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1章【出会い編】

24 恋バナ

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「私はロリコンだったのか?」
「そうかもな」

ソファで寝そべりながらずーんと落ち込んでるクエリーシェルに、クイードはつれなく答える。

たまに疲労度やらストレスやらが溜まると、この男はとてつもなくめんどくさくなるのがタチが悪い、とクイードは呆れていた。

「で、舞踏会はどうだったんだ?」
「まぁ、いつもに比べて盛況だったというか、なんていうか。遠巻きにされることなく、何人かと踊ることもできたし、歓談もしたぞ」
「それは良かったではないか。さすが、有能なメイドを雇ったかいはあったな」
「そうだな、そうなんだが。どうしてもリーシェと比べてしまうというか、彼女以外だと落ち着かないというか」

なんとなくそんな気はしていた。

前回の話しぶり的に、この男はそのメイドに夢中であることは誰の目から見ても明らかだった。どうせ、全ての行動をメイドを基準に考えてしまっていたのだろう。

相手の女性には失礼極まりないが、恋愛経験不足なこの男にそのような指摘をしても意味がないだろう。恐らく、本人もその想いに気づいていないのだから。

そして、不明確な気持ちと現実のギャップに、つい深酒をしてしまったと言ったところだろうか。我が幼馴染ながら、実に愚かな男である。

(仕方ない、あえて話を振るか)

「なんだ、メイドが好きなのか」
「いや、そういうことではないんだ。きっと、ただ物珍しいから興味があるというか、普通の娘と違うところがいいとか……」

それが好きだということではないのか?と内心思いながらも、クイードはあえて言わなかった。

そもそも、言ったところで実らない恋だということはわかりきっている。有能なメイドだからこそ、きっと想いを告げられたところで断るだろう。それが有能で、分別のあるメイドだ。

せっかくの初恋だというのに、この年にして難儀な男だなぁ、とクイードは不憫に思いながらも、あえてその気持ちを悟らせないように誘導するのが、せめてもの友情だった。

「で、いい娘はいたか?ダンスはどうであった?」
「あぁ、何人か続けて踊ったよ」
「それは脈アリではないか!」

わざと気をそらすように話を盛り上げる。それに多少食いついたのか、顔を上げるクエリーシェル。

「そうか?」
「そうだろう、続けて踊るということは好意を持たれているということだ。やったな。あとは家に招待するのがよいな。もし人手がいるなら貸そうか?」
「いや、さすがに王城から人を借りるわけにはいかんだろう。姉さんに聞いてみるよ」
「そうだな、マルグリッダも喜ぶだろうよ」
「……だろうな」

再びソファに沈み込むクエリーシェル。二日酔いのせいなのか、はたまた乗り気でないせいか、ものぐさな態度になってしまっている。

まぁ今は慣れていないだけ、マルグリッダもこれはチャンスだと、ここぞとばかりに縁談を持ってくるだろう。

(まぁ、これもまた運命だ。生まれた家を恨むしかない)

クイードも、かつては自分もそのような感情を持て余していたことを思い出していた。

どうして私はこの国の皇子に生まれたのだ、どうして彼女と結婚できない、などと今思えば青臭いことこの上ないことを沸々と感じていたものだ。

とはいえ、そういう感情も含めて今の自分があるというのは事実である。王妃には絶対に知られてはいけない過去なのは確実だが。

「そういえば、カジェ国の通訳探してなかったか」

急にむくりと起き上がり、こちらを見てくるクエリーシェル。

確かに、国賓として我が国コルジールに招く予定はある。

東南にあるカジェ国とは元々先代国王と親交があっただけで、私の代に変わってから隣国マルダスが侵攻することが増えてきたため、親交どころの話でなくあまり交流していなかった。

そのため現在はたまの貿易くらいでしかあまり交流がなく、以前通訳していた者は先日高齢で亡くなってしまった上、後継を育てるのを疎かにしていたため、会談を成立させるほど通訳が可能かつ信頼のおける人材が現地点でいないことは事実である。

そういえば以前、そのような愚痴を言った気もする。

「どうした、藪から棒に。確かに探してはいたが」
「私に心当たりがあるんだが」

にやりと意地悪い笑みを浮かべる彼。彼の言う心当たりなど1つしか思いつかない。

「まさか、いや、まさかな」
「あぁ、そのまさかだ」
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