信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜

揚惇命

文字の大きさ
84 / 166
2章 オダ郡を一つにまとめる

84話 動揺する反乱軍

しおりを挟む
 夜明けと共に攻め込む準備をしていたレーニン・ガロリングの元に、勝手な真似をして奇襲を仕掛けたモンテロ・ハルトがサブロー・ハインリッヒに一騎討ちの末、討ち取られたと報告が入ってきたのだ。
 この情報を流したのは、勿論サブロー・ハインリッヒである。

「馬鹿な!?モンテロの奴は、本当に死んだのか?」

「はい、こちらを届けるようにと一部始終を見ていたものから」

 四角い桐の箱を開けると中から、モンテロ・ハルトの首が出てきた。

「ひぃぃぃぃぃぃぃ」

「騒ぐな馬鹿者。確かにモンテロの首だな。馬鹿なやつだ。俺の命令を聞かずに独断専行の末、返り討ちに遭うなど。それも、クソガキに討ち取られる雑魚っぷり。これだから成り上がりに公爵など勿体無いとロルフに申したのだ。まぁ、当然の結果であろうな」

 平然と言ってのけるレーニン・ガロリングと違い、他の貴族たちは、躊躇なく首を斬り落としたサブロー・ハインリッヒにすっかり怯えていたのである。
 この世界は階級社会、1番上に位置するのが貴族なのである。
 今まで、内乱が起ころうとも追放されるぐらいで、殺されることなど無かった。
 だが、サブロー・ハインリッヒは、一切の迷いなく斬り捨て、その首を送りつけてきたのである。
 これが意味する所は、次はお前たちだという警告である。
 そして、彼らの元に更なる絶望の報告が届けられる。

「か、か、各地に突如として、城が出現!恐らく、サブロー・ハインリッヒがハザマオカで作った砦なるものかと」

「な、なんだと!?我が城のまた鼻の先にもあるでは無いか!何故、誰も気付かなかったのだ!馬鹿ども!」

 次々にこの場に集まっていた貴族たちが自分たちのところのまた鼻の先にも同様の城があると聞き、領地に帰るものが後を立たない状態となった。

「馬鹿者、何処に行く。僻地の領地など敵にくれてやれ!これは、我々を分断する策ぞ!」

 しかしパニックとなった反乱軍にレーニン・ガロリングの言葉は響かない。
 彼らを再び奮い立たせたのは、紛れもなくマーガレット・ハインリッヒの行動だった。
 本拠地側の砦を奪取したのだ。
 これは、どちらが当主かを明確にさせることとなる。
 レーニン・ガロリングは、これを快く思わなかった。
 たとえ娘といえど、自分より立場が上になるのは許せないのである。
 だが、ここでマーガレット・ハインリッヒを更迭でもしようものなら今度は自分が総スカンをくらうだけだと。
 逆に責任をこれで全て押し付けられるとそう考えることにしたのだ。
 だから、笑顔を浮かべる。

「流石は、我が娘よ。当主に立てたのは間違いでは無かったな。貴族どもに号令をかけるのだ。今が攻め時だとな!」

「はっ」

 この話を牢獄で聞いていたガイアは、頭を抱えていた。

「何ということじゃ。全てが仕組まれておったんじゃ。マーガレット様とサブロー様によって。奇襲があることを知っていなければ、完璧に防ぐことなど不可能であろう。それを城を餌に誘き寄せて、殲滅するなど。今にして思えば、マーガレット様がワシの策に意見するなどおかしかったのだ。何故、何故、マーガレット様はサブロー様と事を構えていながら我々を破滅へ導く選択を?まさか!?マーガレット様は、心では、サブロー様の改革を推奨しておるのか。いや、確かに、民の暮らしぶりも改善されて、よく考えれば、何故、ワシはレーニン様を推しておるのだ?確かに臣下ではあるが投獄されてまで、使える価値などあろうか?このままの方が良いのでは無いか?うむ。ワシの考えはワシの中だけで留めておくとしよう」

 ガイアは、そう結論付けた。
 ところで話は戻り、マリーから姿を偽っていると改めて聞き、難儀だなと言ったサブロー・ハインリッヒであったが更に言葉を続けた。

「安心せよ。ワシが必ずルミナもマリーも姿を偽らずに生活できる世界にしてやるゆえ」

「キュン。って、もう若様ったら女たらしなんですから。そんなこと言われたらキュンキュンするでしょ。もう」

「ルミナ、変な目で見られなくなる?そんな世界、来る?サブローにぃちゃんが作ってくれる?」

「あぁ。必ずな」

「ルミナ、そんな世界が来るの楽しみにしてる」

 ワシがいた世界でも種族とは違うが肌の色や宗教の違いで奴隷にする輩がいた。
 バテレンの商人どもよ。
 奴らは宗教を広めることを表向きに、裏では人攫いをしているような奴らであった。
 ワシがそのことを知ったのは、そのお伺いを立てにワシの元にきたバテレンの商人が連れてきた肌が黒い人間であった。
 奴らは、あろうことかワシに我々の教義を受け入れなければ、こうしてやるぞと脅してきたのだ。
 だから、ワシは逆に脅しつけてやった。
 肌が黒い男の足枷と手枷を外させ、ワシは服と刀を与えた。
 ワシの近衛に取り立てると見せつけてやったのだ。
 そして、その上で、我が領民にこのようなことをしたらどのような代償を支払うことになるかを見せつけてやった。
 バテレンの商人どもは怯えて、教義を広めるための宣教師だけの入館申請だけをするに終わったのだ。
 ワシもそれを守る限りは、バテレンの宣教師の追放はないと。
 こうして、領民を守ることには成功したのだが。
 どの世界であっても人種や宗教、肌の違いなどとくだらなことで人は争う定めなのか。
 嘆かわしいものだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...