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家族に相談
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「留学か! それはいい。是非そうしなさい」
「そうですね。リオナ、なによりもあなたの心が心配です。後のことは私たちがなんとかしますから、今はゆっくりと療養してきなさい」
「は、はい」
意外だ。こんなにあっさり許可をしてもらえるなんて。
ロドリオットの言葉に従い、私は留学の件について両親に相談していた。
すると両親は二つ返事でオーケーを出してくれたのだ。
「……本当にいいのですか? レンバート殿下との婚約破棄によって、色々と厄介ごとが起こると思いますが……」
「そんなことは気にしなくていい。お前の幸せが、私や母さんの幸せなんだからな」
「そうよ。今まであなたには、随分と無理をさせてたと思っているの。これもいい機会だわ」
「……ありがとうございます、お父様、お母様」
あくまで穏やかに言う両親に、私はぐっと涙をこらえた。
二人はずっと私を厳しく育ててきた。
当然だ。公爵家の娘として、私にはこの国の貴族令嬢の手本となる義務があるのだから。
けれどそんな中にも私に対する愛情はあったのだ。
そう思うと、だんだん視界が滲んできてしまう。
「泣くな、リオナ」
「すみません……嬉しくて」
「留学の書類はこちらで作っておく。荷造りもメイドにさせよう。リオナはゆっくり休みなさい」
「はい。ありがとうございます」
ロドリオットに、お父様に、お母様。
私の周りには私を気にかけてくれる人が何人もいる。そのことが嬉しくて、私はしばらく泣いてしまうのだった。
▽
「レンバート様ぁ。はい、あ~ん」
「行儀が悪いぞ、マリアナ。まったく……今回だけだぞ?」
「ふふっ、はぁーい!」
フォークに刺して差し出した果物を口で受け取るレンバート様を見ながら、アタシ――マリアナ・ローゼスは内心でニヤニヤと笑った。
ようやくアタシは、あのリオナ・ファルゼンベルクからすべてを奪うことができたのだ。
嬉しくて仕方ない。
ここまで来るのは本当に大変だった。
レンバート殿下と結婚し、王妃になると決意したのが十年前。
そこから色々と策を弄して貴族になり、学院へと潜入した。
しかしレンバート様の横には常にリオナがいた。
あの女は本当に厄介だった。
この国で王族の次に権力を持つファルゼンバルク公爵家の長女で、『セルファネル王国に咲いた薔薇』とまで比喩される美貌まで持っている。
調子に乗って悪事でも働いてくれればいいのに、それもなし。
おまけに鬱陶しい特技まで持っている。
まさに理想的なまでの貴族令嬢だった。
(色々と苦労したけど……ようやく欲しいものが手に入ったわ!)
そう、レンバート様の心はすでに自分のもの。
王妃の座はもらったも同然だ。
これでアタシはこの国を裏から牛耳る立場を目前とした、ってわけ。
「それにしても、最近あの女は姿を見せないな」
不意にレンバート様がそんなことを言った。
「あの女?」
「リオナのことだ。婚約破棄をしてやってから、顔を一度も見てないと思ってな」
確かにリオナは婚約破棄騒ぎ以降、一度も学院に来ていない。
アタシはレンバート様の腕を撫でながら言った。
「あんな女なんてどうでもいいじゃないですか」
「そうだな。お前がいるんだし、あんな堅苦しい女なんてどうでもいい」
あっははは!
リオナに聞かせてやりたいわ、この台詞。
あれだけ頑張って王妃教育を受けてたのに、『堅苦しい女』ですって。
かわいそう~~~~!
「だが、僕に振られたあの女がどんな惨めな末路をたどっているかは気になるな。婚約破棄を告げたときには、あまり大きな反応をしなかったからつまらなかった」
ああ、なるほど。そういう理由ね。
実はアタシはリオナが学院に来てない理由を知っている。
せっかくだから教えてあげるとしよう。
「噂によると、リオナは隣国に留学するらしいですよ? ロドリオットと一緒に」
「留学? なぜだ?」
「なんでも婚約破棄に関する揉め事を避けるためだとか。要するに尻尾を巻いて逃げたんですよ」
私が言うと、なぜかレンバート様は嫌そうな顔をする。
「ロドリオットと一緒なのか」
「なにかまずいことでも?」
「あの女が目の前から消えてくれるのはいいことだ。だが、確かロドリオットはリオナと仲が良かったはずだ。しかもあの国の要人でもある。ロドリオットがリオナを弁護するような発言をしたら厄介だ」
ああ、確かに。
ロドリオットが『婚約破棄はレンバート様の浮気のせいです』なんて言ったら、この国の王族の評価がダダ下がりだもんね。
まあ事実なんだけど。
でも、せっかく王妃になれそうなのに、この国の評判が下がるのは嫌だなあ。
「マリアナ。悪いが僕はもう帰ることにするよ」
「ええ~? なんでですか」
「隣国の王族に向けて手紙を書くんだ。『リオナとロドリオットは嘘を吐いているから絶対になにを言われても信じるな』ってね。そうすれば僕の評判が下がることはない」
「なるほど! さっすがレンバート様!」
「だから、今日のデートはここまでだ。また明日、マリアナ」
「はぁい。また明日、レンバート様」
アタシたちは別れのキスを交わすと、そこで解散となった。
ああ、楽しみ!
いけ好かない女の……リオナの不幸になる姿は、想像するだけで楽しいわ!
「そうですね。リオナ、なによりもあなたの心が心配です。後のことは私たちがなんとかしますから、今はゆっくりと療養してきなさい」
「は、はい」
意外だ。こんなにあっさり許可をしてもらえるなんて。
ロドリオットの言葉に従い、私は留学の件について両親に相談していた。
すると両親は二つ返事でオーケーを出してくれたのだ。
「……本当にいいのですか? レンバート殿下との婚約破棄によって、色々と厄介ごとが起こると思いますが……」
「そんなことは気にしなくていい。お前の幸せが、私や母さんの幸せなんだからな」
「そうよ。今まであなたには、随分と無理をさせてたと思っているの。これもいい機会だわ」
「……ありがとうございます、お父様、お母様」
あくまで穏やかに言う両親に、私はぐっと涙をこらえた。
二人はずっと私を厳しく育ててきた。
当然だ。公爵家の娘として、私にはこの国の貴族令嬢の手本となる義務があるのだから。
けれどそんな中にも私に対する愛情はあったのだ。
そう思うと、だんだん視界が滲んできてしまう。
「泣くな、リオナ」
「すみません……嬉しくて」
「留学の書類はこちらで作っておく。荷造りもメイドにさせよう。リオナはゆっくり休みなさい」
「はい。ありがとうございます」
ロドリオットに、お父様に、お母様。
私の周りには私を気にかけてくれる人が何人もいる。そのことが嬉しくて、私はしばらく泣いてしまうのだった。
▽
「レンバート様ぁ。はい、あ~ん」
「行儀が悪いぞ、マリアナ。まったく……今回だけだぞ?」
「ふふっ、はぁーい!」
フォークに刺して差し出した果物を口で受け取るレンバート様を見ながら、アタシ――マリアナ・ローゼスは内心でニヤニヤと笑った。
ようやくアタシは、あのリオナ・ファルゼンベルクからすべてを奪うことができたのだ。
嬉しくて仕方ない。
ここまで来るのは本当に大変だった。
レンバート殿下と結婚し、王妃になると決意したのが十年前。
そこから色々と策を弄して貴族になり、学院へと潜入した。
しかしレンバート様の横には常にリオナがいた。
あの女は本当に厄介だった。
この国で王族の次に権力を持つファルゼンバルク公爵家の長女で、『セルファネル王国に咲いた薔薇』とまで比喩される美貌まで持っている。
調子に乗って悪事でも働いてくれればいいのに、それもなし。
おまけに鬱陶しい特技まで持っている。
まさに理想的なまでの貴族令嬢だった。
(色々と苦労したけど……ようやく欲しいものが手に入ったわ!)
そう、レンバート様の心はすでに自分のもの。
王妃の座はもらったも同然だ。
これでアタシはこの国を裏から牛耳る立場を目前とした、ってわけ。
「それにしても、最近あの女は姿を見せないな」
不意にレンバート様がそんなことを言った。
「あの女?」
「リオナのことだ。婚約破棄をしてやってから、顔を一度も見てないと思ってな」
確かにリオナは婚約破棄騒ぎ以降、一度も学院に来ていない。
アタシはレンバート様の腕を撫でながら言った。
「あんな女なんてどうでもいいじゃないですか」
「そうだな。お前がいるんだし、あんな堅苦しい女なんてどうでもいい」
あっははは!
リオナに聞かせてやりたいわ、この台詞。
あれだけ頑張って王妃教育を受けてたのに、『堅苦しい女』ですって。
かわいそう~~~~!
「だが、僕に振られたあの女がどんな惨めな末路をたどっているかは気になるな。婚約破棄を告げたときには、あまり大きな反応をしなかったからつまらなかった」
ああ、なるほど。そういう理由ね。
実はアタシはリオナが学院に来てない理由を知っている。
せっかくだから教えてあげるとしよう。
「噂によると、リオナは隣国に留学するらしいですよ? ロドリオットと一緒に」
「留学? なぜだ?」
「なんでも婚約破棄に関する揉め事を避けるためだとか。要するに尻尾を巻いて逃げたんですよ」
私が言うと、なぜかレンバート様は嫌そうな顔をする。
「ロドリオットと一緒なのか」
「なにかまずいことでも?」
「あの女が目の前から消えてくれるのはいいことだ。だが、確かロドリオットはリオナと仲が良かったはずだ。しかもあの国の要人でもある。ロドリオットがリオナを弁護するような発言をしたら厄介だ」
ああ、確かに。
ロドリオットが『婚約破棄はレンバート様の浮気のせいです』なんて言ったら、この国の王族の評価がダダ下がりだもんね。
まあ事実なんだけど。
でも、せっかく王妃になれそうなのに、この国の評判が下がるのは嫌だなあ。
「マリアナ。悪いが僕はもう帰ることにするよ」
「ええ~? なんでですか」
「隣国の王族に向けて手紙を書くんだ。『リオナとロドリオットは嘘を吐いているから絶対になにを言われても信じるな』ってね。そうすれば僕の評判が下がることはない」
「なるほど! さっすがレンバート様!」
「だから、今日のデートはここまでだ。また明日、マリアナ」
「はぁい。また明日、レンバート様」
アタシたちは別れのキスを交わすと、そこで解散となった。
ああ、楽しみ!
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