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第1章
異変 Ⅲ
しおりを挟むとはいえ、いざ就寝の時間になると緊張と不安に蝕まれた。
「(本当に春幸に…会うべき…?)」
そう思ってしまいなかなか寝付けない。
-あの後…
夏胡は春幸に会う事をすすめてくれた。
そんな彼女に思わず放った言葉。
「…どうして…夏胡は気持ち悪がらないの…?」
そう聞いた後でめんどくさい質問をしてしまったと咲恵は内心後悔していた。
そんな咲恵をよそに夏胡は真剣な顔になった。
「気持ち悪いなんて思わないよ?むしろ私も春幸さんに会ってみたいな~」
真剣な顔になったと思ったら頬杖をつきにんまりと笑顔になった。
ころころと表情がよく変わる子である。
「春幸さんに会ったらお礼しないとな~」
「お礼…?」
「そっ!!春幸さんのおかげで咲恵ちゃんと仲良くなることができたんだもん!」
-
「(お礼…言わなくちゃ…)」
咲恵はゆっくりと目を閉じた。
いつもの夢を見る方法。
今まで見てきた春幸の夢を思い出しながら
彼に呼びかける。
炎で溶けてゆく蝋燭のようにゆっくり、こっくりと落ちていく。
現実から意識が離れ、
そうして彼に会う。
-翌日の学校にて
「えーーーっ?夢が見れなかったの!?!?」
「しっ!!ちょ、声がデカい!!!」
必死で静かにジェスチャーをする咲恵。
「で、でもどうして…」
「分からない…もしかしたら春幸に避けられてるのかも…(虚像呼ばわりしてるくせに)」
自分でツッコミを入れながら落ち込む。
「でもそれはないと思う。うん。」
「だからなんで即答できるんだよ」
「だーかーらー!夏胡的直感っ!!」
ポーズを決めて自信満々だ。
「帰れっ!…っクシュ!!!!」
「あらら、大丈夫?」
「大丈夫。にしても寒い…」
「確かにー!!ストーブ着いてるのにね。そういえばニュースの天気予報で言ってた!季節はもうすぐ春なのに全く暖かくならないって。むしろ今後も大寒波が続くから春らしい春は来ないかもって!」
「(春が…こない…)」
そんな言葉が嫌にべっとりと咲恵にくっつく。
-
その後も春幸に会う為に何度も明晰夢を見ようと試みた。
が、どうしても朝を迎えてしまう。
2週間が経過した頃
咲恵の中でいよいよ避けられている説が濃厚になってきていた。
そうやって弱音を吐く度に夏胡が励まし続けた。
夏胡の励ましは嬉しかったが正直気持ちが晴れなかった。それは今も続く天気の影響もあった。
今日も氷点下まで下がった気温。
先日行われた先輩達の卒業式も雪の中行われた。
桜なんて咲く気配が全くない。
春休みは目前だがもはや冬休みだとクラスの子達が話をしている。
【春が来ない】
思い出す、春幸へと放った言葉。
「春なんて……大嫌い…大っ嫌いだよ!!!!」
「(あぁぁぁあ~~~)」
思い出す度に自分を呪い、落ち込んだ。
春幸に会いたい。
春のような彼に。
「早く…春が来て…」
机に突っ伏し祈るように呟いている自分がいた。
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