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五
六
しおりを挟む目が覚めれば見慣れた天井が映る。
「·············」
昨日、何があったのかと思い出そうとすれば
「結」
「·····あ」
繋が隣で寝ていて目を覚ましていた。
「····繋···私、昨日····」
少しずつ思い出してくるおぞましい出来事。
背筋が凍りつく様な感覚を覚える。
それを繋が抱き締め溶かしていく。
「姫雛が申し訳なかった」
「····やっぱり」
姫雛がやった事だったのかと言うショックが押し寄せてくる。
それと····
「私、もう帰れないのかな?」
異世界の昔の時代にタイムスリップ。
一体どうして自分がこの世界にやってきたのか分からない。
ただ、もう帰れないと言う事だけが分かった。
家族には本当に二度と会えないのだろうか。
「····ぅ····うぅ···」
考えれば考える程涙が止まらない。
「····結」
泣く結を抱き締める力が少しだけ強くなる。
ただ、繋はこんな感情を抱くのは最低な事かもしれないが、帰る手立てがなくなった結がこの世界にいられる事に繋は内心喜んでいた。
結は己の傍にこれからもいる。
結の視界から見えないところで繋の口角は上がっていた。
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「そもそも上界に人間がいる事が問題なんだよ。火ノはどしたよ?あの未練タラタラのヘタレ犬」
次の日、客間に通した鳳来が煙管を燻らせながら長椅子に寝転がって繋に聞いてきた。
「一応報告書として御所に提出したんですが···まだ目を通してないみたいッスね」
「はぁ?相変わらず仕事が遅せぇわ。何してんだか····」
この外国人····西の君主の悪口をさも当然かのように言うが、役人が聞けば不敬罪で捕まるのでは無いだろうか?
「····えと···鳳来さんは···神様なんですよね?」
結が聞けばにこりと笑う。
「そっ!時の神様」
「時の····」
時間を止めたり早くしたり戻したり。
時を超えて人間界の未来も過去も見ることだって出来る。
ただ、時神故に禁忌が多いらしく規制がはられている。
人間界の未来を干渉できるなら····
「普通なら令和に戻す事は出来るぜ。····普通なら」
しかし、ここの食べ物を食べてしまっている事と、結がやってきたその神社がない事によって帰る為の道が無いから帰れない。
「本来人間がここから帰る為には来た場所からじゃねぇと帰れねぇからな」
その赤い神社を探さない為にはどうしようもない。
それ以前に上界の食べ物を食べている事で結の身体はこの世界に縛り付けられている。
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