婚約者の彼から彼女の替わりに嫁いでくれと言われた

両家の話し合い③

ルーベンス家の旅先の自慢話をイヤと言うほど聞かされたフランシスの両親はうんざりするほど疲れていた。
「さて…本題の話をいたしましょうか」
シャロンの父親がフランシスとシャロンの話を持ち出した。
「フランシス君だったかな？」
「！は、はい…」
シャロンの父親の声に震えるフランシスは、緊張して膝に置いていた手から汗が滲み出していた。
「君はいつからシャロンと付き合いをしているのかな？」
「…ち、中学三年から…です」
「シャロンと関係を持ったのもその頃かな？」
「！？お、お父様…」
顔を真っ赤にしたシャロンは、父親からフランシスとの関係を聞かれ手で顔を隠して暫く顔を上げる事が出来なかった。
「……はい…」
フランシスもまた顔を上げる事が出来ず下を向き震える声で返事を返す事しかできず、フランシスの声を父親と母親は黙って聞く事しか出来なかった。
「シャロンと君はお互い満足していたのかな？」
「お、お父様！何もそんな事を聞かなくても……」
「何をそんなに驚いているんだ？これから先もお前を愛してくれるのか聞く必要がある。どうかなフランシス君？」
じーとフランシスの方を見ている父親にフランシスは声を出した
「……い、今もこれから先も彼女を愛しています！」
「！！フ、フラン……」
涙目になるシャロンを笑顔でフランシスは頷いていた。
「……」
「……」
フランシスの気持ちを聞いた両親は下を向いたまま目を閉じ、母親は目に涙を溜めフォスティヌとの関係が終わったのだと…どうしてこの様になってしまったのか…と両親はフォスティヌにどう償えばいいのかその事ばかり考えていた。
「そうか、君のシャロンに対する想いは良く分かった。交際を認めてやろう」
「「！！」」
「っ…」
「お、お父様…！」
フランシスとシャロンは驚いたがお互い笑顔を見せ喜びその様子を笑みを見せるシャロンの父親は条件を出してきた。
「フランシス君と娘のシャロンとの交際は認めるが、結婚していいとは言ってはいない」
「えっ……？」
「？」
フランシスとシャロン、そしてフランシスの両親は驚いた顔でシャロンの父親を見ていた。
「シャロンには婚約者がいるのだよ」
「お、お父様？……婚約者って…？」
「……」
シャロンは父親から突然婚約者がいると聞かされ驚き、フランシスも驚きシャロンの方へ顔を向けた。
「シャロンと同じ年だフランシス君も多分彼を知っているだろう」
「同じ年…」
「ま、まさかお父様…ブラッド君の事を言っているの？」
「！ブラッド？！」
フランシスはシャロンからブラッドの名前を聞き思い出そうとしていた。
「そうだよ、シャロン。彼がお前の婚約者だ…と、言いたいのだが彼は私に嘘を言っていたようなんだ」
「…嘘？」
「私には婚約者がいると言ったのだが、シャロンと婚約をしたくない為私に嘘を言ったのだ…」
「お父様が余りにもしつこく彼に言うからよ！わたくしも彼とは婚約はしたくありません、その事はお父様にもお話ししましたわ」
シャロンは父親にブラッドとは婚約しないと声を上げた。
「ブラッド君のどこが不満なのかな？一緒にいる姿はとても似合っていたのだが…」
「お、お父様！？」
「！！……」
笑顔でブラッドと一緒にいる所はお似合いだと父親から言われシャロンは戸惑い、フランシスは顔色が真っ青になっていた。
「すまないね、フランシス君。気を悪くしないでくれ」
「……い、いえ…」
フランシスは両手を握りしめ下を向くしかなかった。
「だが、君にもシャロンと婚約出来るかもしれない」
「えっ！…あの…それは……」
「私も彼を信じたいのだ。だから、私はブラッド君と賭けをした。婚約者に会わせて欲しいと…私の前で婚約者を連れて来るのなら、シャロンとの婚約は無かった事にする」
「！？」
「だが、婚約者を連れて来なかった時はシャロンと婚約をする条件を出したのだ」
「……」
ブラッドとシャロンの条件付きの婚約話を聞かされたフランシスの両親は、これから先ルーベンス家との親戚付き合いは無理だと思い、フランシスにはシャロンを諦めて欲しいと願っていた。