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43.生姜湯

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ブライアンには人の交わりを盗み聞きして興奮する趣味はない――と自分では思っている。父の寝室の前を通りかかったら、喘ぎ声が聞こえてしまったのだ。

(くそっ!父上は色ボケ嘘つきだ!結婚前はステファニーとは白い結婚だ、母上とは別れないって言っていたのに!)

ブライアンはこうなったら、父の夫婦関係をめちゃめちゃにしてやろうと決意した。

それから数日後、エイダンは領地視察に出かけた。ブライアンも次期当主として同行する予定だったが、調家で療養することになった。

ステファニーが居間で刺繍をしていると、廊下をブライアンがフラフラと歩いているのが見えた。

「あら、ブライアン様、どうしたの?何か必要なら侍女に言いつけて下さい」

「喉が渇いたんです・・・ステファニー様が教えてくれましたよね、風邪には生姜湯に蜂蜜を垂らしたのが効くって。それが飲みたくて・・・」

「あら、侍女に用意させて持って行かせますから、寝室に戻っていて下さいな」

「ステファニー様が用意してくれたのがおいしかったんですよね。ステファニー様が作って持ってきてくれませんか?」

「あら、仕方ないわね。じゃあ、おとなしく寝て待っていて下さいな」

ステファニーは、約束した通り、自分でポットとカップをブライアンの寝室まで運び、ナイトテーブルにカップを置いて生姜湯を注いだ。

義理の母と息子と言っても、年齢が2歳しか変わらない年頃の男女なので、寝室の扉は半分開けたままにしてあった。

「ステファニー様も座って飲みませんか?」

「あら、私カップ1つしか持ってきていないわ」

「私の分は常備しています。そこの棚から青いカップを出してくれませんか?」

ステファニーが棚の方へ向かうと、ブライアンは懐から出した小瓶の中身をすばやくナイトテーブルの上のカップの中に垂らした。

ステファニーはブライアンの寝台の横にあった椅子に座り、自分で持ってきたカップの生姜湯を飲んだ。ブライアンも青いカップの中の生姜湯を飲みながら、ステファニーの様子をこっそり観察していた。

「何だか暑いわね。貴方の風邪がうつってしまったのかしら」

「ああ、それは悪かった。熱を冷ましてあげるよ」

急にくだけた調子の言葉遣いになったブライアンにステファニーは戸惑った。
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