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8.リリシアの願い
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「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「グォァァァァァアァァァッ!!」
「炎属性魔法、炎舞ノ剣ッ!」
「ヴォォォォォォッァ!?」
リリシアの振るう剣に、炎が宿る。
レアルが驚嘆の声を口に出す前に、リリシアの剣は周りのゴブリン全てを葬り去っていた。
「ふぅ。ゴブリン10体程度なら、こんなものよね」
パンパンと土埃を払ったリリシアはぼぅっとレアルを見つめた。
「り、リリシア? 何でこんなところに……」
リリシアは、問答も無しにレアルの頬を優しく抓った。
「夢じゃない。私のほっぺたも……うん、痛い」
「リリシア。ぼくが見えてる? 君は本当にそこにいる?」
「もちろん、ここにいるわ。っていうか、あなたに呼ばれて来たんじゃないの」
「ぼくは、あなたに召喚されたがってるものが最優先に召喚されるって聞いてたんだけど」
「べ、別に……召喚されたがってたわけじゃないし……。何か光ったと思ったら、後ろにレアルがいて、ゴブリンがいたから倒しただけだし」
血を何としてでも振り払ってやると言わんばかりにブンヴン空振りするリリシア。
何だか久しぶりの会話にほっと心をなで下ろすのも束の間、思い出したかのようにレアルの顔色が悪くなる。
「……ッ! 召喚術、よく考えたら呼び出す能力はあれど、帰す能力がない!?」
「それがどうしたのよ。むしろ助かったわ。レアルが死んじゃう前に辿り着けたんだし」
「どうしたのじゃないよ、リリシア! リリシアが、自分の家に戻れないってことだよ……! そうだよ、なんでこんな簡単なこと思いつかなかったんだ。分かっていれば、迂闊に召喚なんて……!」
「構わないわ。元々、そのつもりで爵位も蹴って来てたんだし。レアルのいなくなったあんな王宮に、私が仕える義理もないもの」
あっけらかんと話すリリシアに、思わずレアルの口が開く。
「なぁに。騎士爵なんてどうせ一代限りのお飾りなわけだし、私を縛る枷がなくなっただけ」
「騎士爵を、返上した……!? そんなこと、聞いたこともないよ!?」
「あははっ、王様もそんな顔してたわ。ま、騎士爵の地位よりも欲しいものがあったんだもん。しょうがないじゃない」
レアルより先にリリシアが前を歩み始めた。
彼女の気分を現すかのように、紅のポニーテールが嬉しそうに左右に揺れた。
「ん? でも、騎士爵を蹴って、ぼくが死ぬまでに辿り着いて良かったって……?」
ピタリとリリシアの足は止まる。
「そそ、そんなことより! ほら、どこか一休みしない!? 私、ずっと走り続けてたからすっごく疲れたなぁ! ね、ほらレアル! 向こうに水の気配があるの! 行こ、ね!?」
慌てたように耳を真っ赤にしながらレアルの手を強引に引っ張るリリシア。
是が非でもレアルの顔を見ないようにずんずんと進む少女を見ながら、レアルはぽつりと呟いた。
「ありがとう、リリシア。正直、来てくれてすっごく心強い。本当は、こんな荒野に迷い込ませちゃったこと、謝らなきゃいけないはずなんだけどね、あははは……」
一人で生きていくと、そう決めたはずだった。
なのに、リリシアが来た瞬間に心のどこかで安堵していた自分もいた。
「ばか」
リリシアが小さく呟いたその言葉は、荒野の風にかき消されてレアルの耳に届くことはなかったのだが――。
「グォァァァァァアァァァッ!!」
「炎属性魔法、炎舞ノ剣ッ!」
「ヴォォォォォォッァ!?」
リリシアの振るう剣に、炎が宿る。
レアルが驚嘆の声を口に出す前に、リリシアの剣は周りのゴブリン全てを葬り去っていた。
「ふぅ。ゴブリン10体程度なら、こんなものよね」
パンパンと土埃を払ったリリシアはぼぅっとレアルを見つめた。
「り、リリシア? 何でこんなところに……」
リリシアは、問答も無しにレアルの頬を優しく抓った。
「夢じゃない。私のほっぺたも……うん、痛い」
「リリシア。ぼくが見えてる? 君は本当にそこにいる?」
「もちろん、ここにいるわ。っていうか、あなたに呼ばれて来たんじゃないの」
「ぼくは、あなたに召喚されたがってるものが最優先に召喚されるって聞いてたんだけど」
「べ、別に……召喚されたがってたわけじゃないし……。何か光ったと思ったら、後ろにレアルがいて、ゴブリンがいたから倒しただけだし」
血を何としてでも振り払ってやると言わんばかりにブンヴン空振りするリリシア。
何だか久しぶりの会話にほっと心をなで下ろすのも束の間、思い出したかのようにレアルの顔色が悪くなる。
「……ッ! 召喚術、よく考えたら呼び出す能力はあれど、帰す能力がない!?」
「それがどうしたのよ。むしろ助かったわ。レアルが死んじゃう前に辿り着けたんだし」
「どうしたのじゃないよ、リリシア! リリシアが、自分の家に戻れないってことだよ……! そうだよ、なんでこんな簡単なこと思いつかなかったんだ。分かっていれば、迂闊に召喚なんて……!」
「構わないわ。元々、そのつもりで爵位も蹴って来てたんだし。レアルのいなくなったあんな王宮に、私が仕える義理もないもの」
あっけらかんと話すリリシアに、思わずレアルの口が開く。
「なぁに。騎士爵なんてどうせ一代限りのお飾りなわけだし、私を縛る枷がなくなっただけ」
「騎士爵を、返上した……!? そんなこと、聞いたこともないよ!?」
「あははっ、王様もそんな顔してたわ。ま、騎士爵の地位よりも欲しいものがあったんだもん。しょうがないじゃない」
レアルより先にリリシアが前を歩み始めた。
彼女の気分を現すかのように、紅のポニーテールが嬉しそうに左右に揺れた。
「ん? でも、騎士爵を蹴って、ぼくが死ぬまでに辿り着いて良かったって……?」
ピタリとリリシアの足は止まる。
「そそ、そんなことより! ほら、どこか一休みしない!? 私、ずっと走り続けてたからすっごく疲れたなぁ! ね、ほらレアル! 向こうに水の気配があるの! 行こ、ね!?」
慌てたように耳を真っ赤にしながらレアルの手を強引に引っ張るリリシア。
是が非でもレアルの顔を見ないようにずんずんと進む少女を見ながら、レアルはぽつりと呟いた。
「ありがとう、リリシア。正直、来てくれてすっごく心強い。本当は、こんな荒野に迷い込ませちゃったこと、謝らなきゃいけないはずなんだけどね、あははは……」
一人で生きていくと、そう決めたはずだった。
なのに、リリシアが来た瞬間に心のどこかで安堵していた自分もいた。
「ばか」
リリシアが小さく呟いたその言葉は、荒野の風にかき消されてレアルの耳に届くことはなかったのだが――。
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