【完結】【R18BL】清らかになるために司祭様に犯されています

ちゃっぷす

文字の大きさ
上 下
17 / 47

17話

しおりを挟む
 ◇◇◇

 翌日、約束の時間に物置部屋のドアを開けると、姿が見えないほど大きなバラの花束を持ったヴァルア様がひざまずいて待っていた。

「……」

 僕は言葉を失い、ただ胡乱な目を花束に向けるのみ。
 無反応なことが不思議だったのか、花束の奥からヴァルア様がひょこっと顔を出した。

「あれ? 感動しすぎて声も出ない?」
「なんですか、これは」
「愛の象徴、バラの花束だよ」
「……」

 僕はそっとドアを閉め、物置部屋から去った。本当の愛がバラの花束?  もしそうならバカらしいにもほどがある。

「おい! どこへ行く!!」

 ヴァルア様が追いかけてきた。

「花束は好みじゃなかったかい? だったらこれはどうかな」

 そう言って僕に見せたのは、宝石が埋め込まれた指輪だった。
 僕はその指輪を受け取り、すぐに投げ捨てた。

「あー!! なんてことをするんだ!! わざわざ昨日宝石商を呼びつけて用意したものなんだぞ!?」
「あれがあなたの言う愛なんですか? 大貴族様であれば、あんなものいくらでも用意できるじゃないですか」
「ええ……? 気に入らなかったかな……?」
「僕、物はいりません」
「ええー……。そんなこと言う子初めてだ……」

 ヴァルア様が無意識に呟いた発言に、戸惑うほどの苛立ちを覚えた。
 僕はそのまま礼拝堂に戻り、蝋燭灯しの作業に戻った。


 その夜、僕はヴァルア様にしてしまったことを悔いて眠れなくなっていた。

「……」

 ベッドに腰掛け項垂れている僕に、アリスが温かい飲み物を渡す。

「考え事ですか?」
「……アリス。あのさ、えっと」
「どうしましたか?」
「た、たとえばの話なんだけど、ある人がアリスにバラの花束や指輪を渡してきたら、どうする?」
「……誰かに渡されたのですか?」
「ううん!? 違うけどね!?」

 アリスは疑わしげな目をしながらも、少し考えてから答えた。

「相手にもよりますね。私が好意を寄せている人だったなら、ありがたく受け取りますよ」
「じゃあ、アリスが花束や指輪を愛する人に渡したとして、相手に目の前で投げ捨てられたらどうする?」
「ええ……? そんなひどい人とは今後一生付き合いません」
「~~!! だってただの物だよ!? いらないでしょう!?」
「……大切なのは物そのものではなくて、相手の好意です。その人がどんな思いでその贈り物を選んだのか、あなたはちゃんと考えましたか?」
「えっと……えっと……。考えなかった……」

 アリスは呆れた様子で僕を見た。

「相手の好意が迷惑で、嫌われたいと思っているなら、百歩譲ってそうしてもいいでしょうが……。仮にあなたも好意を寄せているのであれば、早いうちに謝った方がいいかと思いますよ」
「……ちょっと待って、アリス。僕は自分の話をしているなんて言っていないよ」
「もう遅いです」
「んあぁ……。こ、これ、司祭様には……」
「言いません。ですが……やめておいたほうがいいと思います。あなたにとっても、相手にとっても」
「……」
「ちょうど良かったんじゃないでしょうか。贈り物を投げ捨てるという、非人道的な行為をされたならば、百年の恋も冷めるでしょうし」
「うぅぅ……」

 そこでアリスは思い出したかのように言った。

「そもそも、聖職者は神に人生を捧げる者。性行為も結婚も許されていません」
「うーん?」

 司祭とアコライトが毎夜性行為をしているんだが? と目で訴えると、アリスは慌てて弁解した。

「えっと、司祭様は神の依り代……つまり神様と同義と言っても過言ではないので、司祭様との儀式は例外です」
「ふーん」
「……」
「……」
「寝ましょうか、ナスト様」
「そうだね。おやすみ、アリス」
「おやすみなさい」

 蝋燭の灯が消える。暗くなった天井を見上げ、僕はまだ考えていた。
 ヴァルア様は、どんな思いであの贈り物を選んでくれたんだろう。
 ……考えてももう遅いかもしれない。だって、アリスがいうには、僕は〝今後一生付き合わない〟ような〝非人道的な行為〟をしてしまったみたいだし。

 明日、ヴァルア様は物置部屋に来てくれるだろうか。
 空っぽの物置部屋を想像すると、胸が少し苦しくなった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【完結】【番外編】月見里弟の秘めごと

ちゃっぷす
BL
こちらの小説は『男泣かせの名器くん、犬猿の仲に泣かされる』の番外編です。 番外編なのですが、※※ご注意ください※※!! こちらの作品のメインカプは月見里弟×月見里です!!(小鳥遊×月見里もちょこっとあり) 本番あり!!ご注意ください!!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...