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7.召喚術の始まりへ
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「召喚術師はハズレ職などではありません」
シャーロットは、手をレアルに向けた。
「無限の可能性を秘めた、大いなる技術です」
シャーロットの手の平に、召喚術式が現れる。
「私はもう、存在が消えかけているので不可能ですが、あなたに託すことならできます」
幾重にも折り重なり、どこまでも伸びていく円状術式の意図を、レアルは半信半疑ながらも受け取った。
「召喚術師の、本当の力……これが……!」
「この世の全てを召喚出来る、万物召喚の力。魔力が多ければ多いほど、召喚能力は比例的に上がっていきます」
白い空間に浮かび上がっていた文字列が、次々とシャーロットの発現させた円状術式の中に入り込む。
全てが入り込み、ついぞ真っ白の空間になってしまったその世界で。
「あなたのご活躍、ここからしっかり見届けさせていただきますね」
プラチナブロンドの髪の毛をふわりとたなびかせながらシャーロットは手を振った。
「召喚能力には限りがありませんが、あなたの元に召喚されたがっているものが最優先となります」
「ぼくに、召喚されたがっているもの?」
「えぇ。まずは、イメージしてあげてください。自ずと、召喚術式からそれは出てきてくれると思いますよ」
「……っ! ありがとうございます! ぼくがもし、本当に万物召喚の力を手に入れたのなら――!」
白い世界から消えかける寸前、レアルはシャーロットに向かって宣言した。
「あなたを必ずここから出しに来ます! ぼくに道を示してくれたあなたを、必――!」
シュンッと。
音を立てて、白い世界からレアルは消え去った。
今まで溜め続けていた文字列すらもなくなった世界で、シャーロットはぽつりと呟いた。
「言い忘れていましたが、無から有を作れないように、存在していないモノは召喚することが出来ません。それはすなわち、神をも超える力ですから。」
シャーロットは、振り切れたかのように「ん~」と伸びをした。
「私は、もう存在が消えかかっています。あなたに託した今、それ以上を望むつもりもありません」
寂しそうな声だが、いっそ清々しいような気分もあった。
「神託は、神からもたらされた福音。神が自分自身を超える存在を生み出すことはありませんからね」
何もない世界を歩き始めた、その時。
「きゅぅ♪」
シャーロットの足下で一匹のスライムが鳴き声を上げた。
「あら……? あなた、表の世界に戻らなかったんですか……?」
「きゅぅ!」
「そうですか、私と一緒にいてくれるんですか。ふふふ」
シャーロットの目に、涙が浮かんだ。
「最後の最後で、退屈しなくてすみそうですね」
●●●
「お、おぉ……? も、戻ってきた、ってことだよね?」
ふと辺りを見回せば、先ほどと変わらない絶望的な状況。
というか、ゴブリンが仲間を呼んだせいでレアルの周りには10体ほどに増えてまでいた。
「グォ……? オォォ……!? オォォォォォォ!」
『グァォォォォォォォォォォッッツ!!』
姿を見失ったレアルを再発見したことで、一体を先頭としてゴブリン達が次々と襲いかかってきた。
――召喚能力には限りがありませんが、あなたの元に召喚されたがっているものが最優先となります。
ふと、シャーロットの言葉が脳裏を過ぎった。
「ぼくに召喚されたがっている……? そんなもの、なんだか分からないけどっ!」
レアルは手の平をゴブリン達の前に宛がった。
「――《召喚》!」
短く唱えれば、先ほどまでとは段違いに濃密な術式が一瞬で形成された。
灰色と、緑色と、赤色が少し多めの粒子が辺りに飛び散って、それは人の形を成していく。
「何これ、夢……? 目の前に、レアルがいる……?」
紅のポニーテールがふわりと揺れて、腰に携えた一本の直剣がギラリと輝く。
「よく分からないけれども、レアルがピンチ。それだけで、私が動く理由は充分なのよ――ッ!」
騎士爵、リリシア・マリーゴールド。
召喚術式から突如飛び出たレアルの幼馴染みは、目の前のゴブリンに向かって勢いよく刃を突き立てにいったのだった。
シャーロットは、手をレアルに向けた。
「無限の可能性を秘めた、大いなる技術です」
シャーロットの手の平に、召喚術式が現れる。
「私はもう、存在が消えかけているので不可能ですが、あなたに託すことならできます」
幾重にも折り重なり、どこまでも伸びていく円状術式の意図を、レアルは半信半疑ながらも受け取った。
「召喚術師の、本当の力……これが……!」
「この世の全てを召喚出来る、万物召喚の力。魔力が多ければ多いほど、召喚能力は比例的に上がっていきます」
白い空間に浮かび上がっていた文字列が、次々とシャーロットの発現させた円状術式の中に入り込む。
全てが入り込み、ついぞ真っ白の空間になってしまったその世界で。
「あなたのご活躍、ここからしっかり見届けさせていただきますね」
プラチナブロンドの髪の毛をふわりとたなびかせながらシャーロットは手を振った。
「召喚能力には限りがありませんが、あなたの元に召喚されたがっているものが最優先となります」
「ぼくに、召喚されたがっているもの?」
「えぇ。まずは、イメージしてあげてください。自ずと、召喚術式からそれは出てきてくれると思いますよ」
「……っ! ありがとうございます! ぼくがもし、本当に万物召喚の力を手に入れたのなら――!」
白い世界から消えかける寸前、レアルはシャーロットに向かって宣言した。
「あなたを必ずここから出しに来ます! ぼくに道を示してくれたあなたを、必――!」
シュンッと。
音を立てて、白い世界からレアルは消え去った。
今まで溜め続けていた文字列すらもなくなった世界で、シャーロットはぽつりと呟いた。
「言い忘れていましたが、無から有を作れないように、存在していないモノは召喚することが出来ません。それはすなわち、神をも超える力ですから。」
シャーロットは、振り切れたかのように「ん~」と伸びをした。
「私は、もう存在が消えかかっています。あなたに託した今、それ以上を望むつもりもありません」
寂しそうな声だが、いっそ清々しいような気分もあった。
「神託は、神からもたらされた福音。神が自分自身を超える存在を生み出すことはありませんからね」
何もない世界を歩き始めた、その時。
「きゅぅ♪」
シャーロットの足下で一匹のスライムが鳴き声を上げた。
「あら……? あなた、表の世界に戻らなかったんですか……?」
「きゅぅ!」
「そうですか、私と一緒にいてくれるんですか。ふふふ」
シャーロットの目に、涙が浮かんだ。
「最後の最後で、退屈しなくてすみそうですね」
●●●
「お、おぉ……? も、戻ってきた、ってことだよね?」
ふと辺りを見回せば、先ほどと変わらない絶望的な状況。
というか、ゴブリンが仲間を呼んだせいでレアルの周りには10体ほどに増えてまでいた。
「グォ……? オォォ……!? オォォォォォォ!」
『グァォォォォォォォォォォッッツ!!』
姿を見失ったレアルを再発見したことで、一体を先頭としてゴブリン達が次々と襲いかかってきた。
――召喚能力には限りがありませんが、あなたの元に召喚されたがっているものが最優先となります。
ふと、シャーロットの言葉が脳裏を過ぎった。
「ぼくに召喚されたがっている……? そんなもの、なんだか分からないけどっ!」
レアルは手の平をゴブリン達の前に宛がった。
「――《召喚》!」
短く唱えれば、先ほどまでとは段違いに濃密な術式が一瞬で形成された。
灰色と、緑色と、赤色が少し多めの粒子が辺りに飛び散って、それは人の形を成していく。
「何これ、夢……? 目の前に、レアルがいる……?」
紅のポニーテールがふわりと揺れて、腰に携えた一本の直剣がギラリと輝く。
「よく分からないけれども、レアルがピンチ。それだけで、私が動く理由は充分なのよ――ッ!」
騎士爵、リリシア・マリーゴールド。
召喚術式から突如飛び出たレアルの幼馴染みは、目の前のゴブリンに向かって勢いよく刃を突き立てにいったのだった。
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