52 / 166
2章 オダ郡を一つにまとめる
52話 横綱の誕生
しおりを挟む
ガタイの良い男の圧倒的強さに、領民全員が唖然となった。
「勝者、ガタイの良い男!」
準決勝第一試合はドラマがあった。
それに引き換え、第二試合はというと、ものの一瞬だ。
村一番の色男の外掛けをもろともせずにガタイの良い男は、そのまま豪快に投げ飛ばした。
「あんなのとセルはやり合うのか?もう良い、ここまでで、セル。棄権するんだ!」
セルの父は、ガタイの良い男と対峙することになる我が子のことを想い、棄権を勧める。
しかし、当のセル・マーケットはというと。
「流石、ポンチョさんですね。当たるとしたら決勝でしか当たれないと思っていました」
「おいどんもセル殿の戦いぶりを見て、ずっと戦いたいと思っていたでごわすよ」
「負けませんよ」
「勝つのは、おいどんでごわす」
サブロー・ハインリッヒが決勝戦を前に2人に声をかける。
「セル、それにガタイの良い男よ。お前たちは、千人の頂点を決める大舞台に立った。ワシは、お前たちを臣下に迎え入れることを約束しよう。しかし、勝負は勝負。頂点は決めねばな。2人の熱い戦いをワシも楽しみにしているぞ」
「サブロー様、有難きことでごわす」
「必ずや良い戦いにしてませます。そして勝つのは僕です!」
「ハッハッハッハ。セル、お前はここまで恵まれた身体をまた相手に堂々と戦い抜いてきた。今は、耳を観客席の方に傾けてみよ」
サブロー・ハインリッヒの言葉で、セル・マーケットは、初めて観客席の方に意識を向ける。
「セル!もう良いんだ。もう。父さんは、お前を誇りに思う」
「おい親父さん。何言ってんだ。アイツは、今や俺たち全員の希望だ。アイツなら、あのガタイの良い男を地につけるかもしれないってな。それにアイツの親父なら最後まで応援してやらねぇとな」
「あぁ、そうだな。親が子供を信じなくてどうすんだ。目が覚めたよ。セル!思いっきりいけー。そして打ち倒して、優勝だ!」
「勝ったらお姉さんが結婚してあげるから頑張って~~~」
「いやいや、何処がお姉さん何だ?」
「何よ!良いじゃない!飛び散る汗。ぶつかる音。泥だらけになる姿。キャー。もっと見せて~」
セル・マーケットは、自分がすごく応援されていることに驚いていた。
「驚いたか?だが、それがお前が歩んできた道だ。お前は間違いなく強者だ。そして、今最も応援されている。ワシよりも知名度が上がったかも知れんな。ハッハッハッハ」
「そ、そ、そ、そんなサブロー様よりも知名度があるなんて、ことは無いですよ」
「そう、謙遜せずとも良い。誇れ、お前は強い。そして、今度は選手の休憩席の方に耳を傾けてみるが良い」
サブロー・ハインリッヒの言葉に従いセル・マーケットは、選手の休憩席の方に耳を傾ける。
「うおおおおおお!アイツを倒してくれ!!!お前だけが俺たちの敵を討てる。俺たちはお前を応援するぞセル!」
「ブハァ。あのちいせぇガキが決勝戦に進出とは。いや、ちぃせぇガキは失礼だな。セル、お前ならそのとんでもなく強い奴も打ち倒してくれると俺は信じてるぜ!」
「小僧。いやセル!簡単に負けるんじゃねぇぞ!お前が敵わなかったら誰がその男を止めるんだ!勝ってきやがれ!」
セル・マーケットは、その言葉を聞き選手たちにまで自分が応援されていることを知る。
「どうだセルよ。この場では間違いなくお前が誰よりも有名人だ」
「おいどんは、随分と嫌われたでごわすな。でも、負けるつもりはないでごわすよセル殿」
「サブロー様、緊張を解きほぐしてくださって、ありがとうございます。ふぅー。師匠、胸を借りさせてもらいます!」
「セル殿、来るが良いでごわす」
「2人とも良い気迫だ。やはり相撲はこうでなくてはな。これより決勝戦を始める!ここまで数々の力士たちを投げ飛ばしてきた破壊者、ガタイの良い男に対するのは、観客の声援と負けた力士たちの期待を背負いし男、セル・マーケット!」
サブロー・ハインリッヒの気合いの入った言葉で決勝戦が始まる。
先に仕掛けたのは、セル・マーケットだ。
「師匠はここまで、投げ飛ばしを狙ってきた。なら敢えて、飛び込ませてもらいます」
ガタイの良い男は、セル・マーケットの渾身のタックルを受け止め、持ち上げようとまわしを掴もうとするがもう既にそこにセル・マーケットは居ない。
「流石でごわすな。翻弄される訳でごわすよ」
「師匠には通じませんか」
「翻弄されないようにするなら動かないのが1番でごわすからな」
ガタイの良い男と互角の戦いを繰り広げているセル・マーケットに、一際大きな声援が飛び交う。
「キャー。男たちがパンパンってぶつかる音。素敵!」
「セル!!!良いぞ。その調子だ!」
「良いぞ。ここまで互角じゃねぇか!」
しかし、この声援が集中しているセル・マーケットの耳に聞こえることはない。
そして、今までと違いなってきてくれない師匠に対して、セル・マーケットも打つ手が無くなってきていた。
「どうしたでごわす。疲れるだけでごわすよ」
「師匠の言う通りですが、これが僕の小さい身体を使った基本戦術ですから。しまった!」
「やはりダメージが大きかったようでごわすな。満身創痍の中、ここまでよく頑張ったでごわすよ」
ガタイの良い男は、セル・マーケットを内掛けによって、仰向けに倒した。
「勝者、ガタイの良い男!お前こそが横綱だ!」
2人を讃える歓声と拍手が巻き起こる。
「セル!良い勝負だった。挑戦を続けたお前を本当に誇りに思う。うっうっうっ。クソ。セルの方が悔しいってのに俺の方が涙が出てきやがらぁ」
「あの男。いや横綱か。横綱を相手にここまで持ったのはお前だけだ。カッコよかったぜ小僧!」
「キャー。お祭りだけじゃなくて、毎日でも開いて欲しいわ!2人とも素敵!」
「無理だったか。流石、横綱だぜ。チクショー。お前がNo. 1だバカヤロー」
サブロー・ハインリッヒが締めの言葉を言う。
「ここまで、盛り上がって、ワシも久々に興奮した。領民たちにも楽しんで貰えて、何よりだ。今一度2人に盛大な拍手を」
サブロー・ハインリッヒの言葉に、一部を除くその場にいた全員が惜しみない拍手を送る。
拍手をしなかったのは、ただの農民や商人が褒め称えられていることに納得できていないサブロー・ハインリッヒに流れで協力することを決めた貴族であった。
「勝者、ガタイの良い男!」
準決勝第一試合はドラマがあった。
それに引き換え、第二試合はというと、ものの一瞬だ。
村一番の色男の外掛けをもろともせずにガタイの良い男は、そのまま豪快に投げ飛ばした。
「あんなのとセルはやり合うのか?もう良い、ここまでで、セル。棄権するんだ!」
セルの父は、ガタイの良い男と対峙することになる我が子のことを想い、棄権を勧める。
しかし、当のセル・マーケットはというと。
「流石、ポンチョさんですね。当たるとしたら決勝でしか当たれないと思っていました」
「おいどんもセル殿の戦いぶりを見て、ずっと戦いたいと思っていたでごわすよ」
「負けませんよ」
「勝つのは、おいどんでごわす」
サブロー・ハインリッヒが決勝戦を前に2人に声をかける。
「セル、それにガタイの良い男よ。お前たちは、千人の頂点を決める大舞台に立った。ワシは、お前たちを臣下に迎え入れることを約束しよう。しかし、勝負は勝負。頂点は決めねばな。2人の熱い戦いをワシも楽しみにしているぞ」
「サブロー様、有難きことでごわす」
「必ずや良い戦いにしてませます。そして勝つのは僕です!」
「ハッハッハッハ。セル、お前はここまで恵まれた身体をまた相手に堂々と戦い抜いてきた。今は、耳を観客席の方に傾けてみよ」
サブロー・ハインリッヒの言葉で、セル・マーケットは、初めて観客席の方に意識を向ける。
「セル!もう良いんだ。もう。父さんは、お前を誇りに思う」
「おい親父さん。何言ってんだ。アイツは、今や俺たち全員の希望だ。アイツなら、あのガタイの良い男を地につけるかもしれないってな。それにアイツの親父なら最後まで応援してやらねぇとな」
「あぁ、そうだな。親が子供を信じなくてどうすんだ。目が覚めたよ。セル!思いっきりいけー。そして打ち倒して、優勝だ!」
「勝ったらお姉さんが結婚してあげるから頑張って~~~」
「いやいや、何処がお姉さん何だ?」
「何よ!良いじゃない!飛び散る汗。ぶつかる音。泥だらけになる姿。キャー。もっと見せて~」
セル・マーケットは、自分がすごく応援されていることに驚いていた。
「驚いたか?だが、それがお前が歩んできた道だ。お前は間違いなく強者だ。そして、今最も応援されている。ワシよりも知名度が上がったかも知れんな。ハッハッハッハ」
「そ、そ、そ、そんなサブロー様よりも知名度があるなんて、ことは無いですよ」
「そう、謙遜せずとも良い。誇れ、お前は強い。そして、今度は選手の休憩席の方に耳を傾けてみるが良い」
サブロー・ハインリッヒの言葉に従いセル・マーケットは、選手の休憩席の方に耳を傾ける。
「うおおおおおお!アイツを倒してくれ!!!お前だけが俺たちの敵を討てる。俺たちはお前を応援するぞセル!」
「ブハァ。あのちいせぇガキが決勝戦に進出とは。いや、ちぃせぇガキは失礼だな。セル、お前ならそのとんでもなく強い奴も打ち倒してくれると俺は信じてるぜ!」
「小僧。いやセル!簡単に負けるんじゃねぇぞ!お前が敵わなかったら誰がその男を止めるんだ!勝ってきやがれ!」
セル・マーケットは、その言葉を聞き選手たちにまで自分が応援されていることを知る。
「どうだセルよ。この場では間違いなくお前が誰よりも有名人だ」
「おいどんは、随分と嫌われたでごわすな。でも、負けるつもりはないでごわすよセル殿」
「サブロー様、緊張を解きほぐしてくださって、ありがとうございます。ふぅー。師匠、胸を借りさせてもらいます!」
「セル殿、来るが良いでごわす」
「2人とも良い気迫だ。やはり相撲はこうでなくてはな。これより決勝戦を始める!ここまで数々の力士たちを投げ飛ばしてきた破壊者、ガタイの良い男に対するのは、観客の声援と負けた力士たちの期待を背負いし男、セル・マーケット!」
サブロー・ハインリッヒの気合いの入った言葉で決勝戦が始まる。
先に仕掛けたのは、セル・マーケットだ。
「師匠はここまで、投げ飛ばしを狙ってきた。なら敢えて、飛び込ませてもらいます」
ガタイの良い男は、セル・マーケットの渾身のタックルを受け止め、持ち上げようとまわしを掴もうとするがもう既にそこにセル・マーケットは居ない。
「流石でごわすな。翻弄される訳でごわすよ」
「師匠には通じませんか」
「翻弄されないようにするなら動かないのが1番でごわすからな」
ガタイの良い男と互角の戦いを繰り広げているセル・マーケットに、一際大きな声援が飛び交う。
「キャー。男たちがパンパンってぶつかる音。素敵!」
「セル!!!良いぞ。その調子だ!」
「良いぞ。ここまで互角じゃねぇか!」
しかし、この声援が集中しているセル・マーケットの耳に聞こえることはない。
そして、今までと違いなってきてくれない師匠に対して、セル・マーケットも打つ手が無くなってきていた。
「どうしたでごわす。疲れるだけでごわすよ」
「師匠の言う通りですが、これが僕の小さい身体を使った基本戦術ですから。しまった!」
「やはりダメージが大きかったようでごわすな。満身創痍の中、ここまでよく頑張ったでごわすよ」
ガタイの良い男は、セル・マーケットを内掛けによって、仰向けに倒した。
「勝者、ガタイの良い男!お前こそが横綱だ!」
2人を讃える歓声と拍手が巻き起こる。
「セル!良い勝負だった。挑戦を続けたお前を本当に誇りに思う。うっうっうっ。クソ。セルの方が悔しいってのに俺の方が涙が出てきやがらぁ」
「あの男。いや横綱か。横綱を相手にここまで持ったのはお前だけだ。カッコよかったぜ小僧!」
「キャー。お祭りだけじゃなくて、毎日でも開いて欲しいわ!2人とも素敵!」
「無理だったか。流石、横綱だぜ。チクショー。お前がNo. 1だバカヤロー」
サブロー・ハインリッヒが締めの言葉を言う。
「ここまで、盛り上がって、ワシも久々に興奮した。領民たちにも楽しんで貰えて、何よりだ。今一度2人に盛大な拍手を」
サブロー・ハインリッヒの言葉に、一部を除くその場にいた全員が惜しみない拍手を送る。
拍手をしなかったのは、ただの農民や商人が褒め称えられていることに納得できていないサブロー・ハインリッヒに流れで協力することを決めた貴族であった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる