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4章【外交編・サハリ国】
67 先程の顛末
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「ほんっとうにキミは頑固だな」
「それはどうも」
「別に褒めているわけではない」
結局色々とやり合った結果、私はソファーで寝ることになり、ブランシェが自分のベッドで寝ることになった。本当はあてがわれた部屋に戻りたかったが、まだ念のため確認するそうで明朝まで出入りはダメらしい。
ちなみにこの配置になったのは、ブランシェはどうにか私をベッドにとあの手この手で誘導しようとしたが、私が頑として譲らなかったため、渋々ブランシェが折れた形だ。
「あ、こっち来たら蹴っ飛ばすからね」
「ステラはもう少し……まぁ、いい。行かないから、安心してくれ」
ソファーと言っても、私が寝る分には十分な大きさがある。しかもふかふかなため、ベッドほどではないものの寝心地はいい。
掛け布団として大きなタオルをいただいたが、それだけでも上質な睡眠がとれそうだった。
「……キミの彼は随分と荒々しいというか、鬼神のようだな」
不意に声をかけられる。そういえば、先程呆気なく終わっていて聞きそびれてしまったが、あちらの顛末を聞いてなかったことを思い出す。
(そういえば、クエリーシェルってよく鬼神のようだと恐れられていたとよく聞くなぁ……)
私の前ではあまりそういう姿を見せないものの、彼がよく恐れられているというのはよく聞く。
戦った姿は何度か見たことあるものの、正直自分のことでいっぱいいっぱいだったということもあり、あまりじっくりと見たことがなかった。
(今度見れたら観察してみよう)
「そういえば、どうだったの?捕り物劇は」
「どうもこうも。侵入者2人は僕を見るやいなや固まってしまってな。その顔は実に傑作ではあったが、その後我に返った彼らは逃げようとしたのだが、気づいたときにはキミの彼が一瞬のうちに打ちのめしていて捕縛していたよ」
「そうだったの。……って、侵入者の顔見てる余裕あるなら、ブランシェが捕まえればよかったんじゃないの?」
「いやー、そこは……僕もつい油断してしまったというか、何というか……」
ははは、とわざとらしい乾いた笑いをするブランシェ。お互い距離があるから顔こそ見えないが、きっと見せられない顔をしていることだろう。
(私の采配は正しかったということか)
自分の判断は正しかったと思いつつも、呆れが勝る。もし私がクエリーシェルに頼んでいなければ、逃していた可能性もあると思うと、事後ではあるものの少し肝が冷える。
誘拐犯も誘拐犯で統制が取れているとは言い難かったし、そもそも忠誠を誓っている!という様子も見られなかった。自死の可能性があるかもしれない、と口に入れるようの布も用意していたが、とんだ杞憂であった。
いい意味でも悪い意味でも、この国はあまり戦闘に向いていないということがよくわかった一件である。
(さて、今回失敗したあちら側は今後どう出るか……)
私を連れ帰るどころか、本人達の帰還もないとなると相当に焦るだろうことは予想される。捕縛した彼らから情報漏洩でもされたら、すぐさま国王への反逆罪とされて拘束されるだろう。
我が身かわいさゆえに行動を起こした前国王夫妻は、さぞかし肝を冷やしているに違いない。
(このまま大人しく自首してくれればいいけど)
そういうわけにもいかないことは、軽く想像できる。そもそもそのような殊勝な心掛けがあったなら、このような愚かな行為はしなかったはずだ。
「ブランシェ?」
随分と静かだな、と声をかけるが返事がない。身体を起こして彼の方を見れば、いつのまにか寝てしまったようだ。
「私もそろそろ寝ようかな」
今日は疲れた。……色々な意味で。
ソファーに寝転がり、布団代わりのタオルをかける。静かに目を閉じると、そのまま意識を失うのに時間はかからなかった。
「それはどうも」
「別に褒めているわけではない」
結局色々とやり合った結果、私はソファーで寝ることになり、ブランシェが自分のベッドで寝ることになった。本当はあてがわれた部屋に戻りたかったが、まだ念のため確認するそうで明朝まで出入りはダメらしい。
ちなみにこの配置になったのは、ブランシェはどうにか私をベッドにとあの手この手で誘導しようとしたが、私が頑として譲らなかったため、渋々ブランシェが折れた形だ。
「あ、こっち来たら蹴っ飛ばすからね」
「ステラはもう少し……まぁ、いい。行かないから、安心してくれ」
ソファーと言っても、私が寝る分には十分な大きさがある。しかもふかふかなため、ベッドほどではないものの寝心地はいい。
掛け布団として大きなタオルをいただいたが、それだけでも上質な睡眠がとれそうだった。
「……キミの彼は随分と荒々しいというか、鬼神のようだな」
不意に声をかけられる。そういえば、先程呆気なく終わっていて聞きそびれてしまったが、あちらの顛末を聞いてなかったことを思い出す。
(そういえば、クエリーシェルってよく鬼神のようだと恐れられていたとよく聞くなぁ……)
私の前ではあまりそういう姿を見せないものの、彼がよく恐れられているというのはよく聞く。
戦った姿は何度か見たことあるものの、正直自分のことでいっぱいいっぱいだったということもあり、あまりじっくりと見たことがなかった。
(今度見れたら観察してみよう)
「そういえば、どうだったの?捕り物劇は」
「どうもこうも。侵入者2人は僕を見るやいなや固まってしまってな。その顔は実に傑作ではあったが、その後我に返った彼らは逃げようとしたのだが、気づいたときにはキミの彼が一瞬のうちに打ちのめしていて捕縛していたよ」
「そうだったの。……って、侵入者の顔見てる余裕あるなら、ブランシェが捕まえればよかったんじゃないの?」
「いやー、そこは……僕もつい油断してしまったというか、何というか……」
ははは、とわざとらしい乾いた笑いをするブランシェ。お互い距離があるから顔こそ見えないが、きっと見せられない顔をしていることだろう。
(私の采配は正しかったということか)
自分の判断は正しかったと思いつつも、呆れが勝る。もし私がクエリーシェルに頼んでいなければ、逃していた可能性もあると思うと、事後ではあるものの少し肝が冷える。
誘拐犯も誘拐犯で統制が取れているとは言い難かったし、そもそも忠誠を誓っている!という様子も見られなかった。自死の可能性があるかもしれない、と口に入れるようの布も用意していたが、とんだ杞憂であった。
いい意味でも悪い意味でも、この国はあまり戦闘に向いていないということがよくわかった一件である。
(さて、今回失敗したあちら側は今後どう出るか……)
私を連れ帰るどころか、本人達の帰還もないとなると相当に焦るだろうことは予想される。捕縛した彼らから情報漏洩でもされたら、すぐさま国王への反逆罪とされて拘束されるだろう。
我が身かわいさゆえに行動を起こした前国王夫妻は、さぞかし肝を冷やしているに違いない。
(このまま大人しく自首してくれればいいけど)
そういうわけにもいかないことは、軽く想像できる。そもそもそのような殊勝な心掛けがあったなら、このような愚かな行為はしなかったはずだ。
「ブランシェ?」
随分と静かだな、と声をかけるが返事がない。身体を起こして彼の方を見れば、いつのまにか寝てしまったようだ。
「私もそろそろ寝ようかな」
今日は疲れた。……色々な意味で。
ソファーに寝転がり、布団代わりのタオルをかける。静かに目を閉じると、そのまま意識を失うのに時間はかからなかった。
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