死に別れた縁と私と異界の繋

海林檎

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 療養所近くで繋が結に上げた簪を拾った。
 この辺は人気の少なく療養所も今は使われていない。
  
 しかし、僅か


 ほんの僅かに結の悲鳴が聞こえた。



「長!」


 ムギが全身に妖力を纏わせ力を込める。

 そのまま勢いよく体当たりをすれば扉が開いた。


 療養所の中、妖気を纏う妖怪は三人。
 繋は突風を吹かせて自在に操り、三人の動きを封じた。



「結!!」


 ムギが結達がいるであろうその部屋にたどり着き繋もやってきた。



「···············」


 服は破かれ全身をカタカタ震わせ青ざめて座り込んで泣いている結がそこに居た。

「·····繋····」

 結に近付き繋は羽織りを結に着せた後、軽く引き寄せ抱き締めた。

「待ってな。直ぐに終わらせるから」

 穏やかに落ち着いた優しい声色。
 何だかその声に落ち着き、結は小さく頷いた。



「ムギ。右の雑魚やれるか?」

「任せてよ。その前に結に結界を施しておくね」

 ムギは結の周りに花の蕾を型どった水の結界を張る

「結はここから動かないでね」

 ムギに言われて素直に頷く。


 風圧でいつまでも押さえつけていても良いが、隙が少しでも出来れば相手も容赦なく妖気を使って攻撃してくるだろう。





 事実、風を止ませた瞬間




「ぶっ殺してやるこのクソ天狗が!」
「心臓を抉って畜生の餌にしてやる」
「焼け死ねぇえ!」

 案の定、男達はいっせいに繋達に炎を放つ。

「きゃ!」

 こんな大きな炎の渦を喰らえば一溜りもないだろう。



 繋はヤツデを取りだし、それを横に一振りすれば放たれた炎は横へと流される。

 炎は壁にぶつかり燃え広がる前にムギが手の平から出した水で放水し消していく。




 初めて見る妖怪同士の戦い。


 一見見るとコスプレをした人間同士がCGを使ったアクションにも見えるが、紛れもない風に炎に水を使った技が繰り出されていく。

 人間界ではこんな事有り得ない。


 見た目は人間とかわらない妖怪達だが、次第にその姿は変形していく。


「何あれ····何あれぇ!?」


 人の顔に獅子の身体。口から火を吐く巨大な化け物がは三匹。
   

「四足歩行とか逆に不便じゃねぇか」



 繋の言いたいことは分かる。



 しかし、この姿の方がより一層炎の威力が上がる。




 三匹の獅子の化け物達は再び繋達に炎を放った。


「繋!」


 繋は再び風を巻き起こし、ムギが繋の風に自分の水を乗せて向かっていく炎にぶつけた。


 その瞬間



 「「「「「「あ」」」」」」


 爆発が起きた。



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