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19話
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◇◇◇
最近、司祭様の部屋に行くと、足がガクガク震えるようになった。司祭様も僕の変化に気付いているのか、少し怒りっぽくなって余計に怖い。
しかし、その日の司祭様は鼻歌を歌うほどに上機嫌だった。
「ナスト。ベッドに」
「は、はい……」
「わしはしばらく準備をするから、待っていなさい」
準備? 今まで儀式に準備なんてなかった。嫌な予感がする。
僕に背を向け物音を立てていた司祭様が、何かを持ってベッドに上がった。
「注射器……?」
「ナスト。最近君は体調が悪いと言っていたね。だから最近儀式に身が入っていないだろう?」
「……」
思わず後ずさった僕の腕を、司祭様が掴む。
「いやっ……」
「なに、怖いものじゃないよ。わしを信じなさい。ただ儀式を順調に終えるためのものだ」
司祭様が注射器から少量の液体を垂らす。そこから甘い匂いが漂った。
「これはね。異国に生存する希少なヒト族のフェロモンを抽出したものだ」
「……?」
「このフェロモンを持つヒト族は、一カ月に一度、動物と同じような発情期があるらしい。発情期には同種の精液と快感を求めるようになり、そのことしか考えられなくなるとか、ならないとか」
「ひっ……」
「つまりは媚薬のようなものさ。心配ないよ。一、二時間で症状は治まる」
「やっ、やめっ……いやだっ、そんなものっ……」
逃げようとしたが、すぐ司祭様に引き戻された。
「最近ずいぶんと反抗的じゃないか、ナスト」
「ひっ……ひぃ……」
「いいんだぞ? ここから追い出しても。それとも、わしじゃない聖職者に清めの儀式をしてもらうか? といっても、わし以外であればナストの穢れを清めるためには五人以上は必要だろうがなあ」
血の気が引いた。ここを追い出されたら僕はまたスラムに戻らなきゃいけない。そうじゃなくても、五人もの人に犯されるのはごめんだ。
それなら……司祭様一人に犯されたほうが、よっぽどマシだ。
「おや。分かってくれたようだね。良い子だ、ナスト。さっきのは冗談だよ。誰がナストを手放すものか」
司祭様は僕の唇に吸い付いてから、僕に注射を打った。
「っ……」
「効果があらわれるのに五分ほどかかる。それまでゆっくり清めの儀式を進めようじゃないか」
「は、はい……」
司祭様に肛門を舐められる。向かい合っているより、後ろを向いている方がまだ良い。最近はずっと、ヴァルア様と体を重ねたあの日を思い出して体を反応させている。
抱きしめられると周りに漂う、ヴァルア様の香水の匂いが好きだ。品があって、優しくて、ずっと匂っていると安心して少し眠くなる。それに、とても優しい愛撫も良かった。余裕のある手つきで、僕が気持ちよくなるように体に触れてくれるんだ。
「あっ……」
やっとペニスが反応した。
「あ……?」
なにかおかしいことに気付いた。ぞわぞわと押し寄せる情欲に恐怖を覚える。
「あっ……あっ……あぁぁぁ!?」
突然ペニスが完全に勃起し、カウパーがだらだらと溢れ出た。ペニスだけでなく全身が、触れられてもいないのに疼く。
肛門に吸い付いていた司祭様が歓喜の声を上げた。
「おぉぉっ! やっと薬がきいていたな!! おおお……噂には聞いていたが……! 本当に尻から愛液が溢れている……!!」
司祭様は痙攣している僕を仰向けにして、まじまじと見つめた。
「ナスト、ナスト! 気分はどうだ? わしに何をしてほしい!?」
「あっ……あぁっ……」
先ほどまで記憶をたどり必死に興奮しようとしていたのに、今の僕は快感を求めるあまり、ヴァルア様ことを考える余裕すらなくなっていた。
とにかく楽にしてほしい。射精をしたい。肛門にペニスを挿れてほしい。
その思いは全て声に出ていたようだ。司祭様は恍惚の表情を浮かべ、大きく頷いた。
「ああ! もちろん、わしのナストのお願いだ。おねだりならなんでも聞いてあげよう」
「早くっ……早くっ……!!」
「もちろんだ。ほら、ナストの大好きな、わしのペニスだぞ!!」
「あぁぁぁっ!!」
挿入された瞬間、頭の中で火花が飛び散った。中が痙攣し、ペニスからは精液が噴射する。
「おほっ、おほぉぉっ!! ナストッ、わしのペニスがそんなに気持ちいいか!?」
「きもちいっ、きもちぃぃっ……!! はやく、もっと……っ」
興奮のあまり、司祭様は涎を垂らして腰を振っていた。
「はぁっ……!! はぁぁっ!! おっ、おぉぉっ、あっ、おっ、んごぉぉっ!!」
「あぁぁっ、あっ、あぁぁっ!! きもちいっ、そこ、そこきもちいよぉっ!!」
「ナストの中っ……!! いつもよりもヌルヌルしていてより気持ちいいぞっ、おっ、腰が止まらんっ、止まらんっ、イクッ、イクッ!!」
中に精液を注ぎ込まれると、今まで感じたことのない悦びが全身を襲った。一度手に入ると、もっと欲しくなるような麻薬的な悦びだった。
「もっとっ……司祭様ぁっ……もっとぉ……!!」
「んほっ、ああ、ああいいとも!! ほれ、もう一度だ!!」
「あぁぁぁっ!!♡」
二度目の精液を受けても僕は満足できず、自ら司祭様の上に乗って腰を振ったそうだ。司祭様のペニスがもう勃たなくなっても、口に含んで懸命に勃たせようとしていたらしい。
……と、翌朝司祭様に教えてもらった。どうやら僕はその薬に弱いらしく、本来ならば二時間程度しか効かないのに、朝方まで正気を失っていたようだ。
朝目が覚めたとき、僕の体は自分と司祭様の体液でベトベトになっていた。そんな僕を抱きしめ、司祭様が言った。
「これから毎晩、あの薬を使おうな、ナスト」
確かに、あの薬は儀式において効果てきめんだった。
その代わり、僕の人としての尊厳が欠けたような気がした。
最近、司祭様の部屋に行くと、足がガクガク震えるようになった。司祭様も僕の変化に気付いているのか、少し怒りっぽくなって余計に怖い。
しかし、その日の司祭様は鼻歌を歌うほどに上機嫌だった。
「ナスト。ベッドに」
「は、はい……」
「わしはしばらく準備をするから、待っていなさい」
準備? 今まで儀式に準備なんてなかった。嫌な予感がする。
僕に背を向け物音を立てていた司祭様が、何かを持ってベッドに上がった。
「注射器……?」
「ナスト。最近君は体調が悪いと言っていたね。だから最近儀式に身が入っていないだろう?」
「……」
思わず後ずさった僕の腕を、司祭様が掴む。
「いやっ……」
「なに、怖いものじゃないよ。わしを信じなさい。ただ儀式を順調に終えるためのものだ」
司祭様が注射器から少量の液体を垂らす。そこから甘い匂いが漂った。
「これはね。異国に生存する希少なヒト族のフェロモンを抽出したものだ」
「……?」
「このフェロモンを持つヒト族は、一カ月に一度、動物と同じような発情期があるらしい。発情期には同種の精液と快感を求めるようになり、そのことしか考えられなくなるとか、ならないとか」
「ひっ……」
「つまりは媚薬のようなものさ。心配ないよ。一、二時間で症状は治まる」
「やっ、やめっ……いやだっ、そんなものっ……」
逃げようとしたが、すぐ司祭様に引き戻された。
「最近ずいぶんと反抗的じゃないか、ナスト」
「ひっ……ひぃ……」
「いいんだぞ? ここから追い出しても。それとも、わしじゃない聖職者に清めの儀式をしてもらうか? といっても、わし以外であればナストの穢れを清めるためには五人以上は必要だろうがなあ」
血の気が引いた。ここを追い出されたら僕はまたスラムに戻らなきゃいけない。そうじゃなくても、五人もの人に犯されるのはごめんだ。
それなら……司祭様一人に犯されたほうが、よっぽどマシだ。
「おや。分かってくれたようだね。良い子だ、ナスト。さっきのは冗談だよ。誰がナストを手放すものか」
司祭様は僕の唇に吸い付いてから、僕に注射を打った。
「っ……」
「効果があらわれるのに五分ほどかかる。それまでゆっくり清めの儀式を進めようじゃないか」
「は、はい……」
司祭様に肛門を舐められる。向かい合っているより、後ろを向いている方がまだ良い。最近はずっと、ヴァルア様と体を重ねたあの日を思い出して体を反応させている。
抱きしめられると周りに漂う、ヴァルア様の香水の匂いが好きだ。品があって、優しくて、ずっと匂っていると安心して少し眠くなる。それに、とても優しい愛撫も良かった。余裕のある手つきで、僕が気持ちよくなるように体に触れてくれるんだ。
「あっ……」
やっとペニスが反応した。
「あ……?」
なにかおかしいことに気付いた。ぞわぞわと押し寄せる情欲に恐怖を覚える。
「あっ……あっ……あぁぁぁ!?」
突然ペニスが完全に勃起し、カウパーがだらだらと溢れ出た。ペニスだけでなく全身が、触れられてもいないのに疼く。
肛門に吸い付いていた司祭様が歓喜の声を上げた。
「おぉぉっ! やっと薬がきいていたな!! おおお……噂には聞いていたが……! 本当に尻から愛液が溢れている……!!」
司祭様は痙攣している僕を仰向けにして、まじまじと見つめた。
「ナスト、ナスト! 気分はどうだ? わしに何をしてほしい!?」
「あっ……あぁっ……」
先ほどまで記憶をたどり必死に興奮しようとしていたのに、今の僕は快感を求めるあまり、ヴァルア様ことを考える余裕すらなくなっていた。
とにかく楽にしてほしい。射精をしたい。肛門にペニスを挿れてほしい。
その思いは全て声に出ていたようだ。司祭様は恍惚の表情を浮かべ、大きく頷いた。
「ああ! もちろん、わしのナストのお願いだ。おねだりならなんでも聞いてあげよう」
「早くっ……早くっ……!!」
「もちろんだ。ほら、ナストの大好きな、わしのペニスだぞ!!」
「あぁぁぁっ!!」
挿入された瞬間、頭の中で火花が飛び散った。中が痙攣し、ペニスからは精液が噴射する。
「おほっ、おほぉぉっ!! ナストッ、わしのペニスがそんなに気持ちいいか!?」
「きもちいっ、きもちぃぃっ……!! はやく、もっと……っ」
興奮のあまり、司祭様は涎を垂らして腰を振っていた。
「はぁっ……!! はぁぁっ!! おっ、おぉぉっ、あっ、おっ、んごぉぉっ!!」
「あぁぁっ、あっ、あぁぁっ!! きもちいっ、そこ、そこきもちいよぉっ!!」
「ナストの中っ……!! いつもよりもヌルヌルしていてより気持ちいいぞっ、おっ、腰が止まらんっ、止まらんっ、イクッ、イクッ!!」
中に精液を注ぎ込まれると、今まで感じたことのない悦びが全身を襲った。一度手に入ると、もっと欲しくなるような麻薬的な悦びだった。
「もっとっ……司祭様ぁっ……もっとぉ……!!」
「んほっ、ああ、ああいいとも!! ほれ、もう一度だ!!」
「あぁぁぁっ!!♡」
二度目の精液を受けても僕は満足できず、自ら司祭様の上に乗って腰を振ったそうだ。司祭様のペニスがもう勃たなくなっても、口に含んで懸命に勃たせようとしていたらしい。
……と、翌朝司祭様に教えてもらった。どうやら僕はその薬に弱いらしく、本来ならば二時間程度しか効かないのに、朝方まで正気を失っていたようだ。
朝目が覚めたとき、僕の体は自分と司祭様の体液でベトベトになっていた。そんな僕を抱きしめ、司祭様が言った。
「これから毎晩、あの薬を使おうな、ナスト」
確かに、あの薬は儀式において効果てきめんだった。
その代わり、僕の人としての尊厳が欠けたような気がした。
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