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4章【外交編・サハリ国】
98 出立準備完了
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「本当に色々とどうもありがとう」
あれから物資の補給や船の整備などをしてもらい、至れり尽くせりだった。船員達も高待遇だったようで、「行きたくない~。ここに留まる~」と冗談なのか本気なのかわからないことを言っている者もいた。
「いいんだ。僕ができる恩返しだからね」
「やったこと以上のことが返ってきてる気もするけど」
「まぁ、それは出世払いということで。バレス皇帝を倒すためなら、僕も労力は惜しまないよ」
そう、この旅はコルジールのためでもあるが自分のため、そして世界のためでもある。次も、何が待ち受けているかわからないから気を引き締めなくては。
「先日話した通り、私の所在を聞かれたらブライエだと伝えてちょうだい」
「あぁ、まぁ聞かれたらだけどね。ブライエなら、さすがのあのバレス皇帝もすぐには手出しできないだろうし」
「シグバール国王には会えたら色々と伝えておかないとね。ふふ、元々喧嘩っ早い人だし、帝国が乗り来んできたとしても喜んで応戦しそうだわ」
言いながら、シグバール国王が嬉々として剣を振り回すところを想像する。嬢ちゃんのためなら、売られた喧嘩は買ってやるぜ、とか言いそうだなぁ、なんて思い出すと自然と口元が緩む。
「随分とシグバール国王と親しいんだね」
「まぁ、剣術とかの師だし」
「そうだったのか。僕も以前お会いしたことがあるが、どうにも当時コテンパンにやられてしまったことがトラウマでね……ちょっと苦手なんだ」
なんとなく想像はつく。シグバール国王は寛大ではあったが、いざ戦さ場のこととなると手厳しい人だった。
私は一応女ということである程度は許容されていたようだが、彼自身の息子や自軍の兵などにはとてもキツく当たり、あまりの恐怖に震えだしたり失禁したりする者もいたらしい。
なんだかんだで私も泣きながら意地でもついていっていたことを思い出すが、あのときも負けん気が強くて負けず嫌いで、打たれ強い性格だったからこそ、可愛がってもらえていたのだなぁ、と思う。
今もそれは変わらずではあるが。
「とにかく、シグバール国王によろしく伝えておいてくれ」
「えぇ、サハリの国王は立派になりましたよ、って伝えておくわ」
「程々にしてくれよ?あまり言いすぎると敵情視察とか言って乗り込んできかねない」
「確かに。それは言えてる」
フットワークが軽いシグバール国王のことだ、実際にやりかねない。まぁ、今はモットーとのことでゴタゴタしているだろうが。
「無事にモットーを切り抜けて、ブライエに到着できるよう祈ってるよ」
「そうね。まずは、そこね。いや、その前に海賊か。はぁ……とにかく諸々気をつけるわ」
大きく溜め息をつく。正直、気を張ってないと滅入りそうなくらい前途多難である。わかっているからこそ、嫌な感情が渦巻いていた。
だが、そんなことも言ってられないのであえて気を張って誤魔化す。私の一番の強みはこの心持ちだ。前向きに、生きることだけを考える部分である。
「あぁ、ブランシェ。……マーラ様をよろしくね」
「それはもちろんだ。準備が整い次第カジェ国に送るよ。そういえば、彼女は何かキミに用意しているようだったが」
「そうなの?特に何も言われてないけど……」
あの素直じゃないマーラのことだ、わざと言ってないのだろう。いざというときは、知らなかったフリをしておこう。
「【陛下、そろそろ出立の準備が整いました】」
「【そうか、わかった】」
従者が報告に来る。いよいよ、この土地ともお別れであった。
あれから物資の補給や船の整備などをしてもらい、至れり尽くせりだった。船員達も高待遇だったようで、「行きたくない~。ここに留まる~」と冗談なのか本気なのかわからないことを言っている者もいた。
「いいんだ。僕ができる恩返しだからね」
「やったこと以上のことが返ってきてる気もするけど」
「まぁ、それは出世払いということで。バレス皇帝を倒すためなら、僕も労力は惜しまないよ」
そう、この旅はコルジールのためでもあるが自分のため、そして世界のためでもある。次も、何が待ち受けているかわからないから気を引き締めなくては。
「先日話した通り、私の所在を聞かれたらブライエだと伝えてちょうだい」
「あぁ、まぁ聞かれたらだけどね。ブライエなら、さすがのあのバレス皇帝もすぐには手出しできないだろうし」
「シグバール国王には会えたら色々と伝えておかないとね。ふふ、元々喧嘩っ早い人だし、帝国が乗り来んできたとしても喜んで応戦しそうだわ」
言いながら、シグバール国王が嬉々として剣を振り回すところを想像する。嬢ちゃんのためなら、売られた喧嘩は買ってやるぜ、とか言いそうだなぁ、なんて思い出すと自然と口元が緩む。
「随分とシグバール国王と親しいんだね」
「まぁ、剣術とかの師だし」
「そうだったのか。僕も以前お会いしたことがあるが、どうにも当時コテンパンにやられてしまったことがトラウマでね……ちょっと苦手なんだ」
なんとなく想像はつく。シグバール国王は寛大ではあったが、いざ戦さ場のこととなると手厳しい人だった。
私は一応女ということである程度は許容されていたようだが、彼自身の息子や自軍の兵などにはとてもキツく当たり、あまりの恐怖に震えだしたり失禁したりする者もいたらしい。
なんだかんだで私も泣きながら意地でもついていっていたことを思い出すが、あのときも負けん気が強くて負けず嫌いで、打たれ強い性格だったからこそ、可愛がってもらえていたのだなぁ、と思う。
今もそれは変わらずではあるが。
「とにかく、シグバール国王によろしく伝えておいてくれ」
「えぇ、サハリの国王は立派になりましたよ、って伝えておくわ」
「程々にしてくれよ?あまり言いすぎると敵情視察とか言って乗り込んできかねない」
「確かに。それは言えてる」
フットワークが軽いシグバール国王のことだ、実際にやりかねない。まぁ、今はモットーとのことでゴタゴタしているだろうが。
「無事にモットーを切り抜けて、ブライエに到着できるよう祈ってるよ」
「そうね。まずは、そこね。いや、その前に海賊か。はぁ……とにかく諸々気をつけるわ」
大きく溜め息をつく。正直、気を張ってないと滅入りそうなくらい前途多難である。わかっているからこそ、嫌な感情が渦巻いていた。
だが、そんなことも言ってられないのであえて気を張って誤魔化す。私の一番の強みはこの心持ちだ。前向きに、生きることだけを考える部分である。
「あぁ、ブランシェ。……マーラ様をよろしくね」
「それはもちろんだ。準備が整い次第カジェ国に送るよ。そういえば、彼女は何かキミに用意しているようだったが」
「そうなの?特に何も言われてないけど……」
あの素直じゃないマーラのことだ、わざと言ってないのだろう。いざというときは、知らなかったフリをしておこう。
「【陛下、そろそろ出立の準備が整いました】」
「【そうか、わかった】」
従者が報告に来る。いよいよ、この土地ともお別れであった。
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