厳しい婚約者から逃げて他国で働いていたら、婚約者が追いかけて来ました。どうして?

火野村志紀

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20.おわり1(ライネック視点)

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 ミリティリア帝国に逃げたカスタネアが菓子店をオープンさせたと聞き、俺は見に行くことにした。
 俺の下を離れてから数ヶ月。そろそろ俺が恋しくなって来た頃だろうし、ファリス公に命じられて帰りたくても帰れない状況になっていると思ったのだ。

 だが俺に待ち受けていたのは信じられないことばかりだった。
 カスタネアに本気で拒絶され、しかもカスタネアがファリス公と恋仲にあるというもの。
 信じられない。信じられるわけがないだろ!?
 カスタネアを問い詰めようとすると、ファリス公に投げ飛ばされ、兵士たちによって店から引き摺り出されていた。



 その後はリスター国に無理矢理帰された。
 ふざけるな、他国の貴族にこんな真似をして許されるのかと抗議したが、リスター国の国王にも了承は取っていると聞かされて目眩を起こした。
 自国の民である俺ではなく、よそ者のファリス公に味方をするなんて国王失格だ。あんな男がトップでこの国は大丈夫だろうか。

 カスタネアは完全にファリス公の操り人形になってしまった。
 大人しく可愛らしかった彼女があんな恐ろしい形相で俺を罵るなんて……。

 今のカスタネアに俺の言葉は届かない。
 まずはどんな手段を使ってでも、ファリス公から引き剥がす必要がある。
 じっくりと躾をし直すのはその後だ。

 俺は親指の爪を噛みながら、屋敷へと向かう馬車の中で計画を練っていた。
 ファリス公に洗脳されているとはいえ、カスタネアの裏切りを許せるはずがない。
 いっそ俺の声しか聞こえないように聴覚を奪うべきか。
 俺しか頼る者がおらず、俺に媚びへつらって生きるしかないカスタネアを想像すると笑みが浮かんだ。

 あと、あのファリス公にもカスタネアに手を出したこと、俺を投げ飛ばしたことを死ぬ程後悔させてやる。
 公爵としての威厳が全くなく、女のような顔立ちをしている。変態趣味の男どもがわんさかいる場所に放り込めば愉しいことになりそうだ。

 色んなことに思いを巡らせながら屋敷に戻ると、何やら使用人たちがそわそわしていた。
 父上と母上は俺と目を合わせようともしない。
 大切な一人息子が帰って来たのに何だこの態度は。

「……ただいま帰りました」
「あ、ああ」
「おかえりなさい、ライネックくん」

 無視されるのではと思っていたが、そんなことはなかった。しかし何か隠しているようだった。
 気になる。だが、両親が何をしていようと関係ないし、何だったら二人に怒りすら覚えている。

 お前らのやったことがカスタネアにバレたから、彼女はあそこまで怒っているんだ。
 どう責任を取るつもりだと詰め寄りたいが、俺がミリティリア帝国に行っていたことは伏せてある。知られたら詮索されるに違いない。
 カスタネアを迎えに行って、ノコノコ帰って来たなんて情けなくて絶対に知られたくなかった。

 だから俺も両親を詮索することなく、自室に向かった。
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