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2. 決心
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当てもなく進み始めてどの位経っただろう。空が白んできたのを見ると3時間くらいだと思うが体感的にはもっと歩いた気がする。何もなかった草原はちらほら木や花が生えている光景へと変わっていた。もう喉がカラカラでだいぶ前から水を探しているが見つからない。
大きな木の根元に座って一休みする。
せめて川くらい探さなきゃ。そう思って立ち上がった時、微かにシューッ…シューッ…と音が聞こえた。
何この音、やな感じがする…。辺りに視線を走らすが何もいない。もっとよく聞こうと耳を済ませると、突然音が大きくクリアになった。
え…どうなってるの?いや、それより今は音の正体が先だ。より集中して探る。
左斜め前?もしかしてあの木から…?10メートルは離れてるけど…。木を凝視すると視界がぼやける。でもそれは一瞬で、キュイン!と擬音が鳴りそうな勢いで木に焦点が合うと葉の1枚1枚まで鮮明に見えた。
驚きで見開かれた私の目に入ったのは…。
「蛇!」
ただの蛇ではない。魔物化して口から瘴気を吐きだす紅い目をした大蛇。
に、逃げなきゃ…頭ではそう思っていても足が竦んで動いてくれない。大蛇は私を獲物と認識したのかゆっくりと近づいてくる。このままじゃやられる…何か、何かしなきゃ。でも武器なんかないし…魔法?回復魔法は今役に立たないし……白、白魔法…。
考えを巡らせている間に大蛇は後3、4メートルの所まで迫っていた。
怯える私を見据えて嘲笑うかのように鋭い牙を覗かせ
シャ―――ッ!!
と蛇特有の威嚇音と共に一気に差を詰めて襲い掛かる。
「――ッ!ホーリー!」
咄嗟に手を前に掲げながら顔を背け、必死に唱えた。
次の瞬間、私の手の平から眩い光が放たれて視界を真っ白に染める。
視界が戻ってそっと目を開けると、大蛇のいたはず所には魔石が転がっているだけだった。
「…うまく、いった…」
ホッとして力が抜け、その場にへたり込む。額の冷や汗を拭おうと手を伸ばした時、微かに震えている自分に気が付いた。
初めて魔物を実際に見て、初めて魔法を使って、初めて戦って。ここは本当に異世界なんだと実感した。これから自分はここで生きていかなくてはならない。
私は自らの震える手で膝を抱えて顔を埋めた。魔物がいた場所から早く移動した方がいいのは分かっていたが、気持ちがついていかなかった。
何故、こんな目に遭わなきゃいけない…私が何をしたって言うの。小5で母が亡くなり、高1で父が亡くなり、親戚もなく、両親が残してくれたお金で高校を卒業して就職した。懸命に頑張ってきたつもりだった。
堪えきれずに零れた涙は1度流れたら止まらなくなってしまった。
◇
すっかり日が昇って辺りが明るくなる頃、私は再び歩き始めた。
さっき思いっきり泣いて少し落ち着き、考えた。
前の人生が特別不幸だったとは思わない。両親は亡くなってしまったが、愛情を受けた沢山の思い出はずっと心にあった。色々想定外過ぎる事が立て続けに起こって我慢できず、つい落ち込んで卑屈になってしまった。
こんなんじゃダメだ。
負けるもんか。
強くなるんだ。
泣いてたって幸せにはなれない。
私はこの世界で、幸せになるんだ!!
そう心に決めた。
大きな木の根元に座って一休みする。
せめて川くらい探さなきゃ。そう思って立ち上がった時、微かにシューッ…シューッ…と音が聞こえた。
何この音、やな感じがする…。辺りに視線を走らすが何もいない。もっとよく聞こうと耳を済ませると、突然音が大きくクリアになった。
え…どうなってるの?いや、それより今は音の正体が先だ。より集中して探る。
左斜め前?もしかしてあの木から…?10メートルは離れてるけど…。木を凝視すると視界がぼやける。でもそれは一瞬で、キュイン!と擬音が鳴りそうな勢いで木に焦点が合うと葉の1枚1枚まで鮮明に見えた。
驚きで見開かれた私の目に入ったのは…。
「蛇!」
ただの蛇ではない。魔物化して口から瘴気を吐きだす紅い目をした大蛇。
に、逃げなきゃ…頭ではそう思っていても足が竦んで動いてくれない。大蛇は私を獲物と認識したのかゆっくりと近づいてくる。このままじゃやられる…何か、何かしなきゃ。でも武器なんかないし…魔法?回復魔法は今役に立たないし……白、白魔法…。
考えを巡らせている間に大蛇は後3、4メートルの所まで迫っていた。
怯える私を見据えて嘲笑うかのように鋭い牙を覗かせ
シャ―――ッ!!
と蛇特有の威嚇音と共に一気に差を詰めて襲い掛かる。
「――ッ!ホーリー!」
咄嗟に手を前に掲げながら顔を背け、必死に唱えた。
次の瞬間、私の手の平から眩い光が放たれて視界を真っ白に染める。
視界が戻ってそっと目を開けると、大蛇のいたはず所には魔石が転がっているだけだった。
「…うまく、いった…」
ホッとして力が抜け、その場にへたり込む。額の冷や汗を拭おうと手を伸ばした時、微かに震えている自分に気が付いた。
初めて魔物を実際に見て、初めて魔法を使って、初めて戦って。ここは本当に異世界なんだと実感した。これから自分はここで生きていかなくてはならない。
私は自らの震える手で膝を抱えて顔を埋めた。魔物がいた場所から早く移動した方がいいのは分かっていたが、気持ちがついていかなかった。
何故、こんな目に遭わなきゃいけない…私が何をしたって言うの。小5で母が亡くなり、高1で父が亡くなり、親戚もなく、両親が残してくれたお金で高校を卒業して就職した。懸命に頑張ってきたつもりだった。
堪えきれずに零れた涙は1度流れたら止まらなくなってしまった。
◇
すっかり日が昇って辺りが明るくなる頃、私は再び歩き始めた。
さっき思いっきり泣いて少し落ち着き、考えた。
前の人生が特別不幸だったとは思わない。両親は亡くなってしまったが、愛情を受けた沢山の思い出はずっと心にあった。色々想定外過ぎる事が立て続けに起こって我慢できず、つい落ち込んで卑屈になってしまった。
こんなんじゃダメだ。
負けるもんか。
強くなるんだ。
泣いてたって幸せにはなれない。
私はこの世界で、幸せになるんだ!!
そう心に決めた。
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