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巫女の祈り
反響
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初仕事を終えた一週間ほどあと、ハリス殿下に呼ばれて私が王宮に向かうと周囲がざわざわしています。私の姿を見たエルドラン王国の貴族や兵士たちがざわめくのです。
もしかして何か変なことをしてしまったのでしょうか、などと少し不安になりながら歩いていると、向かい側から私の方へと一人の貴族が歩いてきます。
「巫女様! 私はヨルダン侯と申します。お目にかかれて光栄でございます!」
「は、はい」
突然知らない貴族に自己紹介されて私は戸惑ってしまいます。
「先日まで我が領内にひっきりなしに出現していた魔物ですが、ここ一週間でぴたりと姿を消しました。これもひとえに巫女様のお祈りのおかげです」
「ど、どういたしまして」
祈りを捧げはしたものの、実際のところ王国各地にどういう影響が出ているのかまではよく分かっていなかった私はそれを聞いて安堵します。どうやら竜たちは実際に私の祈りを聞き届けてくださったようです。
「これは我が領地の名産のワインです。どうぞお納めください」
「あ、ありがとうございます」
そう言って私はワインの瓶を受け取りますが、どうしたものでしょうか。
そこへさらに今の侯爵の声を聞きつけて別の貴族がやってきます。
「巫女様! 我が領ではこのところ不作が続いておりましたが、巫女様のお祈り以降枯れかけていた作物が息を吹き返しつつあります」
「ほ、本当ですか?」
基本的に竜には魔物を追い払うことが一番期待されていますが、守護竜と呼ばれるほどの大きな力を持った存在であれば、大地に影響を与えることも不可能ではないかもしれません。
もしくは、守護竜の洞窟のように魔物による穢れが祓われたことで大地が活力を取り戻したのかもしれません。
「ささやかですが、これは我が領でとれる紅茶です」
「ありがとうございます」
そう言って今度はお茶の葉が入った包みを渡されます。
一度そういう流れが出来てしまったからでしょう、他の貴族や、魔物と戦っていた兵士や武将たちも次々とやってきます。
そしてその流れも途絶えようというころ、最後にやってきたのはアリサでした。
「選定の儀の時は突っかかるようなことを言ってごめんなさい」
アリサは少し申し訳なさそうに言います。とはいえ彼女から巫女の座を奪う形になったことについては私の方が申し訳なく思っているほどでした。
「いえ、気にしていませんよ。私は本来であればネクスタ王国で力を発揮すべき人間でしたので」
「違うんです。もしシンシア様がネクスタ王国にいて私がこの国の巫女になっていれば、きっとここまでの結果は出せなかったでしょう。そう考えるとシンシア様がこの国に来ていただいたことはこの国にとって良いことだったんです。先日、領地を襲った魔物が竜の助けで壊滅したのを見てそれを痛感しました」
アリサは興奮したのか、早口でまくしたてるように言います。
「ですから今はシンシア様が巫女になってくださって良かったと心から言えます!」
「それは、ありがとう」
ライバル視されていた彼女にそう言われ、私はほっとしました。
「と言う訳でこれは我が領地の名産品の……」
そう言ってアリサもきれいな装飾に彩られた工芸品を渡そうとしてきます。
とはいえすでに私はここまでにもらってきたたくさんの贈り物ですでに両手が塞がっています。
「こらこら、シンシアが困っているだろう」
そこにやってきたのはハリス殿下でした。
「なかなかやってこないと思ったらこんなところで足止めを食っていたのか。しかしすごいお礼の品だな」
そう言って殿下は私の両手に高く積まれた品々を見て感嘆します。
「すみません、ご迷惑でしたね。では私はこれで」
「いえ、お気持ちは嬉しいですよ」
それを見てアリサは慌てて恐縮します。
そして一礼してその場を去っていくのでした。
「とりあえずこれでは話も出来ないからいったん客間に運んでもらおう」
そう言ってハリス殿下はメイドを呼ぶと、山盛りの贈答品を私の部屋まで運んでもらいました。
そしてようやく私は殿下の部屋へ向かいます。
部屋で二人で向かい合って座ると、私はようやく落ち着きました。
「ふう、ようやく話せるな。まずはすでに知っての通りと思うか、そなたの祈りにより王国各地で竜の活動が活発化し、魔物は大幅に数を減らし、その他にもいくつかいい影響が出ている。これもひとえにそなたのおかげだ。王子として礼を言う」
「いえ、お役に立てて良かったです」
とはいえ私にしてみれば竜に祈りを捧げただけなので、そこまで言われと恐縮してしまいますが。
「今日呼んだのはその報告とお礼が一つ。もう一つは、そんな中気になることがあってな。それで今日はそなたを呼んだのだ」
「え? 何でしょうか?」
もしかして何か変なことをしてしまったのでしょうか、などと少し不安になりながら歩いていると、向かい側から私の方へと一人の貴族が歩いてきます。
「巫女様! 私はヨルダン侯と申します。お目にかかれて光栄でございます!」
「は、はい」
突然知らない貴族に自己紹介されて私は戸惑ってしまいます。
「先日まで我が領内にひっきりなしに出現していた魔物ですが、ここ一週間でぴたりと姿を消しました。これもひとえに巫女様のお祈りのおかげです」
「ど、どういたしまして」
祈りを捧げはしたものの、実際のところ王国各地にどういう影響が出ているのかまではよく分かっていなかった私はそれを聞いて安堵します。どうやら竜たちは実際に私の祈りを聞き届けてくださったようです。
「これは我が領地の名産のワインです。どうぞお納めください」
「あ、ありがとうございます」
そう言って私はワインの瓶を受け取りますが、どうしたものでしょうか。
そこへさらに今の侯爵の声を聞きつけて別の貴族がやってきます。
「巫女様! 我が領ではこのところ不作が続いておりましたが、巫女様のお祈り以降枯れかけていた作物が息を吹き返しつつあります」
「ほ、本当ですか?」
基本的に竜には魔物を追い払うことが一番期待されていますが、守護竜と呼ばれるほどの大きな力を持った存在であれば、大地に影響を与えることも不可能ではないかもしれません。
もしくは、守護竜の洞窟のように魔物による穢れが祓われたことで大地が活力を取り戻したのかもしれません。
「ささやかですが、これは我が領でとれる紅茶です」
「ありがとうございます」
そう言って今度はお茶の葉が入った包みを渡されます。
一度そういう流れが出来てしまったからでしょう、他の貴族や、魔物と戦っていた兵士や武将たちも次々とやってきます。
そしてその流れも途絶えようというころ、最後にやってきたのはアリサでした。
「選定の儀の時は突っかかるようなことを言ってごめんなさい」
アリサは少し申し訳なさそうに言います。とはいえ彼女から巫女の座を奪う形になったことについては私の方が申し訳なく思っているほどでした。
「いえ、気にしていませんよ。私は本来であればネクスタ王国で力を発揮すべき人間でしたので」
「違うんです。もしシンシア様がネクスタ王国にいて私がこの国の巫女になっていれば、きっとここまでの結果は出せなかったでしょう。そう考えるとシンシア様がこの国に来ていただいたことはこの国にとって良いことだったんです。先日、領地を襲った魔物が竜の助けで壊滅したのを見てそれを痛感しました」
アリサは興奮したのか、早口でまくしたてるように言います。
「ですから今はシンシア様が巫女になってくださって良かったと心から言えます!」
「それは、ありがとう」
ライバル視されていた彼女にそう言われ、私はほっとしました。
「と言う訳でこれは我が領地の名産品の……」
そう言ってアリサもきれいな装飾に彩られた工芸品を渡そうとしてきます。
とはいえすでに私はここまでにもらってきたたくさんの贈り物ですでに両手が塞がっています。
「こらこら、シンシアが困っているだろう」
そこにやってきたのはハリス殿下でした。
「なかなかやってこないと思ったらこんなところで足止めを食っていたのか。しかしすごいお礼の品だな」
そう言って殿下は私の両手に高く積まれた品々を見て感嘆します。
「すみません、ご迷惑でしたね。では私はこれで」
「いえ、お気持ちは嬉しいですよ」
それを見てアリサは慌てて恐縮します。
そして一礼してその場を去っていくのでした。
「とりあえずこれでは話も出来ないからいったん客間に運んでもらおう」
そう言ってハリス殿下はメイドを呼ぶと、山盛りの贈答品を私の部屋まで運んでもらいました。
そしてようやく私は殿下の部屋へ向かいます。
部屋で二人で向かい合って座ると、私はようやく落ち着きました。
「ふう、ようやく話せるな。まずはすでに知っての通りと思うか、そなたの祈りにより王国各地で竜の活動が活発化し、魔物は大幅に数を減らし、その他にもいくつかいい影響が出ている。これもひとえにそなたのおかげだ。王子として礼を言う」
「いえ、お役に立てて良かったです」
とはいえ私にしてみれば竜に祈りを捧げただけなので、そこまで言われと恐縮してしまいますが。
「今日呼んだのはその報告とお礼が一つ。もう一つは、そんな中気になることがあってな。それで今日はそなたを呼んだのだ」
「え? 何でしょうか?」
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