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18話
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そして翌日、約束の時間が来た。おそるおそるドアを開ける。
「……誰もいない」
やっぱり昨日のことで愛想を尽かされてしまったようだ。
「……」
いじけた僕は物置部屋の隅で体育座りをした。
この地獄のような毎日のうち、この時間だけがちょっとした楽しみになっていたのに。自分でそれを壊してしまった。後悔してももう遅いが、後悔せずにはいられない。
僕から会いに行くことはできないから、こうして待つことしかできないのもやるせない。
「……」
約束の時間から一時間が過ぎた。やはりヴァルア様は来ない。きっと明日も来ないだろう。
まあ、アリスの言う通り、これでよかったのかもしれない。愛なんてものを与えられても、僕の手に余るだけだ。
うん。諦めよう。諦めるしかない。
そう思って立ち上がろうとしたとき――
勢いよくドアが開いた。
驚いた僕は、部屋の隅で身を縮める。
息切れした誰かがズカズカと中に入ってくる。
「!!」
ヴァルア様だ。ヴァルア様はあたりを見回し、僕に気付かなかったのか深いため息を吐いた。
「間に合わなかったか……。はぁ……」
それでもすぐに帰ろうとはせず、テーブルに腰を落ち着けた。
彼は息を整える間もなく、鞄から紙を取り出し読み始めた。
僕はおそるおそる、物陰から顔を出した。
「あの……。ヴァルア様……?」
「うわぁぁ!?」
僕が待っているとは思いもしなかったようだ。驚きすぎたあまり、床に尻もちをついた。
「えっと……来てくれたんですか……?」
「あ、ああ……。君こそ、待っていてくれたんだね……?」
「……あの、えっと、お、怒っていないんですか……?」
「なんのことだい?」
「えっと……昨日の贈り物を……投げ捨ててしまったこと……」
ヴァルア様は「えっ?」としばらく考える仕草をしてから、大口を開けて笑った。
「ああ! あのことかい? いやいや、どうして怒ることがある?」
「えっと、ご、ごめんなさい……」
「謝らなくていいよ。それより、せっかく会えたんだ。こっちに来てくれないか」
「は、はい……」
ヴァルア様の隣に座ろうとしたら、そこじゃなくて彼の脚の間に座れと言われた。僕が大人しくそこに座ると、ヴァルア様に抱きしめられた。
「あれから、君の欲しいものを考えていたんだ」
「欲しいものなんてありません」
「いいや、俺は気付いたよ。君が欲しいもの、それは人のあたたかみだ」
そう言って、ヴァルア様は一枚の紙を手渡した。さきほど念入りに読んでいたものだ。そこにはびっしりと文章が書かれている。
「君に手紙を書いてみた」
「手紙……。はじめてもらいました」
「それは嬉しいな。受け取ってもらえるかい?」
「は、はい……。ありがとうございます」
ヴァルア様は満足そうな笑みを浮かべ、僕の頭にキスをした。
「こうして手紙を渡したり、抱きしめたり、キスをしたり……そういうのが、君にとって嬉しい愛の形なんじゃないかと、俺は思ったんだ」
「……はい。嬉しいです」
相手がどんな思いで贈り物を選んだのか、その好意が大事なのだと、アリスは言っていた。僕はそれが少し分かったような気がした。
ヴァルア様が僕の頬に手を添える。そして目を閉じた僕にキスをした。
「俺たちさ、出会って二日でセックスをしたとは思えないね」
「あはは。確かにそうですね。そういえばあれからあなたと一度もしていません」
「だって、セックスを求められるのはあまり好きじゃないだろう?」
「え、あ、まあ。そうですね?」
そんなことを言った覚えは一度もないんだけど。否定するのも癪なので、そのままにしておいた。
「……誰もいない」
やっぱり昨日のことで愛想を尽かされてしまったようだ。
「……」
いじけた僕は物置部屋の隅で体育座りをした。
この地獄のような毎日のうち、この時間だけがちょっとした楽しみになっていたのに。自分でそれを壊してしまった。後悔してももう遅いが、後悔せずにはいられない。
僕から会いに行くことはできないから、こうして待つことしかできないのもやるせない。
「……」
約束の時間から一時間が過ぎた。やはりヴァルア様は来ない。きっと明日も来ないだろう。
まあ、アリスの言う通り、これでよかったのかもしれない。愛なんてものを与えられても、僕の手に余るだけだ。
うん。諦めよう。諦めるしかない。
そう思って立ち上がろうとしたとき――
勢いよくドアが開いた。
驚いた僕は、部屋の隅で身を縮める。
息切れした誰かがズカズカと中に入ってくる。
「!!」
ヴァルア様だ。ヴァルア様はあたりを見回し、僕に気付かなかったのか深いため息を吐いた。
「間に合わなかったか……。はぁ……」
それでもすぐに帰ろうとはせず、テーブルに腰を落ち着けた。
彼は息を整える間もなく、鞄から紙を取り出し読み始めた。
僕はおそるおそる、物陰から顔を出した。
「あの……。ヴァルア様……?」
「うわぁぁ!?」
僕が待っているとは思いもしなかったようだ。驚きすぎたあまり、床に尻もちをついた。
「えっと……来てくれたんですか……?」
「あ、ああ……。君こそ、待っていてくれたんだね……?」
「……あの、えっと、お、怒っていないんですか……?」
「なんのことだい?」
「えっと……昨日の贈り物を……投げ捨ててしまったこと……」
ヴァルア様は「えっ?」としばらく考える仕草をしてから、大口を開けて笑った。
「ああ! あのことかい? いやいや、どうして怒ることがある?」
「えっと、ご、ごめんなさい……」
「謝らなくていいよ。それより、せっかく会えたんだ。こっちに来てくれないか」
「は、はい……」
ヴァルア様の隣に座ろうとしたら、そこじゃなくて彼の脚の間に座れと言われた。僕が大人しくそこに座ると、ヴァルア様に抱きしめられた。
「あれから、君の欲しいものを考えていたんだ」
「欲しいものなんてありません」
「いいや、俺は気付いたよ。君が欲しいもの、それは人のあたたかみだ」
そう言って、ヴァルア様は一枚の紙を手渡した。さきほど念入りに読んでいたものだ。そこにはびっしりと文章が書かれている。
「君に手紙を書いてみた」
「手紙……。はじめてもらいました」
「それは嬉しいな。受け取ってもらえるかい?」
「は、はい……。ありがとうございます」
ヴァルア様は満足そうな笑みを浮かべ、僕の頭にキスをした。
「こうして手紙を渡したり、抱きしめたり、キスをしたり……そういうのが、君にとって嬉しい愛の形なんじゃないかと、俺は思ったんだ」
「……はい。嬉しいです」
相手がどんな思いで贈り物を選んだのか、その好意が大事なのだと、アリスは言っていた。僕はそれが少し分かったような気がした。
ヴァルア様が僕の頬に手を添える。そして目を閉じた僕にキスをした。
「俺たちさ、出会って二日でセックスをしたとは思えないね」
「あはは。確かにそうですね。そういえばあれからあなたと一度もしていません」
「だって、セックスを求められるのはあまり好きじゃないだろう?」
「え、あ、まあ。そうですね?」
そんなことを言った覚えは一度もないんだけど。否定するのも癪なので、そのままにしておいた。
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