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2章 オダ郡を一つにまとめる
53話 サブロー吠える
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サブロー・ハインリッヒは、自分の言葉に従わず拍手しなかった一部の貴族に対して、思うところはあるが、選手たちを労い、1日目の祭りは終わりを迎えた。
「皆の拍手が選手たちにも届いたであろう。皆、大義であった。今日はこれにて解散する。皆、ゆっくりと英気を養って、明日以降の祭りでの良い結果を期待している」
選手たちが立ち去っていくと拍手をしなかった貴族たちから話しかけられるサブロー・ハインリッヒ。
「良い余興でしたがこういう祭りなら是非、我々にも声をかけていただきたかったですな。あのような平民どもに負けぬ者たちを準備したのですが」
この貴族の言葉を聞いて、サブロー・ハインリッヒは、皮肉った。
「ほぉ。ワシの言葉に従わず一生懸命に戦い抜いた戦士たちを褒め称えられもせぬような貴様らが彼らよりも強いのを集められるとはよく言えたものだな」
「貴様らとは何ですか?我らは貴族ですぞ」
「だから何だ?」
「だから何だですと!?反サブロー連合なる者を結成しておきながらサブロー様の祭りに参加するルルーニには、カイロ卿と呼んでおきながら、我々サブロー様にお味方すると宣言した我々に対して、礼儀が無いとは思いませんかな?」
サブロー・ハインリッヒは、顔を真っ赤にして、怒った。
「カイロ卿と貴様らを同列に語るな!カイロ卿は、ワシが反サブロー連合の面々にも送った招待に唯一応えたのだ!殺されるかもしれないと内心不安だっただろう!口先だけの貴様らと同列な訳がないだろう!」
「そうです。殺した方が良い!何故、殺さないのです!」
「この馬鹿どもが!貴様らは、口先三寸で、このワシを卑怯者にしようというのだな!ここではっきり言ってやろう!この祭の期間中、カイロ卿に手を出す者がいたら我々への宣戦布告とみなし、その領土を奪ってくれるわ!」
何故、サブロー・ハインリッヒがこのように言ったのか?
それは、爺様であるレーニン・ガロリングのことをよく知っているからである。
レーニン・ガロリングがこの好機を黙って見ているわけがない。密偵を送り込み、密かにルルーニ・カイロの暗殺を計画し、その仕業をサブロー・ハインリッヒによるものとして、侵攻を考えている。
サブロー・ハインリッヒは、その牽制のために言ったのだ。
これは効果覿面で、隠れていた密偵たちは、この日のうちに、サブロー・ハインリッヒの居城から姿を消した。
彼らにとって、サブロー・ハインリッヒの言葉が『攻撃してきたら反サブロー連合の仕業ということにして、テメェらを攻めてやるからな』こう聞こえたからだ。
その日の夜遅く、帰った密偵たちがレーニン・ガロリングへと報告していた。
「レーニン様、サブローもこちらと同じことを考えていたためルルーニの暗殺は取りやめ、急いで撤退しました。御役目を果たせず申し訳ございません」
「あのクソガキめ。いや、ローの奴が俺の考えを読んだのか。相変わらず癪に触る男だ」
「レーニン様、もう一つ御報告が。サブローは甚くルルーニのことを気に入っている様子でした。既に2人が通じているという可能性は、無いでしょうか?」
「ない。ルルーニは、マーガレットにほの字だ。マーガレットの参戦を促してきたのも、隙あればマーガレットを自分のものにしようと考えてのこと。しかし、そうはさせん。あの男には絶対にやらん。それに次に送り込む先は既に決めている。ナバル郡の郡主、ドレッド・ベアだ。そうすることで、ワシはドレッド様の義父として、オダ郡の郡主に就任する予定なのでな」
「流石、レーニン様。抜かりありませんな。サブローの祭りは、残り2日ありますがどうされます?」
「もう良い。ここで騒ぎを起こすのは得策ではない。だが、クソガキに協力していた貴族が叱責されていたのだな?」
「はい」
「その者たちのことは、わかるか?」
「勿論です」
「良し。密かに接触を図り、こちら側に引き込むのだ。内部から城を開けられれば、クソガキも一撃よ。攻め込むのは、祭りが終わった翌日とする。そのように準備するように、通達しておくのだ」
「はっ」
その頃、サブローの叱責はまだ続いていた。
「しかし、あのような祭り、反サブロー連合の奴らを呼び込む作戦だったのでは?それなのに、襲う人間の領土を取り上げるなどあんまりではないか!」
「あのような祭りだと?さっきから余興だの祭りだの。貴様らは全くわかっていないようだな。ワシが相撲で何を見ていたと思っている?」
「あのような取っ組み合いの野蛮な喧嘩で、興奮する趣味はありませんので、わかりかねますな」
「ほぉ。興奮していたワシを愚弄するか。良い度胸だな。貴様らには、領地を持つ貴族としての地位すら勿体無いとしか言えんな!あれが野蛮な喧嘩に見えているのなら尚更だ。領民たちの笑顔と平穏こそ領主として最も必要なことであろう!話は終わりだ。ワシは、貴様らを貴族として認めぬ。反サブロー連合に鞍替えするなり好きにするが良い!」
「そのようなことを言って良いのですかな?ただでさえ、劣勢のハインリッヒ卿」
「構わん。あれが何かわからん貴様らがいても弾除けぐらいにしかならんわ!今日戦ったあいつらの方がよっぽど頼りになろう!」
「我らが平民以下だと!?こちらが下手に出ていれば舐めやがって、ロルフ様があの世で泣いておられるわ!」
「父が恋しいのなら父の治世を崩そうとしているワシに言い寄ることすら間違っているであろう!とっとと出ていけ!」
「言われなくてもこちらから泥舟を降りてくれるわ!せいぜい、後悔するが良いハインリッヒ卿よ」
こうして、叱責された貴族がサブロー・ハインリッヒの元を去り、密かに接触してきたレーニン・ガロリングの密偵の話に乗り、反サブロー連合に加入するのだった。
残った拍手をしなかった貴族の半分は、日和見を続けるのである。
「皆の拍手が選手たちにも届いたであろう。皆、大義であった。今日はこれにて解散する。皆、ゆっくりと英気を養って、明日以降の祭りでの良い結果を期待している」
選手たちが立ち去っていくと拍手をしなかった貴族たちから話しかけられるサブロー・ハインリッヒ。
「良い余興でしたがこういう祭りなら是非、我々にも声をかけていただきたかったですな。あのような平民どもに負けぬ者たちを準備したのですが」
この貴族の言葉を聞いて、サブロー・ハインリッヒは、皮肉った。
「ほぉ。ワシの言葉に従わず一生懸命に戦い抜いた戦士たちを褒め称えられもせぬような貴様らが彼らよりも強いのを集められるとはよく言えたものだな」
「貴様らとは何ですか?我らは貴族ですぞ」
「だから何だ?」
「だから何だですと!?反サブロー連合なる者を結成しておきながらサブロー様の祭りに参加するルルーニには、カイロ卿と呼んでおきながら、我々サブロー様にお味方すると宣言した我々に対して、礼儀が無いとは思いませんかな?」
サブロー・ハインリッヒは、顔を真っ赤にして、怒った。
「カイロ卿と貴様らを同列に語るな!カイロ卿は、ワシが反サブロー連合の面々にも送った招待に唯一応えたのだ!殺されるかもしれないと内心不安だっただろう!口先だけの貴様らと同列な訳がないだろう!」
「そうです。殺した方が良い!何故、殺さないのです!」
「この馬鹿どもが!貴様らは、口先三寸で、このワシを卑怯者にしようというのだな!ここではっきり言ってやろう!この祭の期間中、カイロ卿に手を出す者がいたら我々への宣戦布告とみなし、その領土を奪ってくれるわ!」
何故、サブロー・ハインリッヒがこのように言ったのか?
それは、爺様であるレーニン・ガロリングのことをよく知っているからである。
レーニン・ガロリングがこの好機を黙って見ているわけがない。密偵を送り込み、密かにルルーニ・カイロの暗殺を計画し、その仕業をサブロー・ハインリッヒによるものとして、侵攻を考えている。
サブロー・ハインリッヒは、その牽制のために言ったのだ。
これは効果覿面で、隠れていた密偵たちは、この日のうちに、サブロー・ハインリッヒの居城から姿を消した。
彼らにとって、サブロー・ハインリッヒの言葉が『攻撃してきたら反サブロー連合の仕業ということにして、テメェらを攻めてやるからな』こう聞こえたからだ。
その日の夜遅く、帰った密偵たちがレーニン・ガロリングへと報告していた。
「レーニン様、サブローもこちらと同じことを考えていたためルルーニの暗殺は取りやめ、急いで撤退しました。御役目を果たせず申し訳ございません」
「あのクソガキめ。いや、ローの奴が俺の考えを読んだのか。相変わらず癪に触る男だ」
「レーニン様、もう一つ御報告が。サブローは甚くルルーニのことを気に入っている様子でした。既に2人が通じているという可能性は、無いでしょうか?」
「ない。ルルーニは、マーガレットにほの字だ。マーガレットの参戦を促してきたのも、隙あればマーガレットを自分のものにしようと考えてのこと。しかし、そうはさせん。あの男には絶対にやらん。それに次に送り込む先は既に決めている。ナバル郡の郡主、ドレッド・ベアだ。そうすることで、ワシはドレッド様の義父として、オダ郡の郡主に就任する予定なのでな」
「流石、レーニン様。抜かりありませんな。サブローの祭りは、残り2日ありますがどうされます?」
「もう良い。ここで騒ぎを起こすのは得策ではない。だが、クソガキに協力していた貴族が叱責されていたのだな?」
「はい」
「その者たちのことは、わかるか?」
「勿論です」
「良し。密かに接触を図り、こちら側に引き込むのだ。内部から城を開けられれば、クソガキも一撃よ。攻め込むのは、祭りが終わった翌日とする。そのように準備するように、通達しておくのだ」
「はっ」
その頃、サブローの叱責はまだ続いていた。
「しかし、あのような祭り、反サブロー連合の奴らを呼び込む作戦だったのでは?それなのに、襲う人間の領土を取り上げるなどあんまりではないか!」
「あのような祭りだと?さっきから余興だの祭りだの。貴様らは全くわかっていないようだな。ワシが相撲で何を見ていたと思っている?」
「あのような取っ組み合いの野蛮な喧嘩で、興奮する趣味はありませんので、わかりかねますな」
「ほぉ。興奮していたワシを愚弄するか。良い度胸だな。貴様らには、領地を持つ貴族としての地位すら勿体無いとしか言えんな!あれが野蛮な喧嘩に見えているのなら尚更だ。領民たちの笑顔と平穏こそ領主として最も必要なことであろう!話は終わりだ。ワシは、貴様らを貴族として認めぬ。反サブロー連合に鞍替えするなり好きにするが良い!」
「そのようなことを言って良いのですかな?ただでさえ、劣勢のハインリッヒ卿」
「構わん。あれが何かわからん貴様らがいても弾除けぐらいにしかならんわ!今日戦ったあいつらの方がよっぽど頼りになろう!」
「我らが平民以下だと!?こちらが下手に出ていれば舐めやがって、ロルフ様があの世で泣いておられるわ!」
「父が恋しいのなら父の治世を崩そうとしているワシに言い寄ることすら間違っているであろう!とっとと出ていけ!」
「言われなくてもこちらから泥舟を降りてくれるわ!せいぜい、後悔するが良いハインリッヒ卿よ」
こうして、叱責された貴族がサブロー・ハインリッヒの元を去り、密かに接触してきたレーニン・ガロリングの密偵の話に乗り、反サブロー連合に加入するのだった。
残った拍手をしなかった貴族の半分は、日和見を続けるのである。
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