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四話 水着少年飛び出し事件 其ノ参
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僕と流維君は幼なじみだ。父親同士の職場が同じで、誕生日が近くて生まれた病院が同じで、幼稚園も小学校も同じで、いつも2人で一緒にいた。
そんなふうに過ごしていた日常は今では考えられないものになった。
僕達が小学3年生の頃、流維君の苗字が変わった。それからだった、僕が彼と距離を置くようになったのは。両親に何か言われたわけではない、流維君が僕を拒んだわけでもない、でも、僕はそういう雰囲気を感じ取り、彼と話さないようにした。
彼と距離を置いてから2年後のある日。僕は見てしまった。空き教室で暴力を振るわれている流維君の姿を。
あれは、いじめで間違いなかった。助けなきゃとそう思った。でも、思っただけだった。僕は何もできずに見て見ぬ振りをした。
今になって思えば、見て見ぬ振りはその日初めてした事ではなかった。ずっと、気づいていた。いじめは彼の苗字が変わったあの日から、ずっとあったのだ。けど、気づかないふりをしていた。
もしも、それを止めに入ったら次は僕が暴力を振るわれてしまう。僕は我が身可愛さに彼を見殺しにした。
僕達が中学生になっても、彼へのいじめは続いていた。でも、僕はずっと、見て見ぬ振りをした。彼の生乾きの衣類の悪臭から、ワキガと呼ばれて始めたことも、よく彼の持ち物がなくなることも、机にバカやらブスやら書かれていたことも全て知らないふりをした。
そうして、気づけば僕は彼をいじめる同級生と関わるようになっていた。許せないという正義感よりも、自己防衛が働いた結果だ。部活が同じで、声をかけられたことをきっかけに、僕は彼らと仲良くなった。
ゲームセンターに行ったり、ボウリングで遊んだり、家でお菓子を食ってゲームをするなど長い時間を過ごした。その時間は、流維君には申し訳なかったが正直言って楽しかった。
中学2年生の冬。流維君への罪悪感も薄れていたときに、彼は眼鏡を掛けて登校してきた。丸い眼鏡だ。目立てば目立つほどいじめは増していくだろうにと、彼の行動に心配と呆れの感情を抱いた。でも、今までいじめられて、無気力だった彼の瞳には正気が宿っており、どこか自信気であった。そんな彼の様子に、案の定不満を持った僕の友人であるいじめっ子達はいじめを決行しようと動いた。しかし、彼はその全てを華麗に躱した。次の日も、その次の日も、いじめっ子達の猛攻を躱し続けていた。
それを見ていた僕はスカッとした。今まで殴られて、奪われて、水浸しにされていた流維君が危険から自ら逃れていく様は感動ものだった。そして、安心してしまった。もう僕はどこにも罪悪感を抱かなくていいのだと。
流維君がいじめを避けるようになってから、僕は積極的にいじめっ子集団と関わるようになった。後ろめたさの感じない人間関係はとても気分が良かった。
ある日、僕達はいつも通り、共に帰宅していた。
「じゃあ、じゃんけん負けた奴が次の電柱まで全員分の鞄持てよ!」
グループのリーダー格がそう言って、頷いた皆が手を出す。
「いくぞ!じゃんけん、ポン!」
重い思いに出した手は、僕以外がパーで僕だけがグーだった。
「はい、京の負けー!」
「じゃあみんなの鞄、次の電柱まで持てよー!」
そうして、差し出される4人分のリュック。次の電柱はここからじゃ見えない。断りたかったが僕は頷く。
「ふぃー!鞄ないの楽でいいわー」
僕を含め、5人分のリュックを持つのは正直言って、しんどい。おかげで、僕だけ彼らよりも歩く速さが遅かった。
「おい、京!急げよー」
そう言って、僕の先を歩く彼らに「ごめん」と言って笑いかける。その時だった。
巨大なトラックが歩道を歩く彼ら目がけて突っ込んでいった。
そうして、僕以外の4人は吹っ飛ばされた。
あまりにも予想外のことが起きると、人はおかしくなってしまう。僕はその様子を他人事のように眺めていて、僕1人だけが残ったことがボウリングで1本のピンが残ったみたいだなと思ったり、全部倒したように見えたのに1本のピンだけ残ることをタップというのだったかと思ったり、そういえばボウリングにはローリングトラックという用語があったななどと訳のわからない思考を巡らせていた。
これも、自己防衛だったのだろうか。
呆然と立ち竦む僕、痛み苦しむいじめっ子達、煙を吹くトラックの残骸を目にした通行人が通報したらしく、それからどうなったのかはよく覚えていない。
4人中2人は軽い擦り傷等で済んだ。しかし、後の2人は入院を余儀なくされた。
それからの学校生活は、僕だけ無事で気まずかったが、軽い傷で済んだ2人が僕を突き放すことはなかったし、よく入院している2人の見舞いにも3人で行った。
また、この件があって、流維君へのいじめは本当になくなった。
3年生の夏、入院をしていた2人が学校生活に復帰した。これで、見舞いに行く必要なくみんなと会うことができる。
しかし、2人は退院したとはいえ、怪我が完全に治った訳ではなかったらしく、部活への復帰は難しいようだった。
中学最後の夏、彼らは僕達と大会に出ることは出来なかった。
世の中にはどうにもならないことがある。彼らの怪我もその一つだ。
湧いて出た苛立ちは何処に向けるべきなのか、僕達には分からなかった。そうして、また、いじめが始まろうとしていた。
ある日、水泳の授業があった。
皆、更衣室で水着に着替え、プールへと向かう中、流維君がそれを拒んでいた。彼はあの丸い眼鏡を掛けたままプールの授業に参加しようとしていたのだ。それを見ていた、僕の友人達は悪い笑みを浮かべていた。
授業が始まり、僕達は先生に隠れて更衣室に向かった。
「なぁ。アイツ、本当にあの眼鏡が好きなんだな」
リーダー格の人物が、ニヤニヤとしている。他の3人も笑っていたから、僕も作り笑いを浮かべる。
「もしもよぉ、アイツの眼鏡にいたずらしたら……アイツどんな反応すると思う?」
そう言って、リーダー格が取り出したのは油性の黒いペンだった。
「お、アイツのロッカー鍵かかってないじゃん!」
取り巻きの1人が流維君のロッカーを開ける。中には、乱雑に入れられた衣類と大事そうに置かれた眼鏡が1つ。
「おい、京」
急に声を掛けられて、僕はぴくりと跳ね上がる。
「なぁ、お前もたまにはやってみろよ!スッキリするって!」
そう言って、黒いペンを渡された。
僕がここで断ったらどうなるのだろうか。今まで築き上げた関係は、立場は、彼らにとっての僕の価値は、きっと地の底まで落ちるのだろう。
そうしたら、次こそ僕だ。標的が変わるのだ。なんとしても、それだけは避けなくてはならない。
だから、僕は渡されたペンを握った。そうして、彼の大事な眼鏡のレンズを"真っ黒に塗りつぶした"。
気持ちよくなんてなかった。スッキリなんて、するはずがなかった。だけど、みんなが笑うから僕も笑った。
それから、僕達は授業に戻った。
浅いプールに流維君と先生が2人でいるのが見えた。何を話しているのかは分からないが、流維君は更衣室の方へと歩いて行った。
まずい。僕はそう思った。
授業が終われば気づかれてしまう事ではあった。そんな事、理解しているつもりだった。でも、彼に僕の悪事を見られたくなかった。
僕は彼に向かって走り出そうとする。しかし、それは友人であるいじめっ子4人に止められた。
「今行ったらばれちまうだろ」
彼らは楽しげだった。
そして、流維君が更衣室に入ってから、数秒後。
僕達は悲鳴を聞いた。
僕も、友人達も、クラスメイトも、先生も、皆唖然としていた。
流維君が自分の大事な眼鏡を黒く染められた事に気づいたために起こった事象なのだろうと、分かっていたのは僕達だけだった。
僕の友人達は、おいアイツ気づいたぜ!なんて言いながら笑う予定だったはずだ。でも、誰も笑わなかった。いや、恐ろしくて笑えなかった。
絶望を音にしたような彼の叫び声は常軌を逸していた。いじめの範疇じゃ済まないような、そんなことをした気になった。例えば、彼の家族を殺したとか、彼自身の命を奪ったとか、そのようなことをしてしまったのだと錯覚した。
彼の声を聞いてから、遅れて先生が更衣室へと状況を確認しに行った。先生は全く帰ってこない。
そうして、水泳の授業が中止となり、僕達は聞いた。
流維君が水着姿のまま、トラックに轢かれて亡くなったことを。
◇◇◇
彼の言葉は全て、犯罪者の独白のようであった。自分が悪人であると自覚して、達観しているような雰囲気を感じる。
「なるほど。せやから、サングラス……」
最初の聞き込みで流維君がサングラスを掛けていたという話を耳にした。学校でサングラスを掛けているなんておかしいと私達は頭を抱えていたが、京君のいう通りであれば、サングラスはレンズを黒く塗り潰された眼鏡だったのだ。
「じゃあ、流維君がおかしくなって走り出したのは、大事な眼鏡が黒く塗り潰されたから?」
正直、信じ難いが、そういうこともあるのだろう。彼にとってその眼鏡は、黒く塗り潰された程度で道路に身を投げ出してしまうほど大切なものだった。
つまり、流維君が水着姿のまま道路に飛び出したのは"大事な眼鏡に悪戯をされた"ためである。
「命よりも価値のあるものなんて、私には考えられないけれどね」
「まぁ、死にたくて走ってたわけやないやろ。絶望故の暴走っちゅう感じやない?そう思うと、やっぱりこれは事故やったんやろ~な」
事件ではなく事故。直接彼を殺そうと動いた人間は何処にもいない。ただの不幸な事故だったと、三珠は断定した。
しかし、私は納得がいかない。この話に、殺意のあった人間はいなかったのかもしれないが、悪意のあった人物は確かに存在する。それを見過ごすことなど正義を愛する私にはできない。
「ねぇ、京君」
虚空を見つめて話していた彼は、私の方へと顔を向ける。
「なんですか?」
「まず、話してくれてありがとう。なんで、この話を私達にしようと思ったの?」
「なんで、ですかね。もしかしたら、懺悔のつもりだったのかもしれません」
夕方から時間が進み、周囲が暗くなったこともあってか、笑っているのか泣いているのか彼の表情は分からなかった。
「苦しかったんです、黙っているのが。みんなには誰にも話しちゃダメだって言われたんですけどね。でも、流維君のこと調べている人達がいるって聞いて、いてもたってもいられずって感じでしたから……まぁ、自分でもよく分かりません」
「なるほどね」
相変わらず彼の表情は読めない。もしかしたら、感情の籠った表情なんてしていないのかもしれない。今、彼が何を考えているのか、私達は判断できない。
でも、今私達に流維君のことを話した彼の行動は自己防衛なんかじゃないと願いたい。ルイ君のことを思っての行動だと、信じたい。
だからこそ、私は優しさなんて一つもない声掛けをする。
「アナタとその友達がやったことは、許されるようなことじゃないわ。でも、アナタ達はきっと裁かれない」
「私はそれが許せないわ。アナタ達みたいな悪人が罪を償わないなんて、許せない」
「だから、苦しみなさい。流維君はアナタ達が殺したと、そう思い続けなさい。苦しみ続けなさい。報いなんてなくても、許されなくても、彼の存在を忘れないで頂戴」
間接的にとはいえ、人を殺した人間が、それを些細なこととするなんて、許されない。
記憶することが懺悔になるなんて私は思わないが、それでも、彼らは苦しむべきだ。
「そうして、一生苦しんで、ちゃんと生きなさい」
それは、きっと彼の首を絞めるような言葉だった。もしも、話して楽になろうとしていたのであれば、その心情を絞め付けて離さないことだろう。
真っ黒な少年の内情がどうだったのか、私には分からない。しかし、彼はただ、深く頭を下げていた。
◇
私達は依頼人である御形 紡を事務所に招待し、何故流維君が水着姿のまま学校から飛び出し事故に遭ったのか、その原因についての調査結果を事細かに説明した。
「なるほど。まさか、流維がいじめに遭っていたなんて……」
御形さんは頭を抱えていた。無理もないだろう。間接的とはいえ、息子の死にいじめという暴力が関わっていたのだ。ただの事故ではなくなった。それは彼女が知りたかった事実であり、予想できることではあったのかもしれないが、あまりにも心苦しい。
「気付けなかった私を呪いたい……もっと、流維と話せばよかった」
項垂れる彼女に、かける言葉が見つからない。私には計り知れない絶望なのだろう。苦しみを知らない私の言葉はきっと彼女には慰めにもならない。
静寂が広がる。私と同じように、三珠も黙ったままだった。
ゆっくりと流れる時間の中、震える声で御形さんが話し始めた。
「私、流維が小学生の時に離婚しているんです。所謂、母子家庭というやつで、働き手は私1人でしたから、流維と2人で過ごす時間というのがほとんどなかったんです」
「彼の将来のことを考えるとお金はどうしても必要でしたから、朝も夜も必死で働いていました。でも、そのせいで彼のことを見ていられなかった……気づいてあげられなかったなんて……親失格です」
自罰的な言葉を口にする彼女に対して、私は慰めてあげたいという気持ちと、それと同等……いや、それ以上の苛立ちを感じてしまった。
言い訳に聞こえてしまったのだ。
後悔を口にして、自分の悪いところを口にして、彼女は楽になろうとしているのではないかと、そう思ってしまった。
いじめを行った人物。それを見て見ぬ振りをした人物。それを隠そうとした人物。そして、気づかなかった人物。いじめの被害者から見れば、その誰もが加害者なのではないだろうか。
それに気づかないことは論外として、気づいたとしても、今回の場合、被害者である流維君はもういない。
どうしようもないのだ。
だから、彼女の言葉もどうしようもない。後悔しても彼は戻ってこないし、彼が許すか否かを聞くことは二度とできない。
それでも、その姿勢を取ることで、彼女が救われようとしているように見えた。
その言葉が本当かもしれないのにも関わらず、だ。
岩山さんや京くんといった、悪と仮定して差し支えない人物が複数人いたせいか、どうやら私は気が立っていたらしい。
それから、私の考えた架空の被害者像に感情移入をしすぎたのかもしれない。悪い癖だ。
一度、深呼吸をする。
今、彼女を傷つける言葉をかけるのは正しくない。そう判断して、私は彼女に向き直る。
「御形さん。依頼については以上です。理解していただけたでしょうか」
私から、彼女に掛けられる言葉は無かった。だから、これ以上は何も言わない。
彼女はただ頷いた。そうして、依頼料を支払い「ありがとうございました」と再度、深々と頭を下げて事務所から去っていった。
その後、事故の原因がいじめであったとまではいかなかったが、地落市立第二中学校でいじめがあったという事実は認められたらしい。きっと、京くんや御形さんが色々と話して、行動したのだろう。
この結果から、私の聞いた彼らの後悔が嘘では無かったのだと思えて、安心した。
私が思っていたほどに、全てが悪ではなかったのだ。
これで、今回の依頼の話は終わりだ。一件落着。
◇
「……だと思ったんだけれどね」
「なんや、自分で解決した依頼について納得いっとらんのか?」
依頼解決から数日が経ったある日の夕暮れ時、私達はおじさんに勧められたカフェで夕食を取り、その帰り道を歩いていた。
「うん。やっぱり、おかしいと思うの」
「何がや?」
「眼鏡よ」
「眼鏡ぇ?」
そう、眼鏡だ。流維君が大事にしていた眼鏡。黒く塗り潰されたあの眼鏡。
キョウ君から話を聞いた際には、そういうこともあるのだろうと飲み込んだが、やはり、たかが眼鏡を一つ台無しにされた程度では人はおかしくならない気がする。
私なら今掛けている眼鏡を黒く塗り潰されたとしてもソイツをぶん殴るだけで済む。
大事なものだったからそれでは済まなかったのだとしても、なぜ眼鏡が大事だったのかが分からない。
「まぁ、確かに。今回の話でいっちゃん重要な物やったはずなのに、なんか結局流してた感はあるような気もするわ」
「そうなの。それに御形さんが私達の説明を聞いてた時も、おかしかったじゃない」
「それは、ワイも感じとったで」
御形さんに流維君の眼鏡について話をした時、首を傾げていた。彼女の話から、大切なものを知らないほどに彼と関われていなかったのだと解釈していたが、よくよく考えてみると不思議なのだ。
眼鏡が大切となると、その理由は誰かの形見だったとかが無難だと思う。もしそうだとすれば、それを御形さんが知らないわけがない。
だったら、おかしくなるほど大事な理由は他にあったはずだ。
その理由が気になって、私は色々と調べた。そして、あることを知った。
「おじさん、事故当日に現場に行ってたらしいの」
「へぇ~。おやっさんがねぇ」
どうやら、あの日、通報を受けてパトカーを走らせていたのは私のおじさんだったらしい。だから、私は彼から話を聞いた。
「軽ーく、聞いてみたの。眼鏡がどうなったのか」
「ほう。それでなんて言っとったん?」
私は一呼吸挟んで口を開く。
「事故現場に"眼鏡なんてなかった"って」
おじさんは、驚いていた。眼鏡について何も知らなかったからだ。
事故で吹き飛ばされたとして、破片くらいは見つけられたはずだ。そう思って聞いたのに、その破片すらおじさんは見ていなかった。
では、眼鏡は何処へ消えたのか。
ふと、あることを思い出した。
2人目の聞き込みで出てきた、あの言葉。私が一蹴した存在。
『古物商』
私が思考を巡らせようとしたその瞬間、曲がり角の向こうで何かが光った。そして。
「ドン」
そう、重たい何かが高いところから落ちる音が聞こえた。
「……なんの音やろか」
「行って、みましょうか」
胸騒ぎがする。私達は急ぎ音のした方へと走った。
そこには、地面に叩きつけられ、頭部があらぬ方向に曲がった男と、彼の作った血の池に浮かぶ1枚の写真があった。
そんなふうに過ごしていた日常は今では考えられないものになった。
僕達が小学3年生の頃、流維君の苗字が変わった。それからだった、僕が彼と距離を置くようになったのは。両親に何か言われたわけではない、流維君が僕を拒んだわけでもない、でも、僕はそういう雰囲気を感じ取り、彼と話さないようにした。
彼と距離を置いてから2年後のある日。僕は見てしまった。空き教室で暴力を振るわれている流維君の姿を。
あれは、いじめで間違いなかった。助けなきゃとそう思った。でも、思っただけだった。僕は何もできずに見て見ぬ振りをした。
今になって思えば、見て見ぬ振りはその日初めてした事ではなかった。ずっと、気づいていた。いじめは彼の苗字が変わったあの日から、ずっとあったのだ。けど、気づかないふりをしていた。
もしも、それを止めに入ったら次は僕が暴力を振るわれてしまう。僕は我が身可愛さに彼を見殺しにした。
僕達が中学生になっても、彼へのいじめは続いていた。でも、僕はずっと、見て見ぬ振りをした。彼の生乾きの衣類の悪臭から、ワキガと呼ばれて始めたことも、よく彼の持ち物がなくなることも、机にバカやらブスやら書かれていたことも全て知らないふりをした。
そうして、気づけば僕は彼をいじめる同級生と関わるようになっていた。許せないという正義感よりも、自己防衛が働いた結果だ。部活が同じで、声をかけられたことをきっかけに、僕は彼らと仲良くなった。
ゲームセンターに行ったり、ボウリングで遊んだり、家でお菓子を食ってゲームをするなど長い時間を過ごした。その時間は、流維君には申し訳なかったが正直言って楽しかった。
中学2年生の冬。流維君への罪悪感も薄れていたときに、彼は眼鏡を掛けて登校してきた。丸い眼鏡だ。目立てば目立つほどいじめは増していくだろうにと、彼の行動に心配と呆れの感情を抱いた。でも、今までいじめられて、無気力だった彼の瞳には正気が宿っており、どこか自信気であった。そんな彼の様子に、案の定不満を持った僕の友人であるいじめっ子達はいじめを決行しようと動いた。しかし、彼はその全てを華麗に躱した。次の日も、その次の日も、いじめっ子達の猛攻を躱し続けていた。
それを見ていた僕はスカッとした。今まで殴られて、奪われて、水浸しにされていた流維君が危険から自ら逃れていく様は感動ものだった。そして、安心してしまった。もう僕はどこにも罪悪感を抱かなくていいのだと。
流維君がいじめを避けるようになってから、僕は積極的にいじめっ子集団と関わるようになった。後ろめたさの感じない人間関係はとても気分が良かった。
ある日、僕達はいつも通り、共に帰宅していた。
「じゃあ、じゃんけん負けた奴が次の電柱まで全員分の鞄持てよ!」
グループのリーダー格がそう言って、頷いた皆が手を出す。
「いくぞ!じゃんけん、ポン!」
重い思いに出した手は、僕以外がパーで僕だけがグーだった。
「はい、京の負けー!」
「じゃあみんなの鞄、次の電柱まで持てよー!」
そうして、差し出される4人分のリュック。次の電柱はここからじゃ見えない。断りたかったが僕は頷く。
「ふぃー!鞄ないの楽でいいわー」
僕を含め、5人分のリュックを持つのは正直言って、しんどい。おかげで、僕だけ彼らよりも歩く速さが遅かった。
「おい、京!急げよー」
そう言って、僕の先を歩く彼らに「ごめん」と言って笑いかける。その時だった。
巨大なトラックが歩道を歩く彼ら目がけて突っ込んでいった。
そうして、僕以外の4人は吹っ飛ばされた。
あまりにも予想外のことが起きると、人はおかしくなってしまう。僕はその様子を他人事のように眺めていて、僕1人だけが残ったことがボウリングで1本のピンが残ったみたいだなと思ったり、全部倒したように見えたのに1本のピンだけ残ることをタップというのだったかと思ったり、そういえばボウリングにはローリングトラックという用語があったななどと訳のわからない思考を巡らせていた。
これも、自己防衛だったのだろうか。
呆然と立ち竦む僕、痛み苦しむいじめっ子達、煙を吹くトラックの残骸を目にした通行人が通報したらしく、それからどうなったのかはよく覚えていない。
4人中2人は軽い擦り傷等で済んだ。しかし、後の2人は入院を余儀なくされた。
それからの学校生活は、僕だけ無事で気まずかったが、軽い傷で済んだ2人が僕を突き放すことはなかったし、よく入院している2人の見舞いにも3人で行った。
また、この件があって、流維君へのいじめは本当になくなった。
3年生の夏、入院をしていた2人が学校生活に復帰した。これで、見舞いに行く必要なくみんなと会うことができる。
しかし、2人は退院したとはいえ、怪我が完全に治った訳ではなかったらしく、部活への復帰は難しいようだった。
中学最後の夏、彼らは僕達と大会に出ることは出来なかった。
世の中にはどうにもならないことがある。彼らの怪我もその一つだ。
湧いて出た苛立ちは何処に向けるべきなのか、僕達には分からなかった。そうして、また、いじめが始まろうとしていた。
ある日、水泳の授業があった。
皆、更衣室で水着に着替え、プールへと向かう中、流維君がそれを拒んでいた。彼はあの丸い眼鏡を掛けたままプールの授業に参加しようとしていたのだ。それを見ていた、僕の友人達は悪い笑みを浮かべていた。
授業が始まり、僕達は先生に隠れて更衣室に向かった。
「なぁ。アイツ、本当にあの眼鏡が好きなんだな」
リーダー格の人物が、ニヤニヤとしている。他の3人も笑っていたから、僕も作り笑いを浮かべる。
「もしもよぉ、アイツの眼鏡にいたずらしたら……アイツどんな反応すると思う?」
そう言って、リーダー格が取り出したのは油性の黒いペンだった。
「お、アイツのロッカー鍵かかってないじゃん!」
取り巻きの1人が流維君のロッカーを開ける。中には、乱雑に入れられた衣類と大事そうに置かれた眼鏡が1つ。
「おい、京」
急に声を掛けられて、僕はぴくりと跳ね上がる。
「なぁ、お前もたまにはやってみろよ!スッキリするって!」
そう言って、黒いペンを渡された。
僕がここで断ったらどうなるのだろうか。今まで築き上げた関係は、立場は、彼らにとっての僕の価値は、きっと地の底まで落ちるのだろう。
そうしたら、次こそ僕だ。標的が変わるのだ。なんとしても、それだけは避けなくてはならない。
だから、僕は渡されたペンを握った。そうして、彼の大事な眼鏡のレンズを"真っ黒に塗りつぶした"。
気持ちよくなんてなかった。スッキリなんて、するはずがなかった。だけど、みんなが笑うから僕も笑った。
それから、僕達は授業に戻った。
浅いプールに流維君と先生が2人でいるのが見えた。何を話しているのかは分からないが、流維君は更衣室の方へと歩いて行った。
まずい。僕はそう思った。
授業が終われば気づかれてしまう事ではあった。そんな事、理解しているつもりだった。でも、彼に僕の悪事を見られたくなかった。
僕は彼に向かって走り出そうとする。しかし、それは友人であるいじめっ子4人に止められた。
「今行ったらばれちまうだろ」
彼らは楽しげだった。
そして、流維君が更衣室に入ってから、数秒後。
僕達は悲鳴を聞いた。
僕も、友人達も、クラスメイトも、先生も、皆唖然としていた。
流維君が自分の大事な眼鏡を黒く染められた事に気づいたために起こった事象なのだろうと、分かっていたのは僕達だけだった。
僕の友人達は、おいアイツ気づいたぜ!なんて言いながら笑う予定だったはずだ。でも、誰も笑わなかった。いや、恐ろしくて笑えなかった。
絶望を音にしたような彼の叫び声は常軌を逸していた。いじめの範疇じゃ済まないような、そんなことをした気になった。例えば、彼の家族を殺したとか、彼自身の命を奪ったとか、そのようなことをしてしまったのだと錯覚した。
彼の声を聞いてから、遅れて先生が更衣室へと状況を確認しに行った。先生は全く帰ってこない。
そうして、水泳の授業が中止となり、僕達は聞いた。
流維君が水着姿のまま、トラックに轢かれて亡くなったことを。
◇◇◇
彼の言葉は全て、犯罪者の独白のようであった。自分が悪人であると自覚して、達観しているような雰囲気を感じる。
「なるほど。せやから、サングラス……」
最初の聞き込みで流維君がサングラスを掛けていたという話を耳にした。学校でサングラスを掛けているなんておかしいと私達は頭を抱えていたが、京君のいう通りであれば、サングラスはレンズを黒く塗り潰された眼鏡だったのだ。
「じゃあ、流維君がおかしくなって走り出したのは、大事な眼鏡が黒く塗り潰されたから?」
正直、信じ難いが、そういうこともあるのだろう。彼にとってその眼鏡は、黒く塗り潰された程度で道路に身を投げ出してしまうほど大切なものだった。
つまり、流維君が水着姿のまま道路に飛び出したのは"大事な眼鏡に悪戯をされた"ためである。
「命よりも価値のあるものなんて、私には考えられないけれどね」
「まぁ、死にたくて走ってたわけやないやろ。絶望故の暴走っちゅう感じやない?そう思うと、やっぱりこれは事故やったんやろ~な」
事件ではなく事故。直接彼を殺そうと動いた人間は何処にもいない。ただの不幸な事故だったと、三珠は断定した。
しかし、私は納得がいかない。この話に、殺意のあった人間はいなかったのかもしれないが、悪意のあった人物は確かに存在する。それを見過ごすことなど正義を愛する私にはできない。
「ねぇ、京君」
虚空を見つめて話していた彼は、私の方へと顔を向ける。
「なんですか?」
「まず、話してくれてありがとう。なんで、この話を私達にしようと思ったの?」
「なんで、ですかね。もしかしたら、懺悔のつもりだったのかもしれません」
夕方から時間が進み、周囲が暗くなったこともあってか、笑っているのか泣いているのか彼の表情は分からなかった。
「苦しかったんです、黙っているのが。みんなには誰にも話しちゃダメだって言われたんですけどね。でも、流維君のこと調べている人達がいるって聞いて、いてもたってもいられずって感じでしたから……まぁ、自分でもよく分かりません」
「なるほどね」
相変わらず彼の表情は読めない。もしかしたら、感情の籠った表情なんてしていないのかもしれない。今、彼が何を考えているのか、私達は判断できない。
でも、今私達に流維君のことを話した彼の行動は自己防衛なんかじゃないと願いたい。ルイ君のことを思っての行動だと、信じたい。
だからこそ、私は優しさなんて一つもない声掛けをする。
「アナタとその友達がやったことは、許されるようなことじゃないわ。でも、アナタ達はきっと裁かれない」
「私はそれが許せないわ。アナタ達みたいな悪人が罪を償わないなんて、許せない」
「だから、苦しみなさい。流維君はアナタ達が殺したと、そう思い続けなさい。苦しみ続けなさい。報いなんてなくても、許されなくても、彼の存在を忘れないで頂戴」
間接的にとはいえ、人を殺した人間が、それを些細なこととするなんて、許されない。
記憶することが懺悔になるなんて私は思わないが、それでも、彼らは苦しむべきだ。
「そうして、一生苦しんで、ちゃんと生きなさい」
それは、きっと彼の首を絞めるような言葉だった。もしも、話して楽になろうとしていたのであれば、その心情を絞め付けて離さないことだろう。
真っ黒な少年の内情がどうだったのか、私には分からない。しかし、彼はただ、深く頭を下げていた。
◇
私達は依頼人である御形 紡を事務所に招待し、何故流維君が水着姿のまま学校から飛び出し事故に遭ったのか、その原因についての調査結果を事細かに説明した。
「なるほど。まさか、流維がいじめに遭っていたなんて……」
御形さんは頭を抱えていた。無理もないだろう。間接的とはいえ、息子の死にいじめという暴力が関わっていたのだ。ただの事故ではなくなった。それは彼女が知りたかった事実であり、予想できることではあったのかもしれないが、あまりにも心苦しい。
「気付けなかった私を呪いたい……もっと、流維と話せばよかった」
項垂れる彼女に、かける言葉が見つからない。私には計り知れない絶望なのだろう。苦しみを知らない私の言葉はきっと彼女には慰めにもならない。
静寂が広がる。私と同じように、三珠も黙ったままだった。
ゆっくりと流れる時間の中、震える声で御形さんが話し始めた。
「私、流維が小学生の時に離婚しているんです。所謂、母子家庭というやつで、働き手は私1人でしたから、流維と2人で過ごす時間というのがほとんどなかったんです」
「彼の将来のことを考えるとお金はどうしても必要でしたから、朝も夜も必死で働いていました。でも、そのせいで彼のことを見ていられなかった……気づいてあげられなかったなんて……親失格です」
自罰的な言葉を口にする彼女に対して、私は慰めてあげたいという気持ちと、それと同等……いや、それ以上の苛立ちを感じてしまった。
言い訳に聞こえてしまったのだ。
後悔を口にして、自分の悪いところを口にして、彼女は楽になろうとしているのではないかと、そう思ってしまった。
いじめを行った人物。それを見て見ぬ振りをした人物。それを隠そうとした人物。そして、気づかなかった人物。いじめの被害者から見れば、その誰もが加害者なのではないだろうか。
それに気づかないことは論外として、気づいたとしても、今回の場合、被害者である流維君はもういない。
どうしようもないのだ。
だから、彼女の言葉もどうしようもない。後悔しても彼は戻ってこないし、彼が許すか否かを聞くことは二度とできない。
それでも、その姿勢を取ることで、彼女が救われようとしているように見えた。
その言葉が本当かもしれないのにも関わらず、だ。
岩山さんや京くんといった、悪と仮定して差し支えない人物が複数人いたせいか、どうやら私は気が立っていたらしい。
それから、私の考えた架空の被害者像に感情移入をしすぎたのかもしれない。悪い癖だ。
一度、深呼吸をする。
今、彼女を傷つける言葉をかけるのは正しくない。そう判断して、私は彼女に向き直る。
「御形さん。依頼については以上です。理解していただけたでしょうか」
私から、彼女に掛けられる言葉は無かった。だから、これ以上は何も言わない。
彼女はただ頷いた。そうして、依頼料を支払い「ありがとうございました」と再度、深々と頭を下げて事務所から去っていった。
その後、事故の原因がいじめであったとまではいかなかったが、地落市立第二中学校でいじめがあったという事実は認められたらしい。きっと、京くんや御形さんが色々と話して、行動したのだろう。
この結果から、私の聞いた彼らの後悔が嘘では無かったのだと思えて、安心した。
私が思っていたほどに、全てが悪ではなかったのだ。
これで、今回の依頼の話は終わりだ。一件落着。
◇
「……だと思ったんだけれどね」
「なんや、自分で解決した依頼について納得いっとらんのか?」
依頼解決から数日が経ったある日の夕暮れ時、私達はおじさんに勧められたカフェで夕食を取り、その帰り道を歩いていた。
「うん。やっぱり、おかしいと思うの」
「何がや?」
「眼鏡よ」
「眼鏡ぇ?」
そう、眼鏡だ。流維君が大事にしていた眼鏡。黒く塗り潰されたあの眼鏡。
キョウ君から話を聞いた際には、そういうこともあるのだろうと飲み込んだが、やはり、たかが眼鏡を一つ台無しにされた程度では人はおかしくならない気がする。
私なら今掛けている眼鏡を黒く塗り潰されたとしてもソイツをぶん殴るだけで済む。
大事なものだったからそれでは済まなかったのだとしても、なぜ眼鏡が大事だったのかが分からない。
「まぁ、確かに。今回の話でいっちゃん重要な物やったはずなのに、なんか結局流してた感はあるような気もするわ」
「そうなの。それに御形さんが私達の説明を聞いてた時も、おかしかったじゃない」
「それは、ワイも感じとったで」
御形さんに流維君の眼鏡について話をした時、首を傾げていた。彼女の話から、大切なものを知らないほどに彼と関われていなかったのだと解釈していたが、よくよく考えてみると不思議なのだ。
眼鏡が大切となると、その理由は誰かの形見だったとかが無難だと思う。もしそうだとすれば、それを御形さんが知らないわけがない。
だったら、おかしくなるほど大事な理由は他にあったはずだ。
その理由が気になって、私は色々と調べた。そして、あることを知った。
「おじさん、事故当日に現場に行ってたらしいの」
「へぇ~。おやっさんがねぇ」
どうやら、あの日、通報を受けてパトカーを走らせていたのは私のおじさんだったらしい。だから、私は彼から話を聞いた。
「軽ーく、聞いてみたの。眼鏡がどうなったのか」
「ほう。それでなんて言っとったん?」
私は一呼吸挟んで口を開く。
「事故現場に"眼鏡なんてなかった"って」
おじさんは、驚いていた。眼鏡について何も知らなかったからだ。
事故で吹き飛ばされたとして、破片くらいは見つけられたはずだ。そう思って聞いたのに、その破片すらおじさんは見ていなかった。
では、眼鏡は何処へ消えたのか。
ふと、あることを思い出した。
2人目の聞き込みで出てきた、あの言葉。私が一蹴した存在。
『古物商』
私が思考を巡らせようとしたその瞬間、曲がり角の向こうで何かが光った。そして。
「ドン」
そう、重たい何かが高いところから落ちる音が聞こえた。
「……なんの音やろか」
「行って、みましょうか」
胸騒ぎがする。私達は急ぎ音のした方へと走った。
そこには、地面に叩きつけられ、頭部があらぬ方向に曲がった男と、彼の作った血の池に浮かぶ1枚の写真があった。
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