33 / 54
実家からの脅迫Ⅰ
しおりを挟む
そんな訳で私たちがにわかに忙しくなってから一か月ほどが経った。
最初は戸惑うことや大変なことも多かったものの、だんだんと慣れてきた。最初は毎日のようにあちこちに出向く生活に随分疲れたが、それが続くと慣れてきた。
例えば最初は礼儀作法やドレスコードなども全部覚えていちいちそれをチェックしていたものだったが、人々が気にしているのはその中の半分ほどで、さして気にされていないものも数多くあると分かった。
それにパーティーやお茶会で知らない人と話すのも最初はすごく緊張したが、だんだん初対面の話題の定番なども分かってきたため、随分力を抜いて話せるようになっていった。
財政の問題も大変になるかと思ったが、私の評判が広まると周囲から贈り物が届いたり、王家からも「忠勤報奨金」というよく分からないお金をもらったりと意外と何とかなった。
嬉しい気持ちもあったが、少し有名になった瞬間にここまで露骨に周囲が手の平返しをしてくると思うと怖くなってしまう。
そんなある日のことだった。
「大変です、オールストン公爵家からの使者だという方がやってきました!」
家臣が慌てて報告してくる。それを聞いて私とレイノルズ侯爵、そしてロルスは表情を変えた。
ブランドが脅してきてから一か月ほど、何もなかったのでこのまま何もなく終わるのではないかという期待が芽生え始めていたが、やはりそうはいかないらしい。
「ついに来たか」
「とりあえず通せ」
レイノルズ侯爵が言うと、この間この屋敷にやってきた父上の家臣が顔を見せた。
前回私が啖呵を切って追い返したせいか、今度は最初から険しい表情をしている。
「用件はもうお分かりでしょう。レイラ様は今すぐに我が家にお戻りください」
「そんな勝手な言い分が通る訳ないでしょう!?」
「大体僕とレイラの結婚はそっちが決めたんだろう!?」
特に自分の妻を奪われそうになっているロルスは怒り心頭だ。
が、家臣は表情を変えずに答える。
「残念ですが、二人が結婚しているという証拠はありません。聞いた話によれば満足な式も開かれていないとか。そちらも最初はレイラ様が魔法が使えないと知って離縁しようとしていたのでは?」
「そ、そんなことはない!」
侯爵はそう言うが、明らかに声が上ずっている。
「ブランド様からも聞いているでしょう。ここは元々結婚ではなく、たまたま長期の滞在をしていたとかそういうことにしておいた方が傷は浅いですよ」
「そんな馬鹿なことが出来るか!」
ロルスは激怒する。結婚したように見えて実は遊びにきていただけだった、なんてそんな話は子供でも信じないだろう。
父上としては自分がわたしの能力を見ぬけずに追い出したという事実をなかったことにしたいのではないか。もしくは私がきたせいでレイノルズ家が急に魔術の名門になりオールストン家を脅かす存在になることを恐れているのかもしれない。
「そうですか。それはオールストン家とオーガスト家の両家を敵に回すということでいいのですか?」
「理不尽な言いがかりをつけた上に脅すつもりか!?」
ロルスはそれでも食い下がる。
それを見てこちらの説得は難しいと思ったのか、家臣は今度は私の方を向いた。
最初は戸惑うことや大変なことも多かったものの、だんだんと慣れてきた。最初は毎日のようにあちこちに出向く生活に随分疲れたが、それが続くと慣れてきた。
例えば最初は礼儀作法やドレスコードなども全部覚えていちいちそれをチェックしていたものだったが、人々が気にしているのはその中の半分ほどで、さして気にされていないものも数多くあると分かった。
それにパーティーやお茶会で知らない人と話すのも最初はすごく緊張したが、だんだん初対面の話題の定番なども分かってきたため、随分力を抜いて話せるようになっていった。
財政の問題も大変になるかと思ったが、私の評判が広まると周囲から贈り物が届いたり、王家からも「忠勤報奨金」というよく分からないお金をもらったりと意外と何とかなった。
嬉しい気持ちもあったが、少し有名になった瞬間にここまで露骨に周囲が手の平返しをしてくると思うと怖くなってしまう。
そんなある日のことだった。
「大変です、オールストン公爵家からの使者だという方がやってきました!」
家臣が慌てて報告してくる。それを聞いて私とレイノルズ侯爵、そしてロルスは表情を変えた。
ブランドが脅してきてから一か月ほど、何もなかったのでこのまま何もなく終わるのではないかという期待が芽生え始めていたが、やはりそうはいかないらしい。
「ついに来たか」
「とりあえず通せ」
レイノルズ侯爵が言うと、この間この屋敷にやってきた父上の家臣が顔を見せた。
前回私が啖呵を切って追い返したせいか、今度は最初から険しい表情をしている。
「用件はもうお分かりでしょう。レイラ様は今すぐに我が家にお戻りください」
「そんな勝手な言い分が通る訳ないでしょう!?」
「大体僕とレイラの結婚はそっちが決めたんだろう!?」
特に自分の妻を奪われそうになっているロルスは怒り心頭だ。
が、家臣は表情を変えずに答える。
「残念ですが、二人が結婚しているという証拠はありません。聞いた話によれば満足な式も開かれていないとか。そちらも最初はレイラ様が魔法が使えないと知って離縁しようとしていたのでは?」
「そ、そんなことはない!」
侯爵はそう言うが、明らかに声が上ずっている。
「ブランド様からも聞いているでしょう。ここは元々結婚ではなく、たまたま長期の滞在をしていたとかそういうことにしておいた方が傷は浅いですよ」
「そんな馬鹿なことが出来るか!」
ロルスは激怒する。結婚したように見えて実は遊びにきていただけだった、なんてそんな話は子供でも信じないだろう。
父上としては自分がわたしの能力を見ぬけずに追い出したという事実をなかったことにしたいのではないか。もしくは私がきたせいでレイノルズ家が急に魔術の名門になりオールストン家を脅かす存在になることを恐れているのかもしれない。
「そうですか。それはオールストン家とオーガスト家の両家を敵に回すということでいいのですか?」
「理不尽な言いがかりをつけた上に脅すつもりか!?」
ロルスはそれでも食い下がる。
それを見てこちらの説得は難しいと思ったのか、家臣は今度は私の方を向いた。
15
お気に入りに追加
4,711
あなたにおすすめの小説
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~
銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。
少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。
ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。
陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。
その結果――?
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
いつだって二番目。こんな自分とさよならします!
椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。
ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。
ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。
嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。
そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!?
小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。
いつも第一王女の姉が優先される日々。
そして、待ち受ける死。
――この運命、私は変えられるの?
※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。
婚約破棄は結構ですけど
久保 倫
ファンタジー
「ロザリンド・メイア、お前との婚約を破棄する!」
私、ロザリンド・メイアは、クルス王太子に婚約破棄を宣告されました。
「商人の娘など、元々余の妃に相応しくないのだ!」
あーそうですね。
私だって王太子と婚約なんてしたくありませんわ。
本当は、お父様のように商売がしたいのです。
ですから婚約破棄は望むところですが、何故に婚約破棄できるのでしょう。
王太子から婚約破棄すれば、銀貨3万枚の支払いが発生します。
そんなお金、無いはずなのに。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
【完結】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係
ayame
恋愛
【本編完結・外伝はじめました】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________
【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?
まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。
うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。
私、マーガレットは、今年16歳。
この度、結婚の申し込みが舞い込みました。
私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。
支度、はしなくてよろしいのでしょうか。
☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる