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1章 第六天魔王、異世界に降り立つ

12話 決意表明

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 なんとかマジカル王国の属国となることを凌いだサブローは一息ついていた。

「なんとかうまいこといった、か」

「若、立派でしたぞ」

「ですがサブロー様、マジカル王国の支援は今の状況を鑑みますと喉から手が出るほど欲しいのではありませんか?」

 ロー爺が労い、ヤスが疑問を投げかける。

「確かにヤスがそう思うのも無理はなかろう。だが。ワシは魔法に対して一つの推測に至った。その場合、マジカル王国の支援を受ける必要はない」

「坊ちゃん、俺にもわかるように話してくれ。全くちんぷんかんぷんだ。マジカル王国の魔法兵たちを実際に見た俺としたらマジカル王国の支援を受けるのも悪いことではないと思うんだけどな」

 タンダザークの疑問に答えるサブロー。

「お前たちは精霊の力の込められた石。ええぃ言いにくいから精霊石と呼ぶことにした。それさえあれば誰でも魔法が使えると考えていたのではないか?」

 この発言に1番驚いたのはマリーだったが平静を取り戻して話を聞く。

「サブロー様、それはどういうことですか?」

 ヤスがサブローの疑問に疑問で返した。

「考えてみるがいい。それだけで魔法が誰にでも使えるのならマジカル王国に魔法を使えないものがいるのは何故だ?少なくともワシが見る限りあの歩兵どもは魔法を使っていなかった。いや、恐らく使えないのだ。精霊石と人間の持つ何かが交わって、初めて発動するのだろう」

「!!!その考えには至りませんでした」

「そう気にするでない。議論を交わすことは大事じゃ」

「まぁ、それでマジカル王国だけが特別じゃないから旨味を感じなかったってのは、わかったんだがよ。ならさっきの奴に言ってた出来レースってのは、要はやらせってことだよな。戦がやらせってどういうことなんだ?」

 一応の納得をしたタンダザークがサブローに別の質問をする。

「タンザクよ。戦に出ていたのならおかしいとは思わなかったかガルディアン王国の動きに」

「いや、悪りぃけど思いあたらねぇな」

「いえ、確かに思い返せばおかしなことだらけでした。ガルディアン王国は、初めこそ派手にカタパルトに乗せた爆弾攻撃をしていましたがそれが効かないとなると全軍突撃を指示しましたが、動いていたのは全然だけです。まるで、何かを値踏みするかのように、な」

 サブローがまるで見たかなように話すのだから当事者であるヤスモタンダザークも驚くしかなかった。

「本当に近くのタタラサンで見ていらしたのですか?」

 ヤスがおそるおそる聞く。

「うむ。ガルディアン王国とマジカル王国の兵を見る機会は早々ないと思ったのでな」

 サブローが悪びれる様子もなく答える。

「そうですか。サブロー様は、危ないことをなさりますね。それで、サブロー様の考える値踏みとはなんでしょうか?」

 ヤスは、やんわりと釘を刺しつつ、尋ねてみた。

「恐らくガルディアン王国は、マジカル王国との小競り合いを都合よく新兵の実戦訓練に使っておるのだろう。まぁ文字通り生き死にをかけた訓練だがな」

 サブローの言葉に全員が息をのむ。

「どうした。勿論、それだけでないぞ。ガルディアン王国のもう一つの理由は、アイランド公国の定期的な弱体化じゃ。その結果、此度もアイランド公国は、結構な痛手を受けた。ガルディアン王国側が逃げるまで、その場で足止めをしておったのだからな。その結果、総死者数は、3万を軽く超え、そこに重症者と軽傷者を合わせた総被害は8万にも及ぶ」

 サブローの追い討ちに全員が鳩が豆鉄砲を食ったように呆気に取られてキョトンとしていた。

「まぁ、そういうことじゃ。ワシはな。このオダ郡に住まう民を守る重責がある。そのためには、マジカル王国の属国になるなどお断りじゃ。そして、此度のナバル郡とタルカ郡の侵攻には、不思議とワクワクしておる。アイランド公国を取るための布石とさせてもらおうと、な」

 更なる爆弾発言にその場にいた全員の頭に雷が落ちたかのようである。

「そのためにもワシがこのオダ郡の新たなる領主であり、民たちを守ってくれる強い殿様だと見せ付けねばならん。皆、協力してくれる、な?」

 この言葉に全員が我に帰り、ロー、ヤス、タンダザークがサブローに跪き改めて忠誠を誓った。

「このロー、若のため、この武と経験を遺憾無く発揮しますぞ」

「サブロー様に名を賜った者として、サブロー様の描く未来のためにより一層の。願わくば、あの時の約束が果たされるその日のために我が力、存分にお使いください」

「あん時は、世間知らずで馬鹿なガキだと思ったが、いや愉快、愉快、まさかアイランド公国を取るなどと大々的に決意表明する大馬鹿者であったとは、だからこそ面白い。このタンダザーク、存分に力を奮いましょうぞ」

 マリーだけが1人まるで考え込むかのように話を聞いているのだった。

 しかし、サブローはそのことに対して何も言わない。

 元々、女子を巻き込むことなど考えていないのだ。

 サブローは、この時そう考えていた。

 マリーからまさかあんな事を言われるとは思わずに。

「では、ワシは疲れたし、じっくりと策を考えたい。少し1人にしてくれるか?」

 全員が頷いたので、サブローは、書斎に籠ったのである。
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