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クリスマスプレゼント選び。

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ちとせside


私が実家から帰ってきてから3週間ほどの時間が流れた。

陽平さんとは時間を作っては会ってるけど、どちらかの家で会うことがほとんどだった。

お互いの仕事が忙しいのだ。


「陽平さんの仕事は遅く終わるときも多いし、私も喫茶店の仕事あるからまとまった時間に会えないんだよねー・・・。」


短い時なら1時間、長くても2時間くらいしか一緒にいることができない日々が続いていた。

できれば半日ほど一緒にいたいところだ。


「でも来週は休みが被ったから・・1日デートする約束してるんだよねっ。」


久しぶりに休みが被ったことがわかった私たちは、少し早いけどクリスマスデートをすることにした。

クリスマス本番まではまだ日にちがあるけど、街はイルミネーションで溢れてる。

イベントなんかはないけど、雰囲気は十分味わえるのだ。


「陽平さんってプレゼント、何がいいのかなぁ・・・。」


そんなことを考えながら私は家を出た。

カギを閉めてショッピングモールに足を向ける。


「プレゼント決めないと。」


今日、私は仕事が休みだ。

陽平さんは仕事だから、今日を利用して決めないといけないのだ。

たくさんお店を覗いて考えるつもりで動きやすいパンツに長袖のロングTシャツ、それに薄手のコートを羽織って歩いていく。

背中には大きめのリュックを背負い、ちょっと遠くにあるショッピングモールまで歩いていく。


「うーん・・・陽平さんの好きなものって何かな。家には体を鍛えるものがいっぱいあったけど・・・。」


私はプレゼントの大まかな路線を考えながら、5キロの道のり歩いて行った。



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「着いたーっ。」


1時間ちょっとかけてたどり着いたショッピングモール。

平日だからか人の姿はまばらだ。

小さい子供を連れたお母さんや、夫婦、それにスーツ姿の男の人がちらほら見えた。


「ちょっとお店を覗いてからご飯にしよ。」


モールの時計はお昼前を指していた。

少し早めのお昼ご飯にすることもできるけど、プレゼントが何も決まってないからとりあえずお店を見たかったのだ。


「メンズのフロアって何階かな?4階?」


私はモールに入ってすぐにあったエスカレーターに乗った。

乗り継いで乗り継いで4階に行き、一番端のお店かが順番に流し見していく。


「時計・・・は好みがあるし、タイピン・・・はスーツ着るのかわからないし。万年筆・・・も使うのかなぁ・・・?」


陽平さんが普段使うものや好みがあまりハッキリわからない私は、どれを買ったらいいのか悩みに悩みながら歩く。

ネックレスや指輪はしないだろうから、他に普段使いできるものがあればと思うけどなかなかいいのが見つからない。


「うーん・・・。」


悩みながら歩いていき、私は一軒のお店の前で足を止めた。

そのお店はファッションのお店で・・・ショーウィンドウにいるマネキンさんがつけてるマフラーが視界に入ったのだ。


「寒くなってきたし・・・マフラーだったら通勤で使える・・かな?」


首元が温かいと体も温かくなる。

体調を崩したりしてほしくなくて、私はこのマフラーに決めた。


「あ・・あのっ、マネキンさんがつけてるマフラー見せてもらってもいいですか?」


私は店に入り、店員さんに声をかけた。

店員さんはマネキンさんからマフラーを外してくれて、手渡してくれた。


「こちら、人気の商品なんですよ?」

「そうなんですか?」

「色違いもいくつかありますのでご用意しますね、お待ちください。」


そう言って店員さんは店の奥に消えていった。

私は手元にあるモノトーンのチェック柄マフラーをじっと見つめる。


「これ・・絶対似合う・・・。」


定番のワンループ巻きもいいし、後ろで結ぶバック巻きもよさげだ。

ミラノ巻きも捨てがたい。


「お待たせいたしました。こちら、色違いでございます。」


じっとマフラーを見つめてるとき、店員さんが他の色のマフラーを持ってきてくれた。

近くにあるガラスでできたショーケースの上にずらっと並べてくれてる。


「メンズ仕様になりますので、抑えた色味になっております。すべてモノトーンとの組み合わせですが、端からワインレッド、モスグリーン、ダークオレンジ、ネイビーのラインが入ってございます。」

「わぁ・・・。」


同じチェック柄のマフラーだけど、ライン一本の色が違うだけで印象がぐっと変わって見えた。

靴や鞄なんかと色を合わせてもよさそうに見える。


(でも・・どれにでも合うのはこのモノトーンチェックかなぁ。)


このマフラーをつけて笑ってる陽平さんが思い浮かんだ。

手触りもよく、プレゼントとして遜色はなさそうだ。


「すみません、このマフラーにします。プレゼントにしたいので・・・包装してもらえますか?」

「もちろんでございます。ではあちらでお会計お願いいたします。」

「はい。」


私は店員さんについていき、会計をした。

包装代込みで合計14800円だ。


(喜んでくれると・・いいな。)


そんなことを思いながら私は店員さんの包装を見ていた。

黒いシックなデザインの箱に、ふわっと丸められたマフラーが入れられてる。

蓋を閉めて金色のリボンが巻かれ、その箱は紙袋に入れられた。


「お待たせいたしました。彼氏さん、喜んでくれるといいですね。」


店員さんはそう笑顔で言ってくれ、私も笑顔で返す。


「ふふ。ありがとうございますっ。」


マフラーが入った紙袋を受け取り、私はお店を出た。

少し歩いたところにあった休憩スペースで、リュックの中に紙袋をしまう。

その時、リュックに入れたはずのものがないことに気が付いた。


「あれ?スマホ忘れた?」


朝、陽平さんにメールをしたところまでは記憶にある。

そしてそのあとどういう行動をとったかを思い出したとき、テーブルに置いたままなことに気が付いたのだ。


「あー・・・忘れてる。絶対テーブルの上だ・・・。」


でも、特にスマホに用がない私は『まぁいっか。』とそのままリュックを閉じた。

朝、陽平さんに『買い物に行ってくる。』と伝えてあるし、実家から連絡はまず来ない。

もし誰かからか連絡が来てたとしても、あと2、3時間もすれば帰宅するだろうから、折り返せばいいだけのことなのだ。


「ご飯食べて、トイレ行って・・・ちょっとだけぶらぶらして帰ろ。」


そう思って私はまた歩き始めた。

ただ・・・まさかこのあとあんなことに巻き込まれるなんて、この時の私は知る由もなかった。

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