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378 妖精の森
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登場人物が多くなり把握できないと頂いたので、簡単にですが人物紹介。
・エイダン:アレクたち冒険者パーティのリーダーで役割はタンク
・エレノア:同じくパーティの仲間で、ブレンダの恋人。女騎士
・ステラ:同じくパーティの仲間で、オリビアの弟子。魔導士
・セバスチャン:かなり大きなワシミミズク。森の案内人兼、トーマスの従魔という扱いになっている
※今回はリーダーのエイダン視点で進みます。時系列的には「第361話 漆黒の瞳」のトーマスたちと二手に別れた後です。
◇◆◇◆◇
「ではエイダン、手筈通りに」
「了解しました」
隠し通路を探索する為、二手に分かれて行動する。
トーマスさんと共に階下へ潜るのは、アレクにマイルズ、そしてブレンダ。
書斎に残るのはと私とエレノア、ステラの三人だ。そしてトーマスさんの従魔である梟のセバスチャン。トーマスさんたちが半刻を過ぎても戻らなければ、セバスチャンが城にいるオリビアさんの下に飛び連絡する手筈になっている。
「ステラ、負担を掛けるが頼んだよ」
「はい! そうならない様に、祈っておきますぅ……」
「そうだな、行ってくるよ」
「皆さぁん……、お気を付けて……」
そうして隠し通路へと消えていく四人の後ろ姿を見送った。
昨日、王宮からノーマン・オデルの屋敷、そして現在閉鎖されているダンジョン内の調査依頼が急遽舞い込んだ。
王族を狙った事件の主犯格である元・宮廷魔導士のノーマン。既に一度行われた屋敷の調査では、屋敷の書斎から呪術に関わる書物や悪魔の召喚魔法、この国での禁忌魔法に関わる物が数点押収されたと聞いている。
そして王都内にあるダンジョンの探索。丁度三日前にこのダンジョン内部に潜ったばかりだったが、当日は最下層までは潜らずに地上に戻ってきた。あの時、もう少し先に進んでいれば何か手掛かりが掴めていたのかもしれないと思うと、今更だが悔いが残る。
そして余計なことは考えまいと、手を動かすことに専念することにした。
「……リーダー、ステラ。やけに暗くないか?」
「……だよなぁ」
「それに、寒くなってきましたねぇ……」
三人で手分けをし黙々と書斎の中を調査していると、部屋の中がやけに暗く感じる。おかしいと感じ始めた矢先、エレノアに声を掛けられた。
その言葉に窓の方を見やると、まるで夕暮れのように辺りが薄暗い。先程まで雲一つない秋晴れだった筈だ。背の高い木々に囲まれているとはいえ、数分でこんなに薄暗くなるものか?
隠し通路の近くにいたステラも、ローブを羽織っているがぶるりと身震いし両腕を擦っている。
( ん? ステラは寒さに強いハズ…… )
「ステ……」
体調が優れないのかと声を掛けようとした瞬間、書斎の窓が激しい音を立てて開かれた。積み上げていた本が大きな音を立てて崩れ落ちていく。
突然巻き起こった突風に何事かと思わず身構えると、外で待機していたセバスチャンが激しく威嚇しながら飛び込んでくる。そして、ステラのすぐ真後ろ。本棚の奥にあった隠し通路の奥で、異様な靄が蠢いているのが分かった。だが本人は突風に気を取られ、未だに気付いていない様子。
「ステラッ!!」
「きゃあっ!?」
咄嗟にステラを肩に担いで窓の木枠に足を乗せる。隣にいるエレノアも同じように飛び降りる気だったようで、お互いに頷き合う。
「ステラ! 足場を頼む!!」
「は!? え、あ、アイスロッチェ~~~ッッ!!」
二階部分から飛び降り、氷壁で出来た長い滑り台を滑走していく。
地面に足を着けすぐさま後ろを振り向くと、自分たちが先程までいた書斎一面に靄が蠢いているのが見えた。間一髪難を逃れたと思ったのも束の間、開け放たれた窓から靄がこちらに向かって猛スピードで伸びてくる。
エレノアが剣を構えるが、後ろ手で制し走れと合図する。近隣住民に避難を促す為だ。その間に大声で咆哮を上げ、パーティのタンクとして敵の注意を自分に向ける。
思惑通り靄がこちらに向かって伸びてきた。しめた! そう思った瞬間、靄が鋭い剣先へと変化していくのが目に入った。
「グッ……!!」
何とか二人を逃がせれば……! 目前に迫る鋭い剣先。全身を貫かれるのを覚悟したが、抵抗する間もなく得体の知れない強い力で体全体が後方に引き摺られる。
そして鋭い剣先が己の右頬を掠めるかと思いきや、それを守るかのように目の前で大きな幹がしなるのが見えた。
視界が木で塞がれたと同時に乱暴に後ろに引き倒されるが、不思議と痛みはない。
「……こ、此処は……?」
「森……!?」
手に触れるふかりとした草の絨毯。目の前の木の枝を小さなリスが楽しそうに駆け、耳に聞こえるのは小鳥の囀り。
先程までの薄暗かった空はまるで幻だったのかと錯覚してしまう程に、暖かい木漏れ日が森全体を優しく照らしている。
「もしかして……」
呆然としながらも、ステラの呟いた声に振り返る。その足元には、大小さまざまな茸が大きく円を描くように生えていた。
そして、次々に淡い光を放ち始める。
「……フェアリー・リングの、森……?」
その呟きに答えるように、セバスチャンの鳴き声が森の中に響いた。
・エイダン:アレクたち冒険者パーティのリーダーで役割はタンク
・エレノア:同じくパーティの仲間で、ブレンダの恋人。女騎士
・ステラ:同じくパーティの仲間で、オリビアの弟子。魔導士
・セバスチャン:かなり大きなワシミミズク。森の案内人兼、トーマスの従魔という扱いになっている
※今回はリーダーのエイダン視点で進みます。時系列的には「第361話 漆黒の瞳」のトーマスたちと二手に別れた後です。
◇◆◇◆◇
「ではエイダン、手筈通りに」
「了解しました」
隠し通路を探索する為、二手に分かれて行動する。
トーマスさんと共に階下へ潜るのは、アレクにマイルズ、そしてブレンダ。
書斎に残るのはと私とエレノア、ステラの三人だ。そしてトーマスさんの従魔である梟のセバスチャン。トーマスさんたちが半刻を過ぎても戻らなければ、セバスチャンが城にいるオリビアさんの下に飛び連絡する手筈になっている。
「ステラ、負担を掛けるが頼んだよ」
「はい! そうならない様に、祈っておきますぅ……」
「そうだな、行ってくるよ」
「皆さぁん……、お気を付けて……」
そうして隠し通路へと消えていく四人の後ろ姿を見送った。
昨日、王宮からノーマン・オデルの屋敷、そして現在閉鎖されているダンジョン内の調査依頼が急遽舞い込んだ。
王族を狙った事件の主犯格である元・宮廷魔導士のノーマン。既に一度行われた屋敷の調査では、屋敷の書斎から呪術に関わる書物や悪魔の召喚魔法、この国での禁忌魔法に関わる物が数点押収されたと聞いている。
そして王都内にあるダンジョンの探索。丁度三日前にこのダンジョン内部に潜ったばかりだったが、当日は最下層までは潜らずに地上に戻ってきた。あの時、もう少し先に進んでいれば何か手掛かりが掴めていたのかもしれないと思うと、今更だが悔いが残る。
そして余計なことは考えまいと、手を動かすことに専念することにした。
「……リーダー、ステラ。やけに暗くないか?」
「……だよなぁ」
「それに、寒くなってきましたねぇ……」
三人で手分けをし黙々と書斎の中を調査していると、部屋の中がやけに暗く感じる。おかしいと感じ始めた矢先、エレノアに声を掛けられた。
その言葉に窓の方を見やると、まるで夕暮れのように辺りが薄暗い。先程まで雲一つない秋晴れだった筈だ。背の高い木々に囲まれているとはいえ、数分でこんなに薄暗くなるものか?
隠し通路の近くにいたステラも、ローブを羽織っているがぶるりと身震いし両腕を擦っている。
( ん? ステラは寒さに強いハズ…… )
「ステ……」
体調が優れないのかと声を掛けようとした瞬間、書斎の窓が激しい音を立てて開かれた。積み上げていた本が大きな音を立てて崩れ落ちていく。
突然巻き起こった突風に何事かと思わず身構えると、外で待機していたセバスチャンが激しく威嚇しながら飛び込んでくる。そして、ステラのすぐ真後ろ。本棚の奥にあった隠し通路の奥で、異様な靄が蠢いているのが分かった。だが本人は突風に気を取られ、未だに気付いていない様子。
「ステラッ!!」
「きゃあっ!?」
咄嗟にステラを肩に担いで窓の木枠に足を乗せる。隣にいるエレノアも同じように飛び降りる気だったようで、お互いに頷き合う。
「ステラ! 足場を頼む!!」
「は!? え、あ、アイスロッチェ~~~ッッ!!」
二階部分から飛び降り、氷壁で出来た長い滑り台を滑走していく。
地面に足を着けすぐさま後ろを振り向くと、自分たちが先程までいた書斎一面に靄が蠢いているのが見えた。間一髪難を逃れたと思ったのも束の間、開け放たれた窓から靄がこちらに向かって猛スピードで伸びてくる。
エレノアが剣を構えるが、後ろ手で制し走れと合図する。近隣住民に避難を促す為だ。その間に大声で咆哮を上げ、パーティのタンクとして敵の注意を自分に向ける。
思惑通り靄がこちらに向かって伸びてきた。しめた! そう思った瞬間、靄が鋭い剣先へと変化していくのが目に入った。
「グッ……!!」
何とか二人を逃がせれば……! 目前に迫る鋭い剣先。全身を貫かれるのを覚悟したが、抵抗する間もなく得体の知れない強い力で体全体が後方に引き摺られる。
そして鋭い剣先が己の右頬を掠めるかと思いきや、それを守るかのように目の前で大きな幹がしなるのが見えた。
視界が木で塞がれたと同時に乱暴に後ろに引き倒されるが、不思議と痛みはない。
「……こ、此処は……?」
「森……!?」
手に触れるふかりとした草の絨毯。目の前の木の枝を小さなリスが楽しそうに駆け、耳に聞こえるのは小鳥の囀り。
先程までの薄暗かった空はまるで幻だったのかと錯覚してしまう程に、暖かい木漏れ日が森全体を優しく照らしている。
「もしかして……」
呆然としながらも、ステラの呟いた声に振り返る。その足元には、大小さまざまな茸が大きく円を描くように生えていた。
そして、次々に淡い光を放ち始める。
「……フェアリー・リングの、森……?」
その呟きに答えるように、セバスチャンの鳴き声が森の中に響いた。
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