6 / 23
第1章
異変 Ⅱ
しおりを挟む
目覚めが悪い。
あんな夢を見ては当たり前だ。
だが咲恵は平然を装った。
平然を装って朝食を食べる。
舞華は既に家にいなかった。
母親と2人。
もちろん会話はない。
学校でも平然を装った。
あの子が何度か話しかけてきたが全部耳から流れ落ちていった。
全てが灰色。
春幸との思い出達は心の中で蓋をしてしまい込んだ。
蓋を開ければ最後に見たあの表情が飛び込んでくる。
まるで自分を否定されたかのように…寂しそうに笑っていた。
「(当たり前だ……あんな言い方されたら…いや、忘れよう…)」
卒無く学校を終える。
半日以上経過したが何をしたかぼんやりとしか覚えていない。
そんな日を何日か過ごした。
その日は記録的な大雪だった。
降り積もったいつもの帰り道。
雪が足を濡らしても気にせずにシャリシャリと音を立てて歩き続ける。
しばらくして咲恵はしゃがみ込んだ。
どうして傷つけるようなことを春幸に言ったのか。
本当はあんな事を言うんじゃなくて、
「お礼が…言いたかったの…に…」
怒りに身を任せてしまった自分の幼稚さに幻滅した。
「(忘れよう…もうあれは夢だったんだもん。虚像。春幸は虚像だから。)」
しかしそう思えば思うほど胸が痛くて、苦しくて。
苦しさで叫び声をあげる代わりに涙が溢れ出す。
自分なんていなくなってしまえ。
雪はボタボタと咲恵を覆い尽そうとする。
「咲恵ちゃんっ!!!」
上から勢い良く名前を呼ばれた。
咲恵は自分を見下ろす三つ編み姿のその子をぐちゃぐちゃの顔で見た。
「………か……こ……」
夏胡(かこ)はゆっくりとしゃがみ込み。
咲恵を抱きしめた。
「はい、少し熱いかもしれないけど…」
夏胡は目の前のテーブルに2つホットミルクが入ったマグカップを置いた。
テーブルはコタツになっており咲恵を冷やさないようにリビングから自室にわざわざ運んでいた。
咲恵は軽く会釈をするとゆっくりとカップを持ち唇に吸い付けた。
「(甘い…)」
だかそれが咲恵を芯から温めた。
「咲恵ちゃん…」
夏胡は向かい側に座るとジッと咲恵を見つめた。
「きっと…きっとこんなことを話したら気持ち悪がられるかもしれないけど…」
少し躊躇しながらも咲恵は少しずつ自分の身に起こったことを話し始めた。
夏胡は話を聞いている最中何も言葉を発さずに静かであった。
「これが最近身に起きてたこと…気持ち悪がられるね…」
呆れたようにちゃらけながら咲恵は頭をかいた。
しかし夏胡は何も言わなかった。
「……ごめん、こんなこと話して…キモいよね…?人に話せてすっきりしたし…これからはもう関わらなくていい…」
「咲恵ちゃん…」
夏胡が遮るように呟く。
「…っ!!!?ちょっ…泣いてんの!?」
涙を浮かべた瞳がグイッと近くまで寄ってくる。
咲恵は突然だったので思わず身体を逸らした。
「いっぱい…いっぱい…嫌な思いをして…悲しい思いをしたんだね…」
夏胡はまた元の場所に身体を戻すとグシグシと袖を使って涙を拭いた。
予想外の言葉に咲恵は驚いた
が、すぐに俯き首を横に振る。
「いや…そんなことをどうだっていい…自分のことはどうだっていいの…」
今まで母親からいろんな仕打ちをされてきた、嫌だったし悲しかった…だがそんなことよりも…
ただ思い出してしまうのは春幸の最後の表情だった。
全てを受け止めてくれた、背中を押してくれた彼に
なんて愚かな言動を投げかけたのか、
なんて浅はかなんだろう。
例え自分の中の虚像だとしても…自分が望むことを言わさせていたとしても
「春幸さんに会って話をするべきだよ」
またもや夏胡の予想外な発言に咲恵は一瞬止まった。
「…な?…え?」
「また夢の中で会いに行くべきだと思う!!」
「…い…いやいやいや!落ち着いて…」
「だって、春幸さんのおかげでこうして私達仲良くなれたんでしょ?」
にっこりと笑う。
「そう…だけど…でも…私が作り出した…」
「虚像だとしても、春幸さんはきっと咲恵ちゃんにとって大切な存在だと思うんだ。大切だから…嫌なことを言っちゃった時胸が苦しくなったんだよ。」
「大切……」
「しかもしかも、咲恵ちゃんはこのまま終わりでいいの?」
大きく首を降る咲恵を見ると夏胡は安心したようにまだ少し残ってたミルクを飲み干す。
「春幸は…話を聞いてくれるかな…」
あんな事を言った後で…あんな表情にさせた後で…果たして会って話を聞いてくれるのか…不安にかられた。
「大丈夫」
「分からないじゃん…」
「分からくない大丈夫だよ!」
「なんで分かるのよ」
「夏胡的直感」
「阿呆っ」
自信満々で鼻を鳴らす夏胡を見て…少し笑いが込み上げた。
あんな夢を見ては当たり前だ。
だが咲恵は平然を装った。
平然を装って朝食を食べる。
舞華は既に家にいなかった。
母親と2人。
もちろん会話はない。
学校でも平然を装った。
あの子が何度か話しかけてきたが全部耳から流れ落ちていった。
全てが灰色。
春幸との思い出達は心の中で蓋をしてしまい込んだ。
蓋を開ければ最後に見たあの表情が飛び込んでくる。
まるで自分を否定されたかのように…寂しそうに笑っていた。
「(当たり前だ……あんな言い方されたら…いや、忘れよう…)」
卒無く学校を終える。
半日以上経過したが何をしたかぼんやりとしか覚えていない。
そんな日を何日か過ごした。
その日は記録的な大雪だった。
降り積もったいつもの帰り道。
雪が足を濡らしても気にせずにシャリシャリと音を立てて歩き続ける。
しばらくして咲恵はしゃがみ込んだ。
どうして傷つけるようなことを春幸に言ったのか。
本当はあんな事を言うんじゃなくて、
「お礼が…言いたかったの…に…」
怒りに身を任せてしまった自分の幼稚さに幻滅した。
「(忘れよう…もうあれは夢だったんだもん。虚像。春幸は虚像だから。)」
しかしそう思えば思うほど胸が痛くて、苦しくて。
苦しさで叫び声をあげる代わりに涙が溢れ出す。
自分なんていなくなってしまえ。
雪はボタボタと咲恵を覆い尽そうとする。
「咲恵ちゃんっ!!!」
上から勢い良く名前を呼ばれた。
咲恵は自分を見下ろす三つ編み姿のその子をぐちゃぐちゃの顔で見た。
「………か……こ……」
夏胡(かこ)はゆっくりとしゃがみ込み。
咲恵を抱きしめた。
「はい、少し熱いかもしれないけど…」
夏胡は目の前のテーブルに2つホットミルクが入ったマグカップを置いた。
テーブルはコタツになっており咲恵を冷やさないようにリビングから自室にわざわざ運んでいた。
咲恵は軽く会釈をするとゆっくりとカップを持ち唇に吸い付けた。
「(甘い…)」
だかそれが咲恵を芯から温めた。
「咲恵ちゃん…」
夏胡は向かい側に座るとジッと咲恵を見つめた。
「きっと…きっとこんなことを話したら気持ち悪がられるかもしれないけど…」
少し躊躇しながらも咲恵は少しずつ自分の身に起こったことを話し始めた。
夏胡は話を聞いている最中何も言葉を発さずに静かであった。
「これが最近身に起きてたこと…気持ち悪がられるね…」
呆れたようにちゃらけながら咲恵は頭をかいた。
しかし夏胡は何も言わなかった。
「……ごめん、こんなこと話して…キモいよね…?人に話せてすっきりしたし…これからはもう関わらなくていい…」
「咲恵ちゃん…」
夏胡が遮るように呟く。
「…っ!!!?ちょっ…泣いてんの!?」
涙を浮かべた瞳がグイッと近くまで寄ってくる。
咲恵は突然だったので思わず身体を逸らした。
「いっぱい…いっぱい…嫌な思いをして…悲しい思いをしたんだね…」
夏胡はまた元の場所に身体を戻すとグシグシと袖を使って涙を拭いた。
予想外の言葉に咲恵は驚いた
が、すぐに俯き首を横に振る。
「いや…そんなことをどうだっていい…自分のことはどうだっていいの…」
今まで母親からいろんな仕打ちをされてきた、嫌だったし悲しかった…だがそんなことよりも…
ただ思い出してしまうのは春幸の最後の表情だった。
全てを受け止めてくれた、背中を押してくれた彼に
なんて愚かな言動を投げかけたのか、
なんて浅はかなんだろう。
例え自分の中の虚像だとしても…自分が望むことを言わさせていたとしても
「春幸さんに会って話をするべきだよ」
またもや夏胡の予想外な発言に咲恵は一瞬止まった。
「…な?…え?」
「また夢の中で会いに行くべきだと思う!!」
「…い…いやいやいや!落ち着いて…」
「だって、春幸さんのおかげでこうして私達仲良くなれたんでしょ?」
にっこりと笑う。
「そう…だけど…でも…私が作り出した…」
「虚像だとしても、春幸さんはきっと咲恵ちゃんにとって大切な存在だと思うんだ。大切だから…嫌なことを言っちゃった時胸が苦しくなったんだよ。」
「大切……」
「しかもしかも、咲恵ちゃんはこのまま終わりでいいの?」
大きく首を降る咲恵を見ると夏胡は安心したようにまだ少し残ってたミルクを飲み干す。
「春幸は…話を聞いてくれるかな…」
あんな事を言った後で…あんな表情にさせた後で…果たして会って話を聞いてくれるのか…不安にかられた。
「大丈夫」
「分からないじゃん…」
「分からくない大丈夫だよ!」
「なんで分かるのよ」
「夏胡的直感」
「阿呆っ」
自信満々で鼻を鳴らす夏胡を見て…少し笑いが込み上げた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
繰り返しのその先は
みなせ
ファンタジー
婚約者がある女性をそばに置くようになってから、
私は悪女と呼ばれるようになった。
私が声を上げると、彼女は涙を流す。
そのたびに私の居場所はなくなっていく。
そして、とうとう命を落とした。
そう、死んでしまったはずだった。
なのに死んだと思ったのに、目を覚ます。
婚約が決まったあの日の朝に。
慈愛と復讐の間
レクフル
ファンタジー
とある国に二人の赤子が生まれた。
一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。
慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。
これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。
だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。
大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。
そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。
そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。
慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。
想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる