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2.5章【閑話休題・恋愛編】
リーシェ&クエリーシェル編
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「どうしたんですか?具合悪いんですか?」
船内で自室としてあてがわれた部屋は、クエリーシェルの隣だ。万が一、何かあった場合はすぐに助けられるように、との国王からの配慮らしい。
船の自室に運び込んだ荷物を荷解きし、足りないものがないか確認したあと、クエリーシェルの部屋へと向かった。ノックをして名乗ると、入室を促す声が聞こえたので部屋に入る。
すると、なぜかまだ荷物はそのままで、クエリーシェルはといえば、簡易ベッドにごろんと横になって、こちらに背を向けながら転がっている状態だった。
そして冒頭の声かけをしたわけなのだが、未だこちらを向く気配はなく、ずっと転がったままだ。返事をしたのだから、寝ているわけではないようだが。
「ケリー様?……っきゃ!」
顔を覗き込めば、ガバッと身体ごと掬われて、そのままボフンっと彼のベッドにダイブする。彼の身体の間で抱き締められて、さながら抱き枕のような状態だ。
「もう、どうしまし……ん、……っ、ふ」
瞳を見ようと顔を向けると、そのまま口付けられる。なんだかそれが性急で、予想範囲外の出来事だったので上手く対応できずに、ジタバタと身をよじった。
「嫌か?」
「……嫌じゃないですけど、急にそういうのは、心構えができてないというか。そもそも、そういう目的の船旅ではないですよ」
まだ離岸したばかり。船の外を見れば、まだ港町ブランカが見えるので、大して離れていない。
「そうだな。我々には大事な任があるしな。諸々が片付いたら新婚旅行として、こういう船旅も悪くないかもしれないな」
(なんか、随分と話が飛躍してるなぁ)
あえてその話には触れず、腕が離れたのを見計らって、するりと彼の腕から抜け出す。そして身体を起こすと、ベッドに腰かけた。
「そう言いますけど、船酔いは大丈夫ですか?」
「……船酔い?」
以前ちょっと船に乗ったことはある、とは言っていたが、この感じだと大して船に乗ったことはなさそうだ。
「船のこの揺れで酔うんですよ。まぁ、そのうち実感すると思いますけど」
「?」
未だに船酔いについてよくわかっていなそうだが、あえて言及しなかった。この感じだと、乗組員の半数以上は船酔いするかもしれないな、などと思いながら、船酔いには何が効くんだっけと思考を巡らす。
確か、船酔い用のツボがあったはず。あとはひたすら船の中央で寝かせるしかないなぁ、吐瀉物はなるべく船の外でしてもらおう、なんて考えていると、彼が寝転がりながら私の腹部に腕を回してくる。
なんだか甘えたがりな子供のようだ。
「やけに先程から甘えてきますね。何かありました?」
「いや、何だ、その、グリーデル大公の話だが」
グリーデル大公、という名が出てきて先程のやり取りを思い出す。
(あぁ、なるほど、そういうことか)
「もう、それで不貞寝されてたんですか?先程のは社交辞令ですよ」
「……わかっている」
「ヤキモチですか?」
「ヤキモチというか、何だ、こんな見た目と年が離れていて、体格差もあるような男よりも、年が近くてそれなりに地位があって、かっこいい方がいいかと思ってな」
(やはり、拗ねていたのか)
何となく寂しそうな背中が可愛らしくて、ゆっくりと摩る。そして、そのまま髪に触れると、幼子をあやすかのように頭を撫でた。
「見た目も年も地位も身長差も含めて、私はクエリーシェル・ヴァンデッダという人が好きですよ。そもそもこのようなじゃじゃ馬娘を面倒見れる人なんて、そうそういませんよ。あと、私まだまだこれから大きくなるのですから、体格差に関しては縮まります!」
ふふん、と自慢げに笑うと、クエリーシェルもこちらを向いて口元を緩める。そして、猫か何かが甘えるように脇腹に頭をぐりぐりと押し付けながら、さらにきつく抱きつかれた。
「そうだな、それは楽しみだな」
「そうですよ。もっと胸もですね、そのうち大きく……ってこら!どこを触って……っ!」
怪しい動きを始める手を、必死で剥がすが彼の大きくて骨張った手は、なかなかどうにも剥がすのは難しかった。
「こら、セクハラですよ!」
「いや、育てようかと」
「何を!?」
トントン、とノックの音と共に、全力で彼を蹴飛ばせば、ドガンっ!と大きな音と共に大きな体躯がベッドから転げ落ちていく。
「失礼しまーす、ヴァンデッダ卿、とりあえず乗組員にご挨拶を……って、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ、大丈夫だ」
その時運悪くできた後頭部のたんこぶは、なかなか治らなかったようだ。
船内で自室としてあてがわれた部屋は、クエリーシェルの隣だ。万が一、何かあった場合はすぐに助けられるように、との国王からの配慮らしい。
船の自室に運び込んだ荷物を荷解きし、足りないものがないか確認したあと、クエリーシェルの部屋へと向かった。ノックをして名乗ると、入室を促す声が聞こえたので部屋に入る。
すると、なぜかまだ荷物はそのままで、クエリーシェルはといえば、簡易ベッドにごろんと横になって、こちらに背を向けながら転がっている状態だった。
そして冒頭の声かけをしたわけなのだが、未だこちらを向く気配はなく、ずっと転がったままだ。返事をしたのだから、寝ているわけではないようだが。
「ケリー様?……っきゃ!」
顔を覗き込めば、ガバッと身体ごと掬われて、そのままボフンっと彼のベッドにダイブする。彼の身体の間で抱き締められて、さながら抱き枕のような状態だ。
「もう、どうしまし……ん、……っ、ふ」
瞳を見ようと顔を向けると、そのまま口付けられる。なんだかそれが性急で、予想範囲外の出来事だったので上手く対応できずに、ジタバタと身をよじった。
「嫌か?」
「……嫌じゃないですけど、急にそういうのは、心構えができてないというか。そもそも、そういう目的の船旅ではないですよ」
まだ離岸したばかり。船の外を見れば、まだ港町ブランカが見えるので、大して離れていない。
「そうだな。我々には大事な任があるしな。諸々が片付いたら新婚旅行として、こういう船旅も悪くないかもしれないな」
(なんか、随分と話が飛躍してるなぁ)
あえてその話には触れず、腕が離れたのを見計らって、するりと彼の腕から抜け出す。そして身体を起こすと、ベッドに腰かけた。
「そう言いますけど、船酔いは大丈夫ですか?」
「……船酔い?」
以前ちょっと船に乗ったことはある、とは言っていたが、この感じだと大して船に乗ったことはなさそうだ。
「船のこの揺れで酔うんですよ。まぁ、そのうち実感すると思いますけど」
「?」
未だに船酔いについてよくわかっていなそうだが、あえて言及しなかった。この感じだと、乗組員の半数以上は船酔いするかもしれないな、などと思いながら、船酔いには何が効くんだっけと思考を巡らす。
確か、船酔い用のツボがあったはず。あとはひたすら船の中央で寝かせるしかないなぁ、吐瀉物はなるべく船の外でしてもらおう、なんて考えていると、彼が寝転がりながら私の腹部に腕を回してくる。
なんだか甘えたがりな子供のようだ。
「やけに先程から甘えてきますね。何かありました?」
「いや、何だ、その、グリーデル大公の話だが」
グリーデル大公、という名が出てきて先程のやり取りを思い出す。
(あぁ、なるほど、そういうことか)
「もう、それで不貞寝されてたんですか?先程のは社交辞令ですよ」
「……わかっている」
「ヤキモチですか?」
「ヤキモチというか、何だ、こんな見た目と年が離れていて、体格差もあるような男よりも、年が近くてそれなりに地位があって、かっこいい方がいいかと思ってな」
(やはり、拗ねていたのか)
何となく寂しそうな背中が可愛らしくて、ゆっくりと摩る。そして、そのまま髪に触れると、幼子をあやすかのように頭を撫でた。
「見た目も年も地位も身長差も含めて、私はクエリーシェル・ヴァンデッダという人が好きですよ。そもそもこのようなじゃじゃ馬娘を面倒見れる人なんて、そうそういませんよ。あと、私まだまだこれから大きくなるのですから、体格差に関しては縮まります!」
ふふん、と自慢げに笑うと、クエリーシェルもこちらを向いて口元を緩める。そして、猫か何かが甘えるように脇腹に頭をぐりぐりと押し付けながら、さらにきつく抱きつかれた。
「そうだな、それは楽しみだな」
「そうですよ。もっと胸もですね、そのうち大きく……ってこら!どこを触って……っ!」
怪しい動きを始める手を、必死で剥がすが彼の大きくて骨張った手は、なかなかどうにも剥がすのは難しかった。
「こら、セクハラですよ!」
「いや、育てようかと」
「何を!?」
トントン、とノックの音と共に、全力で彼を蹴飛ばせば、ドガンっ!と大きな音と共に大きな体躯がベッドから転げ落ちていく。
「失礼しまーす、ヴァンデッダ卿、とりあえず乗組員にご挨拶を……って、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ、大丈夫だ」
その時運悪くできた後頭部のたんこぶは、なかなか治らなかったようだ。
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