若き騎士達の危険な日常

あーす。

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空間から出(い)でる者

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 ローフィスは腕に抱く、華奢なシェイルの体を感じると…また情熱が身を駆け抜けるのを感じる。
どうしても直ぐ、またシェイルが欲しくて…。

胸に顔を埋めるシェイルの顔を、胸を離して上げさせ、そしてまた…赤く染まる柔らかな唇に、口づける…。

シェイルはもう、ローフィスの熱を感じ、彼の男としてのほとばしる情熱をも感じ…欲される喜びと、同時に引き裂かれる男としての本能の狭間で立ちすくむ。

“どうしていいか…分からない!”

シェイルが心の中で悲鳴を上げた時。

ローフィスが気づいて、シェイルを見つめる。

青い瞳が、心の奥底まで見つめようと覗き込む。

「…シェイル?」

でもその時、ノックの音がして、ディアヴォロスの
「開けるが、構わないか?」
と告げる声がした。

ローフィスは跳ね起きてそして…自分の、乱れきった衣服を見た。

突然正気に戻ったように、呟く。
「…まだ風呂にも………」

慌てて、はだけた胸のシャツをかき寄せ、ズボンを引きずり上げ、シェイルの体から滑り落ちたマントを、床から取り上げてシェイルの体の上にかけ、ソファに座り込んで言葉を返す。

「開けて、いい」

ディアヴォロスが姿を現す。

地色が濃紺の、金飾りのついた衣服を見事に着こなす、長身の逞しい体躯たいく
黒い艶やかな長い縮れ毛で、肩と背を覆い、整いきった高貴で美しい顔の、浮かぶような瞳は…。
その時、渋いグリンに見えた。

ディアヴォロスは自分の黒いマントを握り裸体を隠す、乱れた銀の髪の綺麗なシェイルの、とても赤い唇に目を止める。

一瞬内心、激しい嫉妬の炎が、身を焦がすかとすら感じたが抑え込んで囁く。

「ワーキュラスはシェイルが。
長年怯えてる元凶を追い払わないとダメだと。
そう言うから少し時間が欲しい」

ローフィスはまだ、湧き上がる自分の熱を抑え込むのに精一杯。
心ここにあらずで、頷く。

ディアヴォロスは室内に入り、一段下ったソファの、ローフィスの横に立ってシェイルを見つめる。

けれどその時。
ディアヴォロスの身が、がくん!と震った。

シェイルはディアヴォロスを呆けたように見つめ、ローフィスも気づいて、正面にシェイルを向いて立つ、ディアヴォロスの横顔を見つめた。

ディアヴォロスが、眉を寄せる。
暫く、きつく眉を寄せ、その後とうとう、手を真横に突き出す。

途端、その空間から神聖騎士が姿を現すので、ローフィスもシェイルもぎょっ!とした。

現れた神聖騎士は、ディアヴォロスより長身。

白いマントに白の隊服を身に付け、ディアヴォロスに微笑んで告げる。

「私を呼び出し、正解ですよ?
能力を使う繊細な作業は、『光の民』でない貴方には荷が重すぎます。
今、私が引きずり出します。
が、見たところかなりの大物。
出した相手を払い切るには、ワーキュラス殿のお力が必要かもしれません」

ディアヴォロスは頷く。

ローフィスもシェイルも、間近に『光の王』の末裔である神聖騎士を初めて見て、目を見開く。
東の聖地の神聖神殿隊と呼ばれる、『光の王』の従者の末裔には、会ったことがあるけど…。

「(身を覆う、光の量も質も、圧倒的に違う…!)」
ローフィスは『騎士の中の最も素晴らしい騎士』と呼ばれる神聖騎士に、見惚れた。

シェイルは不安そうに、神聖騎士を見つめる。

けれど白っぽい髪を腰まで伸ばした、整いきって美しい面の神聖騎士は、ブルーの瞳を向けて微笑む。

「…貴方にとても執着している、『影』がいます。
『影の民』本体は、別の次元に封印されていますが…。
『影』を飛ばしては人を恐怖に陥れてエネルギーを得る。
貴方は…彼らからしたら、格好の餌食…」

ローフィスは大きく、顔を揺らした。
敵は、シェイルの伯父かもしくは…シェイルをさらい、アースルーリンドの外の国へ高値で売ろうとする、盗賊らだと思ってた…。

まさかしつこく付け狙っている『影』まで居たなんて!

「(そういえば…)」
ローフィスは以前、東の聖地の神聖神殿隊に仕える連隊騎士だった父、ディラフィスが…。
時折、泊まる宿屋の部屋の四隅に、神聖護符を置いて結界を張るのを見た。

「何かマズいものでも…この宿、いるの?」
そう聞いたけど…ディラフィスは笑う。
「念のためだ。
『影』に憑かれてからでは遅い」

ローフィスは頼りのディラフィスが万一『影』に憑かれたりしたら…残された二人の子供がとても困ると知っていて、自衛してるのだと思ってた…。

「(親父はシェイルを付け狙う、『影』がいると、知ってたのか…?)」

神聖騎士はシェイルの背後の空間から、長く伸びた『影』の触手を見つけ出す。
そしてそれが、逃げ出せないよう押さえつけて、引き寄せる。

けれど両手を何も無い空間に伸ばす神聖騎士の両手首が。
一瞬チリ…!と黒い炎を上げて焼け、瞬時に凄まじい光がディアヴォロスの胸から発し、焦げも傷をも、消して行く。

神聖騎士は咄嗟に助けてくれた光竜ワーキュラスに、感謝の微笑を送る。

そしてゆっくりと…光の盾で自身を守りながら、『影』の触手を引きずり出した。

ぐわっ!

凄まじい音と共に、シェイルの上の方の空間が開き、真っ黒な闇が浮かび上がる。

“我を呼び出すとは!
大した度胸だ!!!”

しゃがれた…おぞましいぞっとする声が、空間に響き渡る。

その時室内の誰もが。
神聖騎士の
“『闇の第二』!!!”
そう叫ぶ、口に出さぬ声が聞こえた。

ローフィスが、血相変えて空間に振り向く。

空間に浮かぶ闇の中。
黒い人型がシルエットのように浮かび上がり、その目は真っ赤に、光っていた。

けれど『闇の第二』は、対峙する神聖騎士の背後に立つ人物の、胸元に輝く光を見つけ、おぞましい声で呟く。

“まさか…まさかまさか貴様…!!!
光竜降ろす者か?!
が「左の王家」からはもう長らく…光竜降ろす者は途絶えた筈!!!
いや…ディアヴォロス…とか言う、愚か者が居たな…。
が、例え降ろせたとしても…これ程一体化し、力を使える者など…出ぬはず!!!”

ディアヴォロスはその時、『闇の第二』を睨み付けて叫んだ。

「さては貴様が!!!
「左の王家」の堕落を図ったか!!!」

『闇の第二』はそのいきどおりりにわらう。

“今も我を強く求める、お前の一族の者が居る!!!
直…光竜の呼ぶ声も、ロクに聞こえぬ者らが一族を仕切る!!!”

ディアヴォロスが激しく空間の、『闇の第二』を睨めつけた。

がその時…。
“私と「左の王家」との繋がりを、そなたは甘く見すぎている…”

ワーキュラスの、荘厳な声が響き渡る。

“人間に肩入れする光竜など!
貴様を除き、他にはおらぬ!
とっとと『光の国』に去れ!!!”

“その言葉をそのまま、そなたに返そう…。
『影』を、引け”

『闇の第二』は、光竜の言葉に嗤った。

“さすればお前も!
「左の王家」との絆を断つか?!”

“「左の王家」に私は望まれている。
お前とは、立場が違う”

“だが我も、望まれている!”

けれどその時、神聖騎士がぴしゃり!と叫んだ。

「人の心を操る、その能力で相手の意思を抑え込み、繰り人形にしてるだけでは無いか!」

“だが人間はそれを望む!
なぜなら我は、人間の果たせぬ欲望を、満たしてやるからな!!!”

ディアヴォロスが腹の底から、肝の据わった声で吠える。

「…暗い…歪んだ欲望をか!!!」

シェイルは空間の…懐かしさすら感じる、ずっと自分を怯えさせていた本体である『闇の第二』を。
心の底から身震いし、呆けて見つめ続けた。

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