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救出。
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ーーーーー
同時刻。
陽平side
『管轄内のショッピングモールにて転落事故発生。至急救助に向かってください。』
昼を回って事務仕事をこなしてるとき、そんな連絡が入った。
すぐに用意して現場に向かう。
「こちらレスキュー隊、現場の状況教えて下さい。」
サイレンを鳴らしながら走るレスキュー車を運転してる迅の隣で、司が指令室に聞いた.
『エスカレーターの点検作業中に誤って女性客が転落したとの通報です。足板を外してたとのことで、中の機械部分に挟まってる模様。作業員が救出を試みたそうですが手が届かず、救出要請がきました。』
「客が落ちた?作業員じゃなくて?」
「よそ見でもしてたのかな。」
「バリケードとか設置してなかったのか?」
「挟まってるなら救急隊も要請しておいたほうがよさそうだな。ケガは必須だろう。」
司が指令室に救急隊の要請をしたあと、すぐにショッピングモールが見えてきた。
中で事故があったとは思えないくらい、辺りは普通通りの光景だ。
「緊急車両用の駐車場そこだから。その奥の扉から入るよ。機材準備してー。」
司の指示で、俺たちは必要なものを用意し、現場に向かった。
待機してくれていた店員さんについて階段を駆け上がると、エスカレーターのところに野次馬の人だかりが見えた。
あそこが現場のようだ。
「レスキュー隊です!すみません!通してください!」
そう声をあげると野次馬たちは道を開けてくれ、俺は『女性が落ちた』と通報のあった場所を覗き込んだ。
「大丈夫ですかー!お名前、言えますかー!?」
そう言ってライトを照らしながら中を照らす。
するとそこに・・・ちとせの姿があったのだ。
「!?・・・え!?ちとせ!?」
俺の言葉に司たちも驚いて覗き込んできた。
「うわ!ほんとにちとせちゃん!?」
「大丈夫か!?」
「喋れるー!?」
機械の隙間に見事にハマってしまってるちとせは仰向けの姿勢だった。
どうも背中から転落したようだ。
「だいじょーぶー・・・。」
「足、持っててくれるか?ちとせの体を抱えて引っ張りあげる。」
「わかった!!」
エスカレーターの足板の狭いスペースに入って救出することはできなさそうだ。
ならこのまま俺が降りて抱えるのが一番早い。
「上手くハマってるから俺の上半身だけ入れればイケると思う。念のためーーーーー」
準備を済ませ、俺は外れた足板のところに上半身を滑り込ませていった。
「ちとせ、ケガは?どっか痛いとこあるか?」
「えっと・・・無いんだけど・・・」
「掴まれる?手、回して?」
「ごめん・・ちょっと引っ張ってもらってもいい・・?」
「オーケー。」
俺はちとせの状態を見ながら少しずつ体を引きあげる。
上手くハマってた体は徐々に浮いてくれ、ちとせの体を両腕で抱えた。
「捕まえた!引っ張ってくれ!!」
迅と司、航太が服を引っ張る。
ちとせが落ちた場所はそんなに深いわけではなかったから、3人に引っ張ってもらってすぐにちとせを引き上げることができた。
「ヨシ!」
「ちとせちゃーん?大丈夫ー?」
「痛いとこない?」
「ボートに乗れそう?」
救助者を乗せるボートにちとせを座らせたとき、3人がテキパキ動きながら聞いてきた。
「えと・・歩けます・・大丈夫ですー・・・。」
思いのほか元気そうなちとせは手をひらひら振りながら俺たちをぐるっと見回した。
ちょっと驚いてるのか、落ちたショックを受けたのか・・・視点が合ってない。
「・・・病院は行ったほうがいいな。ボート乗らないなら俺が支える。」
「じゃあ俺たちは後ろと前につく。」
「頼んだ。」
司たちは俺が持っていた機材を持ち、歩き始めた。
俺もちとせの体を支えてゆっくり歩き始める。
「ちとせ、この後救急隊に引き渡すけど、どこの病院かあとで教えて?迎えに行くから。」
仕事中だから一緒についていくことはできない。
どこに搬送されるかもわからないし、場所によってはちとせ一人で帰ってくることも難しいだろう。
「あ・・あの・・スマホ・・・」
「ん?」
「忘れて・・・」
「・・・え?」
ちとせは家にスマホを忘れてきたと、ゆっくり話してくれた。
ふらつくちとせの足元と片言な喋り方に、落ちたことで動揺してることは間違いなさそうだ。
「・・・俺のスマホ渡しとく。署を出るときに電話するから出て。『一条消防署』で登録してあるから。」
そう言って俺はポケットから自分のスマホを出してちとせのリュックに入れた。
そして俺たちはモールの外で救急隊にちとせを引き渡した。
「外傷は特に見当たらないのですが、事故のショックを受けてるようです。メンタル面に注意をお願いします。」
「わかりました。」
ちとせはそのまま救急隊に支えられて救急車に乗った。
そしてちとせがストレッチャーに座ったのを確認した後、俺は自分の仕事に戻ろうと踵を返した。
その時・・・
「あの・・すみません・・・・。」
同時刻。
陽平side
『管轄内のショッピングモールにて転落事故発生。至急救助に向かってください。』
昼を回って事務仕事をこなしてるとき、そんな連絡が入った。
すぐに用意して現場に向かう。
「こちらレスキュー隊、現場の状況教えて下さい。」
サイレンを鳴らしながら走るレスキュー車を運転してる迅の隣で、司が指令室に聞いた.
『エスカレーターの点検作業中に誤って女性客が転落したとの通報です。足板を外してたとのことで、中の機械部分に挟まってる模様。作業員が救出を試みたそうですが手が届かず、救出要請がきました。』
「客が落ちた?作業員じゃなくて?」
「よそ見でもしてたのかな。」
「バリケードとか設置してなかったのか?」
「挟まってるなら救急隊も要請しておいたほうがよさそうだな。ケガは必須だろう。」
司が指令室に救急隊の要請をしたあと、すぐにショッピングモールが見えてきた。
中で事故があったとは思えないくらい、辺りは普通通りの光景だ。
「緊急車両用の駐車場そこだから。その奥の扉から入るよ。機材準備してー。」
司の指示で、俺たちは必要なものを用意し、現場に向かった。
待機してくれていた店員さんについて階段を駆け上がると、エスカレーターのところに野次馬の人だかりが見えた。
あそこが現場のようだ。
「レスキュー隊です!すみません!通してください!」
そう声をあげると野次馬たちは道を開けてくれ、俺は『女性が落ちた』と通報のあった場所を覗き込んだ。
「大丈夫ですかー!お名前、言えますかー!?」
そう言ってライトを照らしながら中を照らす。
するとそこに・・・ちとせの姿があったのだ。
「!?・・・え!?ちとせ!?」
俺の言葉に司たちも驚いて覗き込んできた。
「うわ!ほんとにちとせちゃん!?」
「大丈夫か!?」
「喋れるー!?」
機械の隙間に見事にハマってしまってるちとせは仰向けの姿勢だった。
どうも背中から転落したようだ。
「だいじょーぶー・・・。」
「足、持っててくれるか?ちとせの体を抱えて引っ張りあげる。」
「わかった!!」
エスカレーターの足板の狭いスペースに入って救出することはできなさそうだ。
ならこのまま俺が降りて抱えるのが一番早い。
「上手くハマってるから俺の上半身だけ入れればイケると思う。念のためーーーーー」
準備を済ませ、俺は外れた足板のところに上半身を滑り込ませていった。
「ちとせ、ケガは?どっか痛いとこあるか?」
「えっと・・・無いんだけど・・・」
「掴まれる?手、回して?」
「ごめん・・ちょっと引っ張ってもらってもいい・・?」
「オーケー。」
俺はちとせの状態を見ながら少しずつ体を引きあげる。
上手くハマってた体は徐々に浮いてくれ、ちとせの体を両腕で抱えた。
「捕まえた!引っ張ってくれ!!」
迅と司、航太が服を引っ張る。
ちとせが落ちた場所はそんなに深いわけではなかったから、3人に引っ張ってもらってすぐにちとせを引き上げることができた。
「ヨシ!」
「ちとせちゃーん?大丈夫ー?」
「痛いとこない?」
「ボートに乗れそう?」
救助者を乗せるボートにちとせを座らせたとき、3人がテキパキ動きながら聞いてきた。
「えと・・歩けます・・大丈夫ですー・・・。」
思いのほか元気そうなちとせは手をひらひら振りながら俺たちをぐるっと見回した。
ちょっと驚いてるのか、落ちたショックを受けたのか・・・視点が合ってない。
「・・・病院は行ったほうがいいな。ボート乗らないなら俺が支える。」
「じゃあ俺たちは後ろと前につく。」
「頼んだ。」
司たちは俺が持っていた機材を持ち、歩き始めた。
俺もちとせの体を支えてゆっくり歩き始める。
「ちとせ、この後救急隊に引き渡すけど、どこの病院かあとで教えて?迎えに行くから。」
仕事中だから一緒についていくことはできない。
どこに搬送されるかもわからないし、場所によってはちとせ一人で帰ってくることも難しいだろう。
「あ・・あの・・スマホ・・・」
「ん?」
「忘れて・・・」
「・・・え?」
ちとせは家にスマホを忘れてきたと、ゆっくり話してくれた。
ふらつくちとせの足元と片言な喋り方に、落ちたことで動揺してることは間違いなさそうだ。
「・・・俺のスマホ渡しとく。署を出るときに電話するから出て。『一条消防署』で登録してあるから。」
そう言って俺はポケットから自分のスマホを出してちとせのリュックに入れた。
そして俺たちはモールの外で救急隊にちとせを引き渡した。
「外傷は特に見当たらないのですが、事故のショックを受けてるようです。メンタル面に注意をお願いします。」
「わかりました。」
ちとせはそのまま救急隊に支えられて救急車に乗った。
そしてちとせがストレッチャーに座ったのを確認した後、俺は自分の仕事に戻ろうと踵を返した。
その時・・・
「あの・・すみません・・・・。」
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