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レーヴェン公爵Ⅱ
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「ようこそレイラ様、レーヴェン屋敷へ!」
私が他の貴族たちとともに屋敷に入っていくと、出迎えたのはレーヴェン公爵その人であった。年代物のタキシードを着こみ、顔には上品な笑みを浮かべている。年齢は四十近いだろうか。
「こ、これは公爵わざわざの出迎え、恐縮です!」
それを見て私は慌てて頭を下げた。いくら私がオールストン公爵家の娘とはいえ、レーヴェン公爵本人が出迎えるのは過ぎた礼遇だ。
が、公爵は恐縮する私に優しく微笑みかけてくる。
「いえいえ、最近はご多忙の中、わざわざ当屋敷に来ていただき、かたじけない」
「そんな! こちらこそお招きありがとうございます!」
「ところで最近は色々と大変と聞くが、大丈夫だろうか?」
レーヴェン公爵は柔らかな笑みを浮かべつつ核心を突いてくる。力は失っていても人脈はまだまだ健在な彼は今うちで何が起こっているのかの情報も入ってくるのだろう。
とはいえ、どれくらい知っているのだろうか。
それを探るために私は情報を小出しにしてみる。
「実は今色々とトラブルが起こっていまして……」
「ああ、知っている。大きな家に睨まれると色々大変でしょうな」
彼はまるで全て知っている、と言わんばかりに意味ありげな表情を浮かべる。
これはもしかして助けてくれる意志があるということだろうか。それともこちらの弱みにつけこんで何かしてくるということだろうか。
実家にいたころに貴族社会と断絶していたせいで、レーヴェン公爵がどのような人物なのかが分からない。
「そうですね、色々と大変です」
私は一度曖昧な答えを返したが、すぐに思い返す。
レイノルズ侯爵とロルスは調査にあたると言っていたが、あの二家がそんなにすぐばれるような証拠を残しているとは思えないし、ある程度のことは政治力で封殺されてしまうだろう。
となれば彼が信用出来るかどうか分からない人物でも、私が積極的に動いて味方を作らなければ。
「正直かなり厳しい状況ですが、そもそもレーヴェン公爵はどうして私をこのパーティーに招いてくださったのでしょうか?」
「実は、私には病気の娘がいるのです。王宮でよりすぐりの名医に診てもらったのですが、匙を投げられてしまいまして。そこでレイラ様ならどうか、と」
父上には訊かなかったのか、と尋ねようとして私は気づく。
あまり関係が良好ではない父上に対してレーヴェン公爵は借を作りたくなかったのだろうか。もしくは頼んで断られた可能性もある。
ここは私は気前のいい返事をして印象を良くしておこう。
「私で良ければわざわざこんな大がかりなことをしていただかなくても、いつでも協力しますわ」
「おお、本当か!? それはありがたい」
私の言葉にレーヴェン公爵はほっとしたような表情を浮かべる。
彼もやはり人の親ということらしい。少しでもうちの父が見習ってくれるといいのだが。
そして私に近づこうとした目的が純粋なものだったことにほっとする。
「あれだけの魔力がありながらそれを惜しげもなく他人のために使ってくれるのか」
「あんな魔力を持っていながらも偉ぶらないのは凄いことだ」
「オールストン公爵とは大違いだ」
そんな私の返事を聞いて、周囲の貴族たちもそんな会話で盛り上がっている。
そういう印象を持たれたのであればひとまず良かった。
「ではそれは後程ということでとりあえずはパーティーをお楽しみください」
こうして私たちはパーティー会場の広間に到着したのだった。
私が他の貴族たちとともに屋敷に入っていくと、出迎えたのはレーヴェン公爵その人であった。年代物のタキシードを着こみ、顔には上品な笑みを浮かべている。年齢は四十近いだろうか。
「こ、これは公爵わざわざの出迎え、恐縮です!」
それを見て私は慌てて頭を下げた。いくら私がオールストン公爵家の娘とはいえ、レーヴェン公爵本人が出迎えるのは過ぎた礼遇だ。
が、公爵は恐縮する私に優しく微笑みかけてくる。
「いえいえ、最近はご多忙の中、わざわざ当屋敷に来ていただき、かたじけない」
「そんな! こちらこそお招きありがとうございます!」
「ところで最近は色々と大変と聞くが、大丈夫だろうか?」
レーヴェン公爵は柔らかな笑みを浮かべつつ核心を突いてくる。力は失っていても人脈はまだまだ健在な彼は今うちで何が起こっているのかの情報も入ってくるのだろう。
とはいえ、どれくらい知っているのだろうか。
それを探るために私は情報を小出しにしてみる。
「実は今色々とトラブルが起こっていまして……」
「ああ、知っている。大きな家に睨まれると色々大変でしょうな」
彼はまるで全て知っている、と言わんばかりに意味ありげな表情を浮かべる。
これはもしかして助けてくれる意志があるということだろうか。それともこちらの弱みにつけこんで何かしてくるということだろうか。
実家にいたころに貴族社会と断絶していたせいで、レーヴェン公爵がどのような人物なのかが分からない。
「そうですね、色々と大変です」
私は一度曖昧な答えを返したが、すぐに思い返す。
レイノルズ侯爵とロルスは調査にあたると言っていたが、あの二家がそんなにすぐばれるような証拠を残しているとは思えないし、ある程度のことは政治力で封殺されてしまうだろう。
となれば彼が信用出来るかどうか分からない人物でも、私が積極的に動いて味方を作らなければ。
「正直かなり厳しい状況ですが、そもそもレーヴェン公爵はどうして私をこのパーティーに招いてくださったのでしょうか?」
「実は、私には病気の娘がいるのです。王宮でよりすぐりの名医に診てもらったのですが、匙を投げられてしまいまして。そこでレイラ様ならどうか、と」
父上には訊かなかったのか、と尋ねようとして私は気づく。
あまり関係が良好ではない父上に対してレーヴェン公爵は借を作りたくなかったのだろうか。もしくは頼んで断られた可能性もある。
ここは私は気前のいい返事をして印象を良くしておこう。
「私で良ければわざわざこんな大がかりなことをしていただかなくても、いつでも協力しますわ」
「おお、本当か!? それはありがたい」
私の言葉にレーヴェン公爵はほっとしたような表情を浮かべる。
彼もやはり人の親ということらしい。少しでもうちの父が見習ってくれるといいのだが。
そして私に近づこうとした目的が純粋なものだったことにほっとする。
「あれだけの魔力がありながらそれを惜しげもなく他人のために使ってくれるのか」
「あんな魔力を持っていながらも偉ぶらないのは凄いことだ」
「オールストン公爵とは大違いだ」
そんな私の返事を聞いて、周囲の貴族たちもそんな会話で盛り上がっている。
そういう印象を持たれたのであればひとまず良かった。
「ではそれは後程ということでとりあえずはパーティーをお楽しみください」
こうして私たちはパーティー会場の広間に到着したのだった。
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