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事故。
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「ふー・・おなかいっぱい。」
ショッピングモールをうろうろした後、ご飯を食べた私はそろそろ帰ろうかと思いながらモールの中を歩き始めた。
お茶のお店や、アクセサリーのお店、雑貨のお店なんかを横目で見ながら歩いていく。
「かわいいのがいっぱいあっていいなぁ・・・。」
見てるだけで楽しくなるかわいい雑貨たち。
ぬいぐるみの専門店なんかもあって、視線が奪われていく。
「あ、あのお店、やたら黄色いけど・・・なんだろ。」
私は気になってそのお店に足を向けた。
黄色い何かの商品を大量に置いていたお店、それは・・・ひよこのグッズを扱うお店だったのだ。
「ひよこだっ・・・!」
丸いフォルムに小さい手は癒ししかない。
ふわふわな生地でできた体は、触るとぎゅっとしたくなる衝動にかられる。
「か・・かわいい・・・。」
私はお店の中に入り、中をぐるぐると見て回った。
ステーショナリーや、ぬいぐるみ、タオルに食器なんかがすべてひよこモチーフでできてる。
両手を広げてるひよこや、殻付きのひよこ、寝てる表情のひよこなんかもあって、どれもこれもかわいかった。
「えぇー・・・一つだけ買っていこうかな・・・。自分へのクリスマスプレゼントってことで。」
私はどれを買おうか悩みながら見て回った。
ボールペンは使うことがあまりないし、ぬいぐるみは帰りに荷物になってしまう。
食器は重たいし、タオルはもったいなくて使えそうにない。
「うーん・・困った・・・。」
どうしようかと悩みながら見て回ってると、ステーショナリーを展開してるところにチャームがあるのが見えた。
ストラップのようにつけれるみたいなタイプだ。
「これだったらリュックにつけれるかも・・・。」
私はそのチャームを手に取った。
金属でできたチャームはひよこの形になっていて、黄色くてかわいい子が私を見てる。
裏を見ると殻に隠れたひよこがいて、口だけが割れ目から見えていた。
「かわいすぎる・・・。」
このチャームを買うことに決めた私はそのままレジに向かった。
お会計を済ませてそのままリュックにつけさせてもらい、上機嫌で店を出る。
「へへっ、一緒に家に帰ろうね?・・・えーっとエスカレーターはどこだっけ?」
今3階にいる私はエスカレーターを探して辺りを見回した。
するとすぐ近くにエスカレーターを見つけたけど、工事が始まっていたのだ。
止められたエスカレーターの下り口にパイロンが置かれ、なにやら作業が始まってる。
「あー・・エレベーターか階段探さないと。」
そう思って歩き出したとき、私の前にひょこっと顔を出してきた女の人がいた。
「あの・・棗旅館の方・・ですか?」
「え?」
顔を出してきた人はスマホを持っていて、私に見えるように差し出してきた。
「前にテレビで見たんですけど・・・ここに映ってる人じゃないですか?」
そう言われて私は画面を覗き込んだ。
そこにはいつもと違う着物を着た私の姿があったのだ。
「!!」
「あなたですよね!?私、この旅館のファンなんです!『若女将』は滅多に会えなくて有名で・・・まさかこんなところで会えるなんて・・夢みたいです!!」
「そ・・そうなんですか・・・。ありがとうございます・・。」
思いがけないところで実家のお客さまと出くわしてしまった私は笑顔を作った。
実家の評判を落とさないように丁寧に受け答えする。
でも・・・
「いつ旅館にいったら若女将に会えるんですか!?お名前は!?いつ継がれるんですか!?」
ぐぃぐぃくる質問に、私はたじろいでいた。
「え・・えぇ・・?」
答えれる内容なら答えたいところだけど、私が答えた内容が脚色されたら厄介なことになる。
継ぐ予定はないのに、『継ぐ』ということでSNSにでも出まわったら撤回するのが大変そうだ。
「えぇっと・・・ちょっと私の口からは何とも・・・」
ここは口を濁してやり過ごそうと決め、私は距離を取るため後ずさりした。
「この辺りに住んでるんですか!?一人暮らししてるんですか!?教えてください・・!!」
「え・・ちょ・・・」
女性は後ずさりする私に合わせるようにして距離を詰めてきた。
後ろを見ずに下がる私はだんだんエスカレーターのほうに追いやられていく。
「あの・・ちょっと落ち着いてもらって・・・」
「旅館に行ったときは山や川を散策してるんですけど他にいい場所とかないですか!?」
私の声なんて聞こえてない女性はぐぃっと体を近づけてきた。
その瞬間・・・
「あっ・・・」
私は工事をしてるエスカレーターのバリケードに足を引っかけてしまった。
「わっ・・・!?」
足がもつれてバランスを崩してしまった私は、とっさに手を伸ばした。
何か掴んでこけるのを防ごうと思ったのだ。
でも掴むものは何もなく、そのままバリケードごと私の体は倒れていく。
バリケードの向こうは止まったエスカレーターがあったけど、点検のためか足板が外されていて・・・私はその隙間に落ちてしまったのだ。
「きゃぁぁぁっ・・!?」
「ふー・・おなかいっぱい。」
ショッピングモールをうろうろした後、ご飯を食べた私はそろそろ帰ろうかと思いながらモールの中を歩き始めた。
お茶のお店や、アクセサリーのお店、雑貨のお店なんかを横目で見ながら歩いていく。
「かわいいのがいっぱいあっていいなぁ・・・。」
見てるだけで楽しくなるかわいい雑貨たち。
ぬいぐるみの専門店なんかもあって、視線が奪われていく。
「あ、あのお店、やたら黄色いけど・・・なんだろ。」
私は気になってそのお店に足を向けた。
黄色い何かの商品を大量に置いていたお店、それは・・・ひよこのグッズを扱うお店だったのだ。
「ひよこだっ・・・!」
丸いフォルムに小さい手は癒ししかない。
ふわふわな生地でできた体は、触るとぎゅっとしたくなる衝動にかられる。
「か・・かわいい・・・。」
私はお店の中に入り、中をぐるぐると見て回った。
ステーショナリーや、ぬいぐるみ、タオルに食器なんかがすべてひよこモチーフでできてる。
両手を広げてるひよこや、殻付きのひよこ、寝てる表情のひよこなんかもあって、どれもこれもかわいかった。
「えぇー・・・一つだけ買っていこうかな・・・。自分へのクリスマスプレゼントってことで。」
私はどれを買おうか悩みながら見て回った。
ボールペンは使うことがあまりないし、ぬいぐるみは帰りに荷物になってしまう。
食器は重たいし、タオルはもったいなくて使えそうにない。
「うーん・・困った・・・。」
どうしようかと悩みながら見て回ってると、ステーショナリーを展開してるところにチャームがあるのが見えた。
ストラップのようにつけれるみたいなタイプだ。
「これだったらリュックにつけれるかも・・・。」
私はそのチャームを手に取った。
金属でできたチャームはひよこの形になっていて、黄色くてかわいい子が私を見てる。
裏を見ると殻に隠れたひよこがいて、口だけが割れ目から見えていた。
「かわいすぎる・・・。」
このチャームを買うことに決めた私はそのままレジに向かった。
お会計を済ませてそのままリュックにつけさせてもらい、上機嫌で店を出る。
「へへっ、一緒に家に帰ろうね?・・・えーっとエスカレーターはどこだっけ?」
今3階にいる私はエスカレーターを探して辺りを見回した。
するとすぐ近くにエスカレーターを見つけたけど、工事が始まっていたのだ。
止められたエスカレーターの下り口にパイロンが置かれ、なにやら作業が始まってる。
「あー・・エレベーターか階段探さないと。」
そう思って歩き出したとき、私の前にひょこっと顔を出してきた女の人がいた。
「あの・・棗旅館の方・・ですか?」
「え?」
顔を出してきた人はスマホを持っていて、私に見えるように差し出してきた。
「前にテレビで見たんですけど・・・ここに映ってる人じゃないですか?」
そう言われて私は画面を覗き込んだ。
そこにはいつもと違う着物を着た私の姿があったのだ。
「!!」
「あなたですよね!?私、この旅館のファンなんです!『若女将』は滅多に会えなくて有名で・・・まさかこんなところで会えるなんて・・夢みたいです!!」
「そ・・そうなんですか・・・。ありがとうございます・・。」
思いがけないところで実家のお客さまと出くわしてしまった私は笑顔を作った。
実家の評判を落とさないように丁寧に受け答えする。
でも・・・
「いつ旅館にいったら若女将に会えるんですか!?お名前は!?いつ継がれるんですか!?」
ぐぃぐぃくる質問に、私はたじろいでいた。
「え・・えぇ・・?」
答えれる内容なら答えたいところだけど、私が答えた内容が脚色されたら厄介なことになる。
継ぐ予定はないのに、『継ぐ』ということでSNSにでも出まわったら撤回するのが大変そうだ。
「えぇっと・・・ちょっと私の口からは何とも・・・」
ここは口を濁してやり過ごそうと決め、私は距離を取るため後ずさりした。
「この辺りに住んでるんですか!?一人暮らししてるんですか!?教えてください・・!!」
「え・・ちょ・・・」
女性は後ずさりする私に合わせるようにして距離を詰めてきた。
後ろを見ずに下がる私はだんだんエスカレーターのほうに追いやられていく。
「あの・・ちょっと落ち着いてもらって・・・」
「旅館に行ったときは山や川を散策してるんですけど他にいい場所とかないですか!?」
私の声なんて聞こえてない女性はぐぃっと体を近づけてきた。
その瞬間・・・
「あっ・・・」
私は工事をしてるエスカレーターのバリケードに足を引っかけてしまった。
「わっ・・・!?」
足がもつれてバランスを崩してしまった私は、とっさに手を伸ばした。
何か掴んでこけるのを防ごうと思ったのだ。
でも掴むものは何もなく、そのままバリケードごと私の体は倒れていく。
バリケードの向こうは止まったエスカレーターがあったけど、点検のためか足板が外されていて・・・私はその隙間に落ちてしまったのだ。
「きゃぁぁぁっ・・!?」
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