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実家からの脅迫Ⅱ

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「なるほど、ではレイラ様はいかがでしょう? ここで素直に戻れば今度はもっと裕福な暮らしが出来ます。多少の贅沢であれば思いのままです」

 父上のことだから私が実家に戻れば、きっとこれまでのいきさつなどなかったかのように私にも公爵令嬢並みかそれ以上の暮らしをさせてくれるのだろう。

 とはいえ、今更そんなことをされたからといってこれまでのことがなかったことになる訳がない。
 それに、せっかくレイノルズ家の人々と打ち解けたのに離れるなど持っての他だ。

「そんなものはいらない!」
「ならば逆でも構いません。このままこの家にいれば様々な迷惑がかかりますよ」

 私が語気を荒げて断ると、家臣はようやく本音をのぞかせた。
 恐らく前回の私の返答から穏便に解決するとは期待していなかったのだろう、彼は畳みかけるように言う。

「いいのですか? 風の噂だとここで仲良くやっているようですが、それならこの家の方々を守るために実家に戻っていただいた方が賢明と思いますが」
「くっ……」

 そう言われるとさすがに先ほどのように即座に断るという訳にもいかない。

「一体なぜそこまでするの? 大体ブランドなんて家柄だけの男にそこまでして私を嫁がせたいの!?」
「違います、家柄と武術だけの男です」
「いや、そういう問題では……」

 それは何のフォローにもなっていない。
 というか、それが分かっていて私を嫁がせようとしていたのか。

「レイラ様は聡明なのでお分かりのはずです。オールストン家とオーガスト家の両家が婚姻を結ぶことの重要さを。そしてその当人はそれぞれ魔術と武術さえ極めていれば何とかなります」

 ブランドは武術の実力さえ伸ばすことが出来れば血統により軍事の要職に就くだろう。その際に血縁があればメリットは大きいというのは理屈では分かる。
 政略結婚と言えばそれまでだが、だからといって一度婚約破棄と追い出し結婚までされたのにそれに従えと言われても無理だ。

 とはいえ、一応レイノルズ侯爵とロルスの方を向く。
 すると今度は侯爵が口を開いた。

「くそ、これが上流貴族のやり方か! 人間を駒のように扱うだけならず、それを他家にまで強要するとは! そのようなやり方に金と引き換えに屈すれば、我らは末代までの恥となるだろう!」
「恥になるというのは不自由のない家だけが言えることだと思いますが……」
「うるさい! それ以上上級貴族の理屈など聞きたくない!」
「そうだ、そうしないと上流になれないと言うなら我らはずっと蔑まれたままで結構!」

 ロルスも声を荒げる。
 それを聞いて家臣は顔をしかめた。そして席を立つと、捨て台詞のように言う。

「まあそう言うのは自由です。この後何が起こるかは分かりませんが、一応、後悔したらいつでも謝罪は受け付けているということだけは伝えておきます。それでは」

 そして彼はすたすたと部屋を去っていくのだった。
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