267 / 437
4章【外交編・サハリ国】
66 ぐるぐる巻き
しおりを挟む
「【ん?……な、何者だ!?】」
いい感じで遠心力も加わり、スリングからそれなりの音がし始めてからやっと気づいたらしい男がこちらを見る。
だが、既に時遅し。
勢いよく彼のこめかみ目掛けて石を放つ。
びゅん……っ!ガッ……っ
飛ばした石は、目にも留まらぬ速さで狙った部位を掠めていく。
「う、ぐぁあああ……っ!」
不意打ちだったせいか、特に身構えることもできずにいた男の身体が大きくよろける。血がこめかみからパッと飛び散ったのを確認すると、そのまま距離を縮めて棍を振るう。
タッタッタッタッ!ぶぅん……!
走った勢いのまま棍を振り切ると、そのままよろけてバランスを崩していた身体は沈んでいく。受け身が取れず、そのまま背中を強打したせいか「ガハッ」と大きく呻いて、身動きが取れないようだった。
私はすぐさま、彼の肩を踏みつけて起き上がれないようにする。さすがにやられっぱなしではいられないのか、どうにか身体を揺すったり力を振り絞り、逃れようとする。
だが、首元にグッと棍を押しつけながら、「【動かないでくださいね。今、動くと危ないですよ】」と顔を近づけてにっこりと微笑むと大人しく押し黙る。
そして私は、用意していたロープで手早く彼をぐるぐる巻きにするのだった。
「どうでしたー?」
リーダー格の男をぐるぐる巻きにしたあと屋上に転がしておく。命惜しげなあの様子では、高さもあることだし、無駄に転がって落ちるリスクを避けるためにも逃げることなどないだろう。
ということで、男を放置して私は部屋に戻ってきたのだが、こちらも粗方終えたあとのようで、2人は既に護衛兵に拘束されているところだった。
「リ、……ステラ様、ご無事でしたか!」
「ステラ、無事だったか!」
私の顔を見るなり、2人が安堵した表情を浮かべる。クエリーシェルもブランシェもどこも怪我がなさそうだった。
「他のメンバーはいたのか?」
「えぇ、上に1人。ぐるぐる巻きにして転がしてます」
「ぐるぐる巻き……」
「ステラ様に怪我は?」
「私は何とも。あ、上にいる人は出血してるので手当てしてあげてちょうだい。一応加減したから、死ぬことはないと思うけど」
さすがに、他国から来た私がいくら犯人と言えどサハリ国の住人をぼっこぼこにするわけにはいかないので、その辺を加味して加減はしているつもりだ。
クエリーシェルはその辺りなんとなく察したのか、また何か使ったなと察しながらもそれ以上言葉にすることはなかった。
「とにかく無事であればよかった。あとはこちらで処理しよう。ヴァンデッダ卿、キミは自室に戻っていいぞ」
「……承知しました」
「あ、クエリーシェルどうもありがとう」
「いえ。ステラ様、ブランシェ国王、おやすみなさいませ」
本当なら彼にくっついて行きたいが、さすがにそれは叶わず。仕方ないので、大人しく私は待機しておく。
「ブランシェ、私はどうすればいいの?」
現在ここには私とブランシェと護衛兵数人が出入りしてる状態だ。こんな状況で寝れやしない。
先程私が捕まえた男も、上からどうにか下ろしてきたところだった。そのまま連行されて、恐らくこれから尋問が始まることだろう。
「あぁ、代わりに僕の部屋で寝るといい」
「えーーー」
「不満が?」
「ある」
「……もう少しキミは考えることをしないのか」
そうは言っても嫌なものは嫌である。特に未婚の女性が男性の部屋に入るというのは何となく気が引ける。……もちろん、クエリーシェルは別なのだが。
(それに、ブランシェなら何されるかわからないし)
やたらボディタッチが多く距離感が近いので、こういうことは警戒せざるを得ない。
いくら腕っぷしに自信があるとはいえ、さすがに女の力で、かつ抗えない状態の場合は私だってどうすることもできないことはわかっている。
だから、なるべくそういうリスクは避けておきたかった。
「では、仕方ない。そう言うのであれば、僕の部屋にソファーがあるから僕はそちらで寝ることにするよ。だから僕の部屋に来てくれ」
「えーーーー、なら私がソファーで寝る」
「そういうわけにはいかんだろう!いくらキミの頼みでもそれは承服しかねる」
「だって、ブランシェが普段使ってるベッドでしょう?」
「そうだが?」
「えーーーーー……」
ブランシェとこうして押し問答をしてる間、周りで護衛兵達が指示待ちでおろおろとしているのに気づいたのは、もう少しあとのことだった。
いい感じで遠心力も加わり、スリングからそれなりの音がし始めてからやっと気づいたらしい男がこちらを見る。
だが、既に時遅し。
勢いよく彼のこめかみ目掛けて石を放つ。
びゅん……っ!ガッ……っ
飛ばした石は、目にも留まらぬ速さで狙った部位を掠めていく。
「う、ぐぁあああ……っ!」
不意打ちだったせいか、特に身構えることもできずにいた男の身体が大きくよろける。血がこめかみからパッと飛び散ったのを確認すると、そのまま距離を縮めて棍を振るう。
タッタッタッタッ!ぶぅん……!
走った勢いのまま棍を振り切ると、そのままよろけてバランスを崩していた身体は沈んでいく。受け身が取れず、そのまま背中を強打したせいか「ガハッ」と大きく呻いて、身動きが取れないようだった。
私はすぐさま、彼の肩を踏みつけて起き上がれないようにする。さすがにやられっぱなしではいられないのか、どうにか身体を揺すったり力を振り絞り、逃れようとする。
だが、首元にグッと棍を押しつけながら、「【動かないでくださいね。今、動くと危ないですよ】」と顔を近づけてにっこりと微笑むと大人しく押し黙る。
そして私は、用意していたロープで手早く彼をぐるぐる巻きにするのだった。
「どうでしたー?」
リーダー格の男をぐるぐる巻きにしたあと屋上に転がしておく。命惜しげなあの様子では、高さもあることだし、無駄に転がって落ちるリスクを避けるためにも逃げることなどないだろう。
ということで、男を放置して私は部屋に戻ってきたのだが、こちらも粗方終えたあとのようで、2人は既に護衛兵に拘束されているところだった。
「リ、……ステラ様、ご無事でしたか!」
「ステラ、無事だったか!」
私の顔を見るなり、2人が安堵した表情を浮かべる。クエリーシェルもブランシェもどこも怪我がなさそうだった。
「他のメンバーはいたのか?」
「えぇ、上に1人。ぐるぐる巻きにして転がしてます」
「ぐるぐる巻き……」
「ステラ様に怪我は?」
「私は何とも。あ、上にいる人は出血してるので手当てしてあげてちょうだい。一応加減したから、死ぬことはないと思うけど」
さすがに、他国から来た私がいくら犯人と言えどサハリ国の住人をぼっこぼこにするわけにはいかないので、その辺を加味して加減はしているつもりだ。
クエリーシェルはその辺りなんとなく察したのか、また何か使ったなと察しながらもそれ以上言葉にすることはなかった。
「とにかく無事であればよかった。あとはこちらで処理しよう。ヴァンデッダ卿、キミは自室に戻っていいぞ」
「……承知しました」
「あ、クエリーシェルどうもありがとう」
「いえ。ステラ様、ブランシェ国王、おやすみなさいませ」
本当なら彼にくっついて行きたいが、さすがにそれは叶わず。仕方ないので、大人しく私は待機しておく。
「ブランシェ、私はどうすればいいの?」
現在ここには私とブランシェと護衛兵数人が出入りしてる状態だ。こんな状況で寝れやしない。
先程私が捕まえた男も、上からどうにか下ろしてきたところだった。そのまま連行されて、恐らくこれから尋問が始まることだろう。
「あぁ、代わりに僕の部屋で寝るといい」
「えーーー」
「不満が?」
「ある」
「……もう少しキミは考えることをしないのか」
そうは言っても嫌なものは嫌である。特に未婚の女性が男性の部屋に入るというのは何となく気が引ける。……もちろん、クエリーシェルは別なのだが。
(それに、ブランシェなら何されるかわからないし)
やたらボディタッチが多く距離感が近いので、こういうことは警戒せざるを得ない。
いくら腕っぷしに自信があるとはいえ、さすがに女の力で、かつ抗えない状態の場合は私だってどうすることもできないことはわかっている。
だから、なるべくそういうリスクは避けておきたかった。
「では、仕方ない。そう言うのであれば、僕の部屋にソファーがあるから僕はそちらで寝ることにするよ。だから僕の部屋に来てくれ」
「えーーーー、なら私がソファーで寝る」
「そういうわけにはいかんだろう!いくらキミの頼みでもそれは承服しかねる」
「だって、ブランシェが普段使ってるベッドでしょう?」
「そうだが?」
「えーーーーー……」
ブランシェとこうして押し問答をしてる間、周りで護衛兵達が指示待ちでおろおろとしているのに気づいたのは、もう少しあとのことだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,923
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる