刀姫 in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編

流川おるたな

文字の大きさ
31 / 113

ノ31 仙女になる方法

しおりを挟む
 店の中から湯呑みの乗ったお盆を片手に、団子屋の娘が慌てて勢い良く飛び出してくる。

「お茶を忘れてました~!ほんっとうに申し訳ございませ~ん!出来立てアツアツですのでお気をつけて呑んでくださいまし~」

 と、聖天座真如の目の前で急停止した彼女は慌ててはいたが、熱いお茶の入った湯呑みを丁寧にそっと、長椅子の上へ置いた。

 余談だけれど、抹茶とは異なる煎茶という種のお茶は江戸時代初期頃、中国より隠元禅師(いんげんぜんじ)という人物が伝えたらしく、江戸幕府の儀礼に取り入れられ、いつしか武家社会などには欠かせぬものとなったそうな。
 お茶という呑み物の歴史を詳しく紐解けば、幾らでも余談を続けられそうで怖いのでここら辺でやめておこう。

 さて、アツアツの熱いお茶であると忠告されたばかりの聖天座真如が、忠告など聴こえていなかったようにガシッと片手で掴み口元へ持っていく。

「ゴクゴクゴクゴク...ぷはぁ~!茶も美味い!店は小さくてボロく見えるがぁ、なかなかどうして上等な団子屋じゃぁ」

 熱いお茶を一気に呑み干した堕仙女は、殊の外満足そうにそう語った。
 隣に座る仙花が珍獣でも見るような眼差しで言う。

「真如様には驚かされっぱなしじゃ。そんな呑み食いは肝っ玉の大きい儂の父でも無理であろうな...ではそろそろ教えてもらえぬだろうか?」

「...おっ、そうそう、仙人界を追放された時の話じゃったかのう」

「いやいや、堕仙女となった話はもはや完全に不要じゃ。仙女になる方法、この一点だけを詳しく教えて欲しい」

 己の過去を語りたいという意思をバッサリと斬り捨てられた聖天座真如が、残念そうな顔をして話し出す。

「...良いじゃろう、あんまり焦らしてもかわいそうじゃしなぁ。これより語ることは一度しか云わぬ、心して聞くが良い」

 遂にというかやっとというか、ようやく本題の話しが聞けると感じた仙花の表情が引き締まる。

「うむ、心得た。さぁ話してくれ」

 聖天座真如の視点が遠くにある海の水平線へと移り、記憶を手繰り寄せるようにして語り始める。

「...仙人、仙女、まぁ呼び方はどちらでも良いのじゃが、普通の平民であり人間であった儂が仙女となったのは、今より二百年くらい前になるかのう」

「おいおい待て待て、真如様の昔話は不要じゃと言っておろう」

 二百年という驚きの年月を無視して、仙花が話の途中で突っ込みを入れた。

「くっくっくっ、そう年寄りを急かすでない。遥か昔の記憶を呼び戻すには順序立てて語った方が効率が良いのじゃよぉ。先に云ったように、なんせ儂が仙女になったのは二百年ほど昔になるのじゃから...」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

汚部屋女神に無茶振りされたアラサー清掃員、チートな浄化スキルで魔境ダンジョンを快適ソロライフ聖域に変えます!

虹湖🌈
ファンタジー
女神様、さては…汚部屋の住人ですね? もう足の踏み場がありませーん>< 面倒な人間関係はゼロ! 掃除で稼いで推し活に生きる! そんな快適ソロライフを夢見るオタク清掃員が、ダメ女神に振り回されながらも、世界一汚いダンジョンを自分だけの楽園に作り変えていく、異世界お掃除ファンタジー。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

処理中です...