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6章【外交編・ブライエ国】
44 隠し通路
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「[ここからどうする]」
「[ここはですね、仕掛け扉になっているのですよ]」
多少首都から離れた森のところに遺跡の名残らしきものがあり、そこの前に4人で立つ。見慣れない構造物だなぁ、と思っていると、ギルデルが何かをいじり始めた。
何かを入れ替えたり嵌め込んだり、何か絡繰でもあるのかと見つめていると、ガガガガガガ……という音と共に建物が音を立てながら動き始める。
「[な、何ごとだ!?]」
「ギルデル!」
「なんですか、大騒ぎをして。隠し通路を開けただけですよ。ずっと野晒しにはできないですからね。こうして絡繰を使って隠しているんです」
「どういう仕組みになっているの」
「それが秘密です。まぁ、あらゆる叡智を駆使して作り上げたといいましょうか」
「こんな技術が……」
今まで見たことも聞いたこともない技術に目を剥くと共に、それを持ち合わせている帝国の脅威を改めて感じる。
元々モットー国になかった技術は全て帝国由来のものだ。となると、ここを元から乗っ取るつもりもあろうが、力の差をあえて見せつけ、こういう技術を与えたと考えてもいいだろう。
(一体どれほどの叡智、技術があるのだろうか)
きっとギルデルに聞いても教えてはくれるだろうが、きっと全部ではないはずだ。それを掌握しているのは皇帝ただ1人のみだろうし、決して他人を信用しない彼はその全てを自己のために使うことしか考えてないだろう。
こんな魔法のような技術を目にすると、あのおぞましい『転生計画』絵空事ではないということがヒシヒシと伝わってきた。
「リーシェ、大丈夫か?」
「え?はい、大丈夫です」
私の顔が強張っていることに気づいたのだろう。クエリーシェルがすかさず私を気遣うように声をかけてくれる。
「[ほら、ボケっとしていないでいくぞ]」
シオンがいつの間にか遺跡へと片足を突っ込んでいてこちらを待っていた。相変わらず血の気が多いというか、気が短いと思いながらそのあとに続く。
薄暗く、灯りがないためカチッカチッと火打ち金で火を起こして松明を作る。種火を移し、ぼわっと勢いよく燃え上がりそれを振るうと思いのほか中はしっかりと掘られていてちゃんと人が通れるように加工してあるのがよくわかった。
「[ここはどこに繋がっているの?]」
「[城下町にある建物のうちのどこかです]」
「[どこかって……]」
「[で、行った先にはたくさんの敵が待ち受けているんだろう?]」
「[えぇ、それはもちろん。ですが、そもそもなぜここにくるのに少数にしたのかと言いますと、こちらにも罠がしっかりと設けられているからです]」
「[そんなことだろうと思ったけど。またあるのね]」
「[もちろん。しかもここは城に最も近いぶん、難易度も高く殺しに来てますからそのつもりで]」
想定はしていたが、まずはここで命を落とさないようにしなくては、と気を引き締める。
クエリーシェルにもそのことを伝えると、複雑そうな表情をしたが、今ここで小言を言ってもしょうがないとばかりに苦々しく「わかった」とただ一言だけ吐いた。
「それにしても随分と暗いわね……」
地中の中だからか非常に暗い。しかも先日に比べて道が広く、光が届かない部分もあってより恐怖心を煽る。
足元に何かあったら、何かが突然飛び出してきたら、そんなことを思いながら歩いていると、クエリーシェルが私の不安を察したのか肩を抱き寄せるように引き寄せてくれる。
「安心しろ。私がついている」
「ありがとうございます」
松明の光を心許なく感じながらもクエリーシェルの言葉や逞しい力強い腕に安堵し、一歩一歩と着実に進んでいくと、突然ぽっかりと空いた空洞に出会した。
「[随分と大きな穴だな……]」
シオンも見たことがないほどの大きさなのか、光が届かないほど深い穴に感心するように覗き込んだ。
「[随分と深いわね]」
「[えぇ、落ちたら死にます]」
「[どうやって渡る? 何か橋はないのか]」
「[ありますよ、あそこに]」
ギルデルが指さした先にはなんとも細く、人1人がやっと通れるかどうかくらいの橋があった。
「[あれが、橋?]」
「[えぇ、そうですよ。まぁ、普通なら人1人ぶん通るには問題ない橋ですが]」
「[ですが……?]」
「[急いで通らないと、矢を受けて落ちます]」
「[はい?]」
「[さぁ、みなさん。落ちないように頑張ってください]」
ギルデルは実に愉快そうに口元を歪めたのだった。
「[ここはですね、仕掛け扉になっているのですよ]」
多少首都から離れた森のところに遺跡の名残らしきものがあり、そこの前に4人で立つ。見慣れない構造物だなぁ、と思っていると、ギルデルが何かをいじり始めた。
何かを入れ替えたり嵌め込んだり、何か絡繰でもあるのかと見つめていると、ガガガガガガ……という音と共に建物が音を立てながら動き始める。
「[な、何ごとだ!?]」
「ギルデル!」
「なんですか、大騒ぎをして。隠し通路を開けただけですよ。ずっと野晒しにはできないですからね。こうして絡繰を使って隠しているんです」
「どういう仕組みになっているの」
「それが秘密です。まぁ、あらゆる叡智を駆使して作り上げたといいましょうか」
「こんな技術が……」
今まで見たことも聞いたこともない技術に目を剥くと共に、それを持ち合わせている帝国の脅威を改めて感じる。
元々モットー国になかった技術は全て帝国由来のものだ。となると、ここを元から乗っ取るつもりもあろうが、力の差をあえて見せつけ、こういう技術を与えたと考えてもいいだろう。
(一体どれほどの叡智、技術があるのだろうか)
きっとギルデルに聞いても教えてはくれるだろうが、きっと全部ではないはずだ。それを掌握しているのは皇帝ただ1人のみだろうし、決して他人を信用しない彼はその全てを自己のために使うことしか考えてないだろう。
こんな魔法のような技術を目にすると、あのおぞましい『転生計画』絵空事ではないということがヒシヒシと伝わってきた。
「リーシェ、大丈夫か?」
「え?はい、大丈夫です」
私の顔が強張っていることに気づいたのだろう。クエリーシェルがすかさず私を気遣うように声をかけてくれる。
「[ほら、ボケっとしていないでいくぞ]」
シオンがいつの間にか遺跡へと片足を突っ込んでいてこちらを待っていた。相変わらず血の気が多いというか、気が短いと思いながらそのあとに続く。
薄暗く、灯りがないためカチッカチッと火打ち金で火を起こして松明を作る。種火を移し、ぼわっと勢いよく燃え上がりそれを振るうと思いのほか中はしっかりと掘られていてちゃんと人が通れるように加工してあるのがよくわかった。
「[ここはどこに繋がっているの?]」
「[城下町にある建物のうちのどこかです]」
「[どこかって……]」
「[で、行った先にはたくさんの敵が待ち受けているんだろう?]」
「[えぇ、それはもちろん。ですが、そもそもなぜここにくるのに少数にしたのかと言いますと、こちらにも罠がしっかりと設けられているからです]」
「[そんなことだろうと思ったけど。またあるのね]」
「[もちろん。しかもここは城に最も近いぶん、難易度も高く殺しに来てますからそのつもりで]」
想定はしていたが、まずはここで命を落とさないようにしなくては、と気を引き締める。
クエリーシェルにもそのことを伝えると、複雑そうな表情をしたが、今ここで小言を言ってもしょうがないとばかりに苦々しく「わかった」とただ一言だけ吐いた。
「それにしても随分と暗いわね……」
地中の中だからか非常に暗い。しかも先日に比べて道が広く、光が届かない部分もあってより恐怖心を煽る。
足元に何かあったら、何かが突然飛び出してきたら、そんなことを思いながら歩いていると、クエリーシェルが私の不安を察したのか肩を抱き寄せるように引き寄せてくれる。
「安心しろ。私がついている」
「ありがとうございます」
松明の光を心許なく感じながらもクエリーシェルの言葉や逞しい力強い腕に安堵し、一歩一歩と着実に進んでいくと、突然ぽっかりと空いた空洞に出会した。
「[随分と大きな穴だな……]」
シオンも見たことがないほどの大きさなのか、光が届かないほど深い穴に感心するように覗き込んだ。
「[随分と深いわね]」
「[えぇ、落ちたら死にます]」
「[どうやって渡る? 何か橋はないのか]」
「[ありますよ、あそこに]」
ギルデルが指さした先にはなんとも細く、人1人がやっと通れるかどうかくらいの橋があった。
「[あれが、橋?]」
「[えぇ、そうですよ。まぁ、普通なら人1人ぶん通るには問題ない橋ですが]」
「[ですが……?]」
「[急いで通らないと、矢を受けて落ちます]」
「[はい?]」
「[さぁ、みなさん。落ちないように頑張ってください]」
ギルデルは実に愉快そうに口元を歪めたのだった。
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