお待ちです」
屋敷の執事が、馬車から降りてきたルソー伯爵とコーリーに、にこりと応対する。それすらルソー伯爵は、肝が冷える思いだったが、コーリーは、相変わらずだった。
「なによ、その態度。この犯罪者一家が。早くお兄様を返してよ!」
「コ、コーリー! よしなさい」
「どうしてよ、お父様。本当のことでしょ?」
「いいから。話し合いは私に任せて、お前は静かにしていなさい。いいね?」
コーリーはあからさまに不満そうだったが、これもエディを取り戻すためだと告げると、すぐに納得した。
「わかったわ。腐っても、相手も貴族ですもの。うまい交渉をしないといけないのね」
「あ、ああ……」
ちらっと執事を見る。顔色一つ変えず、背筋を崩すことなく、立っている。会話は、絶対に聞こえていたはずなのに。
(……いや、臆することはない。暴力を振るったのは、あちらなのだから)
被害者はこちらだ。なにを怖れることがある。兵士をわざわざ屋敷に集めて脅すとは、なんと卑怯なことか。コーリーが怒るのも無理はないな。
なかば奮い立たせるように自分たちの行いを正当化したルソー伯爵は、執事に向き直り、ふんと胸を張った。
「ジェンキンス伯爵の元に、案内してもらおうか」
「かしこまりました」
ゆるりと腰を折る執事。
その目がちらりとも笑っていないことに、ルソー伯爵も、コーリーも気付かない。
まわりにいる兵士たちの視線も、なにも。
「あまり速度を上げると、危険なんだ」
「けど、お父様。あたし、お兄様が心配で……」
「なに。いくらなんでも、命にかかわるようなことは、ジェンキンス伯爵たちもせんだろう」
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こんなやり取りをすること、数日。ルソー伯爵とコーリーは、予定通りの日数で、ジェンキンス伯爵の屋敷に辿り着いた。
コーリーは、やっとね、と意気込んでいたが、ルソー伯爵は、屋敷を囲う兵士の数に、冷や汗をかいていた。
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コーリーはあからさまに不満そうだったが、これもエディを取り戻すためだと告げると、すぐに納得した。
「わかったわ。腐っても、相手も貴族ですもの。うまい交渉をしないといけないのね」
「あ、ああ……」
ちらっと執事を見る。顔色一つ変えず、背筋を崩すことなく、立っている。会話は、絶対に聞こえていたはずなのに。
(……いや、臆することはない。暴力を振るったのは、あちらなのだから)
被害者はこちらだ。なにを怖れることがある。兵士をわざわざ屋敷に集めて脅すとは、なんと卑怯なことか。コーリーが怒るのも無理はないな。
なかば奮い立たせるように自分たちの行いを正当化したルソー伯爵は、執事に向き直り、ふんと胸を張った。
「ジェンキンス伯爵の元に、案内してもらおうか」
「かしこまりました」
ゆるりと腰を折る執事。
その目がちらりとも笑っていないことに、ルソー伯爵も、コーリーも気付かない。
まわりにいる兵士たちの視線も、なにも。
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