信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜

揚惇命

文字の大きさ
12 / 166
1章 第六天魔王、異世界に降り立つ

12話 決意表明

しおりを挟む
 なんとかマジカル王国の属国となることを凌いだサブローは一息ついていた。

「なんとかうまいこといった、か」

「若、立派でしたぞ」

「ですがサブロー様、マジカル王国の支援は今の状況を鑑みますと喉から手が出るほど欲しいのではありませんか?」

 ロー爺が労い、ヤスが疑問を投げかける。

「確かにヤスがそう思うのも無理はなかろう。だが。ワシは魔法に対して一つの推測に至った。その場合、マジカル王国の支援を受ける必要はない」

「坊ちゃん、俺にもわかるように話してくれ。全くちんぷんかんぷんだ。マジカル王国の魔法兵たちを実際に見た俺としたらマジカル王国の支援を受けるのも悪いことではないと思うんだけどな」

 タンダザークの疑問に答えるサブロー。

「お前たちは精霊の力の込められた石。ええぃ言いにくいから精霊石と呼ぶことにした。それさえあれば誰でも魔法が使えると考えていたのではないか?」

 この発言に1番驚いたのはマリーだったが平静を取り戻して話を聞く。

「サブロー様、それはどういうことですか?」

 ヤスがサブローの疑問に疑問で返した。

「考えてみるがいい。それだけで魔法が誰にでも使えるのならマジカル王国に魔法を使えないものがいるのは何故だ?少なくともワシが見る限りあの歩兵どもは魔法を使っていなかった。いや、恐らく使えないのだ。精霊石と人間の持つ何かが交わって、初めて発動するのだろう」

「!!!その考えには至りませんでした」

「そう気にするでない。議論を交わすことは大事じゃ」

「まぁ、それでマジカル王国だけが特別じゃないから旨味を感じなかったってのは、わかったんだがよ。ならさっきの奴に言ってた出来レースってのは、要はやらせってことだよな。戦がやらせってどういうことなんだ?」

 一応の納得をしたタンダザークがサブローに別の質問をする。

「タンザクよ。戦に出ていたのならおかしいとは思わなかったかガルディアン王国の動きに」

「いや、悪りぃけど思いあたらねぇな」

「いえ、確かに思い返せばおかしなことだらけでした。ガルディアン王国は、初めこそ派手にカタパルトに乗せた爆弾攻撃をしていましたがそれが効かないとなると全軍突撃を指示しましたが、動いていたのは全然だけです。まるで、何かを値踏みするかのように、な」

 サブローがまるで見たかなように話すのだから当事者であるヤスモタンダザークも驚くしかなかった。

「本当に近くのタタラサンで見ていらしたのですか?」

 ヤスがおそるおそる聞く。

「うむ。ガルディアン王国とマジカル王国の兵を見る機会は早々ないと思ったのでな」

 サブローが悪びれる様子もなく答える。

「そうですか。サブロー様は、危ないことをなさりますね。それで、サブロー様の考える値踏みとはなんでしょうか?」

 ヤスは、やんわりと釘を刺しつつ、尋ねてみた。

「恐らくガルディアン王国は、マジカル王国との小競り合いを都合よく新兵の実戦訓練に使っておるのだろう。まぁ文字通り生き死にをかけた訓練だがな」

 サブローの言葉に全員が息をのむ。

「どうした。勿論、それだけでないぞ。ガルディアン王国のもう一つの理由は、アイランド公国の定期的な弱体化じゃ。その結果、此度もアイランド公国は、結構な痛手を受けた。ガルディアン王国側が逃げるまで、その場で足止めをしておったのだからな。その結果、総死者数は、3万を軽く超え、そこに重症者と軽傷者を合わせた総被害は8万にも及ぶ」

 サブローの追い討ちに全員が鳩が豆鉄砲を食ったように呆気に取られてキョトンとしていた。

「まぁ、そういうことじゃ。ワシはな。このオダ郡に住まう民を守る重責がある。そのためには、マジカル王国の属国になるなどお断りじゃ。そして、此度のナバル郡とタルカ郡の侵攻には、不思議とワクワクしておる。アイランド公国を取るための布石とさせてもらおうと、な」

 更なる爆弾発言にその場にいた全員の頭に雷が落ちたかのようである。

「そのためにもワシがこのオダ郡の新たなる領主であり、民たちを守ってくれる強い殿様だと見せ付けねばならん。皆、協力してくれる、な?」

 この言葉に全員が我に帰り、ロー、ヤス、タンダザークがサブローに跪き改めて忠誠を誓った。

「このロー、若のため、この武と経験を遺憾無く発揮しますぞ」

「サブロー様に名を賜った者として、サブロー様の描く未来のためにより一層の。願わくば、あの時の約束が果たされるその日のために我が力、存分にお使いください」

「あん時は、世間知らずで馬鹿なガキだと思ったが、いや愉快、愉快、まさかアイランド公国を取るなどと大々的に決意表明する大馬鹿者であったとは、だからこそ面白い。このタンダザーク、存分に力を奮いましょうぞ」

 マリーだけが1人まるで考え込むかのように話を聞いているのだった。

 しかし、サブローはそのことに対して何も言わない。

 元々、女子を巻き込むことなど考えていないのだ。

 サブローは、この時そう考えていた。

 マリーからまさかあんな事を言われるとは思わずに。

「では、ワシは疲れたし、じっくりと策を考えたい。少し1人にしてくれるか?」

 全員が頷いたので、サブローは、書斎に籠ったのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」  ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...