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第2章
side フリード④
しおりを挟むキースを一足早く帰国させた後、俺も残りのやるべき事の調整を整えようやく帰国の目処がたった。
だが、大っぴらに帰国する旨を明かす事は出来ない。
秘密裏に動くしかなかった。
ニコラスとニコラスについてる貴族達の俺の暗殺計画は消えていない。
協力者の貴族との密書の証拠品は押さえたが(何故かフィーの手元に渡ってしまったが)
俺が帰国する事が知られれば、何か仕掛けてくるかもしれない。
予定より半年早い帰国だ。
これで俺はフィーを取り戻す!
明け方、そう意気込んで密かに帰国した俺の耳に入ってきた情報は驚くものばかりだった。
「ペレントン侯爵子息とミラバース伯爵令嬢の婚約が解消? しかも、ミラバース伯爵令嬢が記憶喪失!?」
「……俺が帰国した時にはすでにそんな事態になっていたんだ」
キースが肩を落として項垂れている。
それもそうだろう。ミラバース伯爵令嬢はキースの溺愛する妹だからだ。
フィーの兄、ユーベル程ではないがキースも中々のシスコンだ。
そんな事になってしまい心配で堪らないだろう。
しかも、ミラバース伯爵令嬢……リリア嬢はフィーの親友だと聞いている。
フィーも心配しているに違いない。
「何故、婚約解消の話が出たんだ?」
「……ニコラス殿下が横槍を入れたらしい」
「また、ニコラスか!!」
俺は頭を抱えた。一体、アイツは何を考えているんだ!?
本当にどうしてしまったんだ……
リリア嬢の事も確かに気になるが、しかし、今はそれよりもー……
「で? キース。何でフィーは今、あんな事になっているんだ?」
「……!」
俺のその言葉にキースの顔が一気に青ざめた。
「俺は、フィーを守って欲しいと言ったはずなんだがな」
フィーは今、地下牢に繋がれている。
昨夜の夜会でニコラスに婚約破棄を突き付けられ、あのありもしないでっちあげの罪による断罪を受けたらしい。
フィーは、何故か一切の反論もせず連行されて行ったと報告を受けた。
「申し訳ございません……」
キースはますます項垂れた。
キースは、その夜会に参加していなかったから、詳しい事は分からないのだろう。
と、いうのもその夜会はニコラスの息がかかった者ばかりを集めた夜会だった。
だからこそ、その場でフィーを庇う者はいなかった。
(……フィーはどんな思いであの場に居たんだ……)
あともう1日早く帰れていれば……
そんな、後悔の気持ちが押し寄せてくる。
しかし、今は後悔した所で事態は変わらない。
とにかくフィーを助ける事が優先だ。
「フィーの所に行く。警備が手薄になるのはいつだ?」
「……今から1時間後の交代の時ならどうにかなるかと思うが、本気か?」
「本気に決まってるだろ。1時間後だな? わかった、用意しろ。それでキース。準備が出来たらお前は家に戻れ。牢には別の者と行く」
「……は?」
キースが何でだ? って顔をする。
「リリア嬢が心配だろ? 彼女はフィーの大切な親友だ。何かあればフィーが悲しむから傍についててやれ」
「フリード……」
俺は急いでフィーの居る牢に向かう準備をする。
フィーを助ける為には、まずは何がなんでもフィーに会って話を聞かなくてはいけない。
「フィー……」
今、彼女は何を思って地下牢に居るのだろう……
◇◇◇
「久しぶりだな、フィー」
地下牢の警備の隙をついて中に忍び込んだ俺はフィーの元へと向かった。
「……な、何故……」
「何故……はこっちのセリフだよ、フィー」
「……」
フィーは、信じられないものを見た!
と、驚愕している。
俺が予定より早く帰国していた事への驚きもあるのだろう。
2年半ぶりに会う彼女は、更に大人の女性になっていて、着せられている服はみすぼらしい服のはずなのに、彼女の美しさは1つも損なわれていなかった。
目の前の鉄格子が邪魔で仕方ない……
今すぐに彼女を抱き締めたい衝動に駆られながらも、俺は口を開く。
「さて、説明してもらおうか? 俺のいない間に君がニコラスの婚約者になっている事。かと思えば今はそのニコラスに婚約破棄を突き付けられて、こんな所に繋がれている理由を、ね」
「…………ど、して……」
俺の言葉に答えるフィーの声はかすれていた。
この待遇のせいか、もしくは俺の登場に驚いたせいなのか……
まさか、2年半ぶりの再会がこんな形になるとは夢にも思っていなかった。
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