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第四章

ルースとネレウス

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 次の日の朝、モルガーナはいつもより早く起こされた。
 着る服も食べた朝食もいつもと同じものなのに、やはり彼女は落ち着かない。
 彼女は朝の支度を整えた後、城の階段を下った。
 初めてこの城に来た時の道を遡る。 
 
 船着き場の洞穴には、一艘の帆船が停泊している。
 船出の準備を忙しなく行う人々の中に、モルガーナは見知った背中を見つけた。
 セシリオだ。
 彼もモルガーナに気がつくと恭しく頭を下げた。
「セシリオ、カルロス様はどちらかしら?」
 モルガーナに声をかけられたセシリオが、頭を上げて彼女に停泊中の船を示す。
「カルロス様はすでに他の船でお出になられています。さ、モルガーナ様もどうぞ船にお乗りください。出発の準備がもうすぐできますので」
 モルガーナは彼に言われた通りに、船に乗り込んだ。
 船はすぐに出発した。 
 
 柔い朝の光を浴びながら、モルガーナの乗る船は進んだ。
「ねぇ、この船はどちらへ向かうの?」
 モルガーナは甲板の手すりに体を預けながら、傍らのセシリオに訊ねた。
「この国最東端の小島ですよ。モルガーナ様がネレウスからいらっしゃった際に寄られた砦がある島です。ネレウスからルースに向かうには、そこへ迂回する方が安全なんです。真っ直ぐ行けば、岩礁にぶつかってしまい、船が沈没してしまうからです」
「もしかして私が乗っていた船が沈没したのは、それが理由?」
「えぇ。予めネレウスに伝えておくべきことでしたが、どうやらエンリコ様の策略で伝え損ねてしまったようです。モルガーナ様、その折は怖い思いをさせてしまってごめんなさい」
「いいのよ、セシリオは謝らないで。貴方は悪くないもの」
  項垂れるセシリオに、モルガーナは優しく微笑んだ。
 そんな彼女が思い出すのは、海に沈む自分を引き上げようと手を伸ばすカルロスの姿。
 思えばあれからずっと、カルロスに助けられてばかりだ。
 最初こそ高圧的で恐ろしくもあった彼だったけれど、今となってはむしろ彼の側こそ居心地が良く感じる。
(カルロス様……)
 だからこそ、その憂いを、そして彼が抱えるものを知りたくなってきたのだ。
 モルガーナは意を決して、船へと乗り込んだ。
 
 モルガーナが船に乗ると、セシリオが言った通り船はすぐに動き出した。
 甲板の上で潮風を浴びながら、モルガーナは船の進行方向を見据えていた。
 柔い朝の陽光が気力を戻した頃、彼女の視界に島が浮かび始めた。
 その島が近づくにつれ、彼女はその島に見覚えがあることに気がついた。
 島を覆う砦。
 それはネレウスから乗った船が沈没した時に逗留した場所だった。
 そういえば、この島はどのような場所だったのだろう。
 その答えは、すぐに姿を現した。
「……」
 島に上陸したモルガーナは、文字通り絶句した。
 本島と同じような、真っ白い壁の建物には誰も住んでいない。
 それどころか、まるで戦争でもあったかのように荒れ果てていた。
 露店の商品は散乱し、窓から覗く居間は家具が散乱している。
 ──まるで、戦争があったかのように荒れている。
 そんな島を巡回していたのであろうルースの兵が、船の周りへと集まってきた。
 そして船に乗ってやってきた兵と、向かい合って整列を始めた。
「今日はこの島を警備する兵の交代を行う日だ。一月置きに行っている」
 荒れた街をを呆然と見つめるモルガーナの肩に、後ろから手が置かれた。
 振り返るとそこには、カルロスがいた。
 彼は街を一頻り眺めると、モルガーナを連れて海岸線を取り囲む砦に向かって歩きだした。
 モルガーナはその背中に、黙ってついていった。
 いつもより強張った表情の彼に、モルガーナはそうする他になかった。
 二人が入ったのは、かつてモルガーナが逗留した部屋だった。
 部屋の窓を見下ろせば、蒼い海が無言で広がっている。
 カルロスはその窓から海を見下ろして、モルガーナはその二、三歩後ろに立った。
「……数年前より、ネレウスとルースは、交易を巡って亀裂を生じさせていた。それまでルースは年に数える程度しか他国の船を入れることはなかった。しかしルースで硝石が採掘できることが分かると、ネレウスは積極的に交易を求めるようになっていった」
 突然、故郷の名が聞こえて、モルガーナは胸がぎゅっと締まるような感覚を覚えた。
 カルロスは彼女に背を向けたまま続けた。
「この島にネレウスの船が上陸したのも、ちょうどそんな折りだった。次第にネレウスからの要求が大きくなり、条約の見直し──無論、ネレウスが有利になるようなものだ。それにこちらがそれに応じられないと返すと武力を誇示するようになっていった。いくつもの船団が、この島の周辺を巡洋するようになっていった。」
 モルガーナは思わず後ろを振り返った。
 そこには砦の壁があるばかりだったけれど、モルガーナはその向こうにさっき見た、荒れた街の景色を思い浮かべる。
「まさか……そんな……」
 そうして自分の予想が、外れていることを願いながら言った。
 カルロスはモルガーナを一瞥しただけで、また視線を海に戻した。
 けれどその瞳の色が哀しみを映していることは、彼女にも気づけた。
 カルロスのその反応が、モルガーナの懸念を肯定するものだということにも。
「初めのうちは、『調査』を名目にこの辺りの島の周辺を巡洋していただけだった。しかし次第に島にまで上陸するようになりだした。ある日そんなネレウスに島民が抗議の声を上げたところ、それ火種となりルースの民とネレウスの兵の間で乱闘になったそうだ。これを快く思わなかったネレウスは、今度は調査隊の護衛という名目で更に軍船を送り込むようになり……いよいよルースの民が安全に住める場所ではなくなってしまったのだ。次に彼らが上陸すれば、いよいよこの島はネレウスに支配されてしまうだろうな」
 淡々と語るカルロスの言葉を、モルガーナは黙って聞くことしかできなかった。
 そうして、ルースの城で会った子供達のことを思い出すのだった。
 ──故郷の父、かつての婚約者のことも。
「モルガーナ、お前には……そんな二国の架け橋になって欲しかった」
「私が……ですか……?」
「ルースとネレウスの王族が婚姻関係を結べば、二国は協力関係が築ける……そう思っていた」
 モルガーナはそう語るカルロスの背中が、いつもより小さく見えたような気がした。
 そんなカルロスは振り返って、モルガーナを見下ろす。
「過日は弟がすまなかった。……謝罪をすれば済むというものではないのは承知している」
「いえ、あれは……」
 モルガーナはあの時のエンリコの様子を思い出す。
 微かに震える、自分に向かうナイフの切っ先を。
「あの方は……血を流れるのを望んでいるようには思えませんでした。むしろ争いや諍いを恐れているような、そんな気さえしました。きっと何かに追い詰められて、あのようなことをしたのですよね?」
 カルロスは少しの間、彼女の瞳を見つめた。
 その瞳の中には、自分を傷つけようとした相手への恨みは一切なかった。
 それどころか、エンリコに対する憐憫ばかりが湛えられている。
「……あれも、私利私欲で動いたのではなかろう。彼の国に住む場所を追われた者の恨みを、代わりに背負おうとしたのだ。それは俺が掬いきれなかった恨みだ。だがあの恨みで国を動かせば破滅を呼ぶ。国力なぞルースはネレウスに遠く及ばん。何より戦になれば、双方ともに人が死ぬ。例えエンリコが……民がそれを望んでいたとしても、俺はそれを止める義務がある。それが、俺の王としての務めだ。どんな手を使ってでも……」
 ふと、モルガーナの頬にカルロスの指が伸びかけて……下ろされてしまった。
 モルガーナは頬に触れなかった温もりを、無性に恋しく思った。
「全ては俺が、安易に協力関係をと推し測ったツケだ。お前を故郷から引き離したこと、今更になって後悔している。今ならエンリコの言うことも理解できる。……といっても、お前からしてみれば赦せることではないだろうが」
 カルロスはモルガーナの側を通り抜けると、部屋の出口を潜る。
「全ては俺の浅はかさ故だ。民の恨みを、お前の気持ちを蔑ろにした故だ。どちらのことも、俺は甘く考えていた。その悲しみはいずれ償わさせてもらいたい。……しばしの間待っていてくれ」
 カルロスの後を、モルガーナは黙ってついていった。
 この心の寂しさは何だろう。
 自分の故郷が生んだ惨劇への悔恨でも、国を追われたルースの民への後ろめたさでもない。
 胸を通り抜ける隙間風の正体を、モルガーナは探り続けるのだった。 
 
 モルガーナとカルロスは、同じ船に乗って帰路へとついた。
「……私は、悲しんでなどいません」
 彼女がそう言ったのは、再びカルロスと二人きりになった時だった。
 二人が乗った船はモルガーナをルースの地に運んだ物で、王族のために誂えられたベッドに彼女は見覚えがあった。
 初めてカルロスに乱された場所でもある。
 そこで彼女は、カルロスの背中に語りかけた。
「恨みもしません。両国の和平に、この身を捧げられることを嬉しく思います。ただ……今はただ……」
 その時になって、彼女は心に吹く隙間風の正体を掴むことができた。
「貴方の御身が心配なのです」
 故郷であるネレウスがしたこと、そのせいで住む場所を追われたルースの民。
 どれもこれも、考えただけで胸が締め付けられる。
 そしてそれを背負うのは、王たるカルロスの責務である。
 そんなこと、モルガーナも承知している。
 しているけれど、それでも一人の人間であるカルロスを、一人の人間として心がかりにするのだった。
「モルガーナ……」
 自分を見下ろすカルロスの肩に、モルガーナは腕を回した。
 いつの間にかその温もりは、肌に馴染んでいた。
 ふと、カルロスの体から緊張が抜けたような感覚を、モルガーナは感じ取った。
 そうして彼女を抱き締め返す腕は、最早王として妃を庇護するものではなかった。
 そこは一人の人間が、一人の人間を想い合うだけの場所だった。
 モルガーナの体が、なし崩しにベッドへと倒される。
 彼女はされるがままそれを受け入れた。
 恐怖など勿論なく、むしろ彼が自分を求めていることが心底嬉しかった。
 モルガーナを見下ろす瞳は、慈愛に満ちたものだった。
 それを確かめたモルガーナは、瞼を閉じる。
 それと同時に彼女の唇を、カルロスはそっと塞ぐ。
 柔らかいキスだった。
 優しいキスだった。
 それを思うのは、またカルロスも同じ。
 温もりに包み込まれるような感覚に、二人は身を委ねるのだった。
「……ん……はぅ……」
 その温もりはいつしか、激情の炎へと変化していく。
 モルガーナはカルロスの肩に腕を回して、自分の体に引き寄せた。
 カルロスはそんな彼女の肌を触れていく。
 布越しに与えられる鈍い感触が、モルガーナにはもどかしかった。
 もっと深く触れてほしい──そんな願望に、彼女は身を悶えさせた。
 そんな彼女の訴えを聞いたのか、カルロスは自分の唇から彼女を解放する
 そうして、モルガーナの服の腰紐に手をかけた。
 はらりとシーツの上に彼女の着衣が広がって、黎明の光が入る船室に、モルガーナの白い肌が露となる。
 それからカルロスは、その肌に優しく触れる。
「あっ……」
 モルガーナの括れに腰骨を、その手は優しく撫で付けられる。
 くすぐったいような、それでいて優しく包み込んでくるような温もりは、モルガーナは安心感を覚えている。
 微睡みさえも覚える程に。
 その手が次第に、モルガーナの大きな膨らみの方へと伸びていく。
 彼の指先がその頂きに触れた途端、まるでその奥の炎が大きく燃え上がるような感覚を覚えるのだった。
「ん、カル、ロス様……」
 そんな彼女の様子を、どこか愛しそうに見つめた。 
 彼女の僅かにとろけだした表情に、カルロスは自身の内に燃え上がる欲望を自覚する。
「愛らしいな、表情も声音も……いっそこのままの姿を留めておいてしまおうか」
 カルロスは指先で、モルガーナのたわわの頂きをつつく。
 そんな僅かな感触でも、彼女の体は反応してぴくりと跳ねてしまう。
 もし本当に致すことなく捨て置かれてしまえば、どうなってしまうだろう。
「そんな、いじわる……」
 モルガーナの体は更なる快楽を求めて、身を捩らせている。
 彼の触れた温もりを覚えた頂は、早くそれが欲しいとばかりに、カルロスの前で揺れている。
「あぁ、意地の悪いことはしない。お前の欲しいもの、全て与えてやるつもりだ」
 そう言うや否や、カルロスはその片方に吸い付いた。
「ひゃ、あぁん! ……あ、もっ、だめぇ」
「求めたのは、そちらだろう? それともっ、本当は嫌だったか?」
 モルガーナの固くなった乳首を、唇で挟み舌で嬲りながらカルロスはその陶酔に身を捩らすモルガーナを可笑しそうに見上げている。
「だめ、じゃない、です……でも、あぁっ!」
 自分がはしたなく乱れていく様には、未だに不安があった。
 夫が相手なはずなのに、それでも快楽に身を委ねることに対する罪悪感がぬぐえないのだ。
 けれどカルロスは、そんなモルガーナのことが一層いじらしく思うのだった。
「……あっ、あぁんっ! も、そんなぁ……激しっ、あっ、ああ!」
 カルロスは一層激しくその果実を啄んだ。
 頂をすっかり口腔内に収めると、彼の舌が荒ぶる獣の如くに襲いかかるのだった。
 獣は与えられた果実を、欲望のままに転がした。
 ぬくい口腔内で時に優しく撫で付けられ、時に強く吸い付かれ……。
 されるがままに身悶えるモルガーナではあるけれど、そんな彼の姿が小さく見えた。
 まるで小さな幼子が、温もりに甘えるようなそんな姿を彼の中に見いだしていたのだ。
 いつも毅然と振る舞う彼が、たった一時の間でも憩いでくれているのだと、モルガーナの心もまた弛められるのだった。
 モルガーナは思わず、彼の銀の髪に指を通した。
 彼女の指に通された髪が、さらりと揺れる。
 カルロスはただ一時の安寧を覚えて目を閉じる。
 いつからかモルガーナにとって、その行為は恐ろしいものではなくなっていた。
 一頻り彼女に触れたカルロスは、身を起こして彼女の全身を見下ろす。
 カルロスにすっかり融かされたモルガーナ。
 赤く火照った頬に、カルロスの像を捉えて潤む瞳。
 投げ出された四肢は、快楽の余韻が走りぴくりと跳ねる。
 そしてそれを見下ろすカルロス自身も、彼女の痴態を前に鎌首をもたげさせていたのだった。
 そんな彼女の腿を開かせて、自身の上体を滑り込ませた。
 モルガーナはカルロスにされるがまま。
(カルロス様……)
 彼の様子を、モルガーナは身も心も切なくさせながら見守っていた。
 彼の銀の髪が、窓から射し込む陽光に照らされて輝いている。
 瞳は燻る情欲の炎を湛えながらも、慈愛の色を宿しモルガーナを見つめている。
 そんな様子は、モルガーナの目にただただ眩しく映った。
 カルロスはいよいよ蜜を流すモルガーナの泉に、肉の杭を押し充てた。
 先が掠めただけだというのに、泉はきゅうきゅうと喜びですぼめられてしまう。
 モルガーナの歓待は、カルロスにもしっかりと伝わっている。
「モルガーナ」
 ふと、カルロスは囁くように王妃の名前を呼んだ。
 甘く低く、優しい囁き。
「カルロス、様……」
 モルガーナの鼓膜を震わした声は、彼女の疼く身体を安らぎと情熱で包んだ。
「ぁ……」
 僅かばかり息を飲むモルガーナ。
 その瞳はカルロスと同じように、安らぎと情欲の炎を灯していた。
 二人が互いの気持ちを確かめあった瞬間だった。
 否や、カルロスは一息にモルガーナを刺し貫いた。
「あっ──、あぁ、んっ……」
 カルロスの滾りが、モルガーナのうち震える奥底をいっぱいに満たした。
 それを受け止めるモルガーナは、窮屈さに僅かばかり顔を歪めた。
 けれどそれを上回る程の多幸感も、同時に彼女を苛むのだった。
 カルロスに捕えられたモルガーナの内壁は震えていた。
 刺し貫かれたその質量は、モルガーナにとってまだ重たく苦しいものだった。
 けれどそれと同時に沸き上がってくる、稲光のような快楽に彼女はすっかり染め上げられるのだった。
「……、すごい締め付けだ……っ、すっかり淫靡な体になったな……」
「そ、そんなこと……ぁうっ、う」
 勿論、カルロスからそのようなことを言われるのも、モルガーナは未だに恥ずかしかった。
 けれど彼の濡れた吐息や、汗ばむ肌、それから慈しむような視線はモルガーナの頭の中を愉悦でいっぱいにさせるのだった。
「カルロス、様ぁ……あっ、どうか私で……安らいでっ……んん……」
「あぁ、勿論だとも……お前も、よくしてやる」
 そう言うとカルロスは、ゆっくりと抽送を始めた。
 合わさった二人の恥部から、じゅぷじゅぷと水の音が流れてくる。
 自分の奥底にカルロスの逞しさを打ち付けられる度、激しい恍惚感がモルガーナを襲う。
 彼女は自らの腰を揺らして、もっと奥へと彼を誘わずにはいられなかった。
「カルロスさまぁ……っ、カルロスさまっ……」
「モルガーナ、中が酷く締め付けて来るっ、っう……」
 突如、その時は来た。
「あっ、ああっ……いやぁあ!」
 カルロスを咥えたモルガーナは、遂に身を仰け反らせて一際強くカルロスを締め上げた。
 全身に喜びが駆け巡り、頭の中が真っ白になる。
 それと同時にカルロスもまた低い唸り声を上げ、モルガーナの奥底へ精を解き放つのだった。
 モルガーナは熱波の渦巻く頭で、中に解き放たれた白濁を夢想した。
 そんな彼女の髪を、カルロスはそっと撫でた。
(これでは、私ばかりが幸せだわ……)
 カルロスは自分の体で、心を休ませることができただろうか。
 心地よい掌の温もりを受けながら、モルガーナは少しだけ不安になった。
 彼女は眠たい眼で、自分を見下ろす慈悲深い色の瞳を見上げた。
 モルガーナはそんなカルロスの肩に、細い腕を回した。
 そうして自分に引き寄せる。
 カルロスはそれを受け入れて、彼女の肩口に額を添えた。
(どうか貴方に、一時の安寧がありますように……)
 そう願いながら、モルガーナはゆったりと眠りに落ちた。
 カルロスの深い吐息を聞きながら。 
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