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おてんばプロレスとの聖なる闘い
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その翌月のこと。会場を提供しているニューおてんば温泉の社長(スーパーアサコの父親である)の推しもあり、イケメンプロレス vs おてんばプロレスの一戦が実現した。男子と女子とではハンディーが大きすぎるのでは‥‥という声もあがったが、ジュリー自身は男子だったし、おてんばプロレスのエース格であるRKクイーンやスーパーアサコは、男子も顔負けの技とテクニックの持ち主だ。男子も女子も関係ない。真っ向勝負でベストを尽くすことこそが、おてんばプロレスへの仁義でもあると青山は考えていた。
男の娘(こ)戦士・ジュリーとやる前に、「まずは私を倒してみろ」といい、目の前に立ちはだかったのは、おてんばプロレスのツートップのうちのひとりスーパーアサコであった。熱烈なハートはもちろん、体格的にも男子に引けをとらないスーパーヘビー級のアサコは、学生プロレスに参入したてのイケメンズにとって、難敵中の難敵だった。
試合の当日。「女子プロレスに男子が殴り込み。本当に強いのはどっちだ!?」という場内アナウンスに、おてんば市の郊外にあるニューおてんば温泉の宴会場がワーッと沸いた。観客は三百名の満員御礼。後ろの方には立ち見客もいた。プロ顔負けの場内アナウンスを務めていたのはニューおてんば温泉の社長で、驚いたことにレフェリーも兼任していた。
大会自体はチャリティーを目的としたものだったが、おてんば温泉での世紀の一戦を観たいと思っている人たちの飲食がこれまたすごい。「生ビールおかわり」とか「味噌ラーメンふたつ」とか、オーダーの数が半端ではないのだ。ニューおてんば温泉の社長のはからいにより、今日は売上の五パーセントが地元の新聞社を通じて、ユニセフに寄付されることになっていた。
因縁があるのという点では、青山とジュリーの対決の方がおもしろかったのかもしれないが、おてんばプロレス側から時期尚早という判断が下されていた。じらしてじらして、ファンの想いがピークに達したときこそ、マッチメイクのチャンスなのだろう(たぶん)。
会場はお祭り騒ぎ。「お姉ちゃ~ん、野郎っこのおちん〇ん、ぶっ潰していいんだぞー」とかなんとか、予想通り下衆な野次も聞かれたが、レスラーとして先輩格のアサコ自身、「イケメンのおちん〇んをぶっ潰してやるから」と、やたらめったら威勢のいい声。
えー。ティーンエイジャーの女子がいうセリフじゃないでしょと思いながら、アサコのセコンドにはRKクイーンとジュリーが、そして青山のセコンドには相棒の中村がついた。
「バ~~~ン」というバケツ(もちろんゴングの代用品である)の音とともに、アサコが奇襲攻撃に打って出た。なんと本当に青山のあそこを蹴り飛ばしたのだから、これはたまらない。演技とは思えないような態度で、悶絶を続ける青山。女子のアサコらにはわからないと思うが、本気で本気で本気で痛いのだ。
「三分で料理してやる」とばかりに、にアサコは青山への急所攻撃を続けた。珍しく「やっちゃえ、アサコさん」とわめき散らしながら、リング替わりのマットレスをバンバンと叩きまくるジュリーに呼応するかのように、一気呵成に攻めまくるアサコ。「ノーノ―」といいながら、レフェリーが制するファイブカウント以内で、巧妙に青山のことを痛めつける。
得意のバックドロップからスコーピオンデスロック。青山がもがき苦しんでいるのを見てとると、自らスコーピオンを解き放ち、最後はアサコズラリアットの二連発で仕とめた。四分十一秒でアサコの完勝だった。
すぐさまリングにあがって、アサコを抱擁したのは、試合中ずっと感情を爆発させていたジュリーである。そのジュリーを相手に、中村がいちゃもんをつけ、かつて同じ釜の飯を食っていた者同士が火花を散らした。場内を覆いつくす「おてんば」コール。どちらかというと、オッさん連中が多いせいか、「イケメン」コールを送る観客は、ほんのひと握りしかいなかった。
「そんなにジュリーとやりたいなら、まず私を倒してからにしろって。今日はダブルヘッダーでも構わない。イケメンだか何だか知らないけど、さぁ、かかってこいよ。ほら、男だろ、お前」といって挑発しまくりのアサコを相手に、今度は相棒の中村が相まみえることになった。
急きょ組まれたイケメン中村 vs スーパーアサコの番外マッチ。ゴングが打ち鳴らされた瞬間、アサコがここぞという場面でしか出さない新兵器の竜巻谷落としをくり出した。またの名をスペース・トルネード・アサコといい、柔道の大外刈りとプロレスのラリアットを組み合わせた大技中の大技であった。
ドバーンという衝撃が走る中、野球で鍛えあげられた中村の全身がリングに打ちつけられた。そこへアサコの巨体がかぶさると、あっ気なくスリーカウントが入った。
ワン、ツ―、スリー。なんとわずか二十四秒でアサコの激勝であった。すかさずレフェリーがアサコの右手をあげると、怒涛のような「アサコ」コールが巻き起こった。
つ、強い。強すぎる。おてんばプロレスの超獣・アサコとの力の差は歴然だった。不意討ちを食らって倒れ込んだ中村のことを、青山が介抱した。軽い脳震盪なのか、しきりに首を振っている。
「くそーっ、今日は完敗だったが、次は僕たちイケメンプロレスの強さを見せつけてやるからなぁ」といい放つと、青山と中村は潔くリングをあとにした。「おてんばプロレスとの対戦は、僕たちの第二の甲子園だ」といい、怪気炎をあげる青山らに、客席の一部から「いいぞー」という声がはじけ飛んだ。潔いイケメンの姿に、心を揺さぶられたファンもいたのだ。
「イケメンよりも、俺(おら)ぁ、つけ麵が食いたいっちゃ」とかなんとか、生ビールでほろ酔い加減の親父ジョークにドッという笑い声が起こり、思わず青山がこけそうになった。まぁ、知名度では、おてんばプロレスに叶うはずはなかったが、いつの日か必ず彼女らを超えてみせる――そんな熱い想いを胸に、イケメンプロレスの聖者たちは新たな第一歩を踏み出したのである。
超の字がつくほどのローカルデビューではあったが、それ以来、ニューおてんば温泉を会場として、おてんばプロレスの試合に出場できたことは、青山や中村の大きな自信につながっていた。ふだんの学生生活の中では、あまり大っぴらにしてこなかったのだが、ラクロス同好会に所属している同じクラスの女子(これがまた、かわい子ちゃん)に「僕たちプロレス団体をつくったんだ」という話をしたところ、「あっ、応援に行く。絶対に行く」といい張り、ちょっとした騒ぎになる始末。女子に騒がれるのは、悪い気がしなかった。
ラクロス同好会のアイドルの名前は典子で、正しくは「のりこ」と読むのだが、まわりからは「てんこ」という愛称で親しまれていた。茶髪をポニーテールにまとめて、ミニスカートがよく似合うその容姿からは、女子力満点のフェロモンがまき散らされていた。
「うん、わかった。しばらく試合の予定はないけど、スケジュールが決まったら声をかけるからさ」なんて、やたらクールな態度を装った青山だったが、クラスメイトの女子も応援してくれていると思うと、俄然やる気が出てきた。
「今度試合に出るときは、コスチュームにも凝ってみようかな」なーんて、男子特有のフェロモン出しまくりの自称・イケメン軍団。今はまだ既存の団体-おてんばプロレス-の人気にぶら下がっているようなものだが、いずれはイケメンプロレスだけで会場を一杯にしてみせると、青山と中村は心に誓うのであった。
男の娘(こ)戦士・ジュリーとやる前に、「まずは私を倒してみろ」といい、目の前に立ちはだかったのは、おてんばプロレスのツートップのうちのひとりスーパーアサコであった。熱烈なハートはもちろん、体格的にも男子に引けをとらないスーパーヘビー級のアサコは、学生プロレスに参入したてのイケメンズにとって、難敵中の難敵だった。
試合の当日。「女子プロレスに男子が殴り込み。本当に強いのはどっちだ!?」という場内アナウンスに、おてんば市の郊外にあるニューおてんば温泉の宴会場がワーッと沸いた。観客は三百名の満員御礼。後ろの方には立ち見客もいた。プロ顔負けの場内アナウンスを務めていたのはニューおてんば温泉の社長で、驚いたことにレフェリーも兼任していた。
大会自体はチャリティーを目的としたものだったが、おてんば温泉での世紀の一戦を観たいと思っている人たちの飲食がこれまたすごい。「生ビールおかわり」とか「味噌ラーメンふたつ」とか、オーダーの数が半端ではないのだ。ニューおてんば温泉の社長のはからいにより、今日は売上の五パーセントが地元の新聞社を通じて、ユニセフに寄付されることになっていた。
因縁があるのという点では、青山とジュリーの対決の方がおもしろかったのかもしれないが、おてんばプロレス側から時期尚早という判断が下されていた。じらしてじらして、ファンの想いがピークに達したときこそ、マッチメイクのチャンスなのだろう(たぶん)。
会場はお祭り騒ぎ。「お姉ちゃ~ん、野郎っこのおちん〇ん、ぶっ潰していいんだぞー」とかなんとか、予想通り下衆な野次も聞かれたが、レスラーとして先輩格のアサコ自身、「イケメンのおちん〇んをぶっ潰してやるから」と、やたらめったら威勢のいい声。
えー。ティーンエイジャーの女子がいうセリフじゃないでしょと思いながら、アサコのセコンドにはRKクイーンとジュリーが、そして青山のセコンドには相棒の中村がついた。
「バ~~~ン」というバケツ(もちろんゴングの代用品である)の音とともに、アサコが奇襲攻撃に打って出た。なんと本当に青山のあそこを蹴り飛ばしたのだから、これはたまらない。演技とは思えないような態度で、悶絶を続ける青山。女子のアサコらにはわからないと思うが、本気で本気で本気で痛いのだ。
「三分で料理してやる」とばかりに、にアサコは青山への急所攻撃を続けた。珍しく「やっちゃえ、アサコさん」とわめき散らしながら、リング替わりのマットレスをバンバンと叩きまくるジュリーに呼応するかのように、一気呵成に攻めまくるアサコ。「ノーノ―」といいながら、レフェリーが制するファイブカウント以内で、巧妙に青山のことを痛めつける。
得意のバックドロップからスコーピオンデスロック。青山がもがき苦しんでいるのを見てとると、自らスコーピオンを解き放ち、最後はアサコズラリアットの二連発で仕とめた。四分十一秒でアサコの完勝だった。
すぐさまリングにあがって、アサコを抱擁したのは、試合中ずっと感情を爆発させていたジュリーである。そのジュリーを相手に、中村がいちゃもんをつけ、かつて同じ釜の飯を食っていた者同士が火花を散らした。場内を覆いつくす「おてんば」コール。どちらかというと、オッさん連中が多いせいか、「イケメン」コールを送る観客は、ほんのひと握りしかいなかった。
「そんなにジュリーとやりたいなら、まず私を倒してからにしろって。今日はダブルヘッダーでも構わない。イケメンだか何だか知らないけど、さぁ、かかってこいよ。ほら、男だろ、お前」といって挑発しまくりのアサコを相手に、今度は相棒の中村が相まみえることになった。
急きょ組まれたイケメン中村 vs スーパーアサコの番外マッチ。ゴングが打ち鳴らされた瞬間、アサコがここぞという場面でしか出さない新兵器の竜巻谷落としをくり出した。またの名をスペース・トルネード・アサコといい、柔道の大外刈りとプロレスのラリアットを組み合わせた大技中の大技であった。
ドバーンという衝撃が走る中、野球で鍛えあげられた中村の全身がリングに打ちつけられた。そこへアサコの巨体がかぶさると、あっ気なくスリーカウントが入った。
ワン、ツ―、スリー。なんとわずか二十四秒でアサコの激勝であった。すかさずレフェリーがアサコの右手をあげると、怒涛のような「アサコ」コールが巻き起こった。
つ、強い。強すぎる。おてんばプロレスの超獣・アサコとの力の差は歴然だった。不意討ちを食らって倒れ込んだ中村のことを、青山が介抱した。軽い脳震盪なのか、しきりに首を振っている。
「くそーっ、今日は完敗だったが、次は僕たちイケメンプロレスの強さを見せつけてやるからなぁ」といい放つと、青山と中村は潔くリングをあとにした。「おてんばプロレスとの対戦は、僕たちの第二の甲子園だ」といい、怪気炎をあげる青山らに、客席の一部から「いいぞー」という声がはじけ飛んだ。潔いイケメンの姿に、心を揺さぶられたファンもいたのだ。
「イケメンよりも、俺(おら)ぁ、つけ麵が食いたいっちゃ」とかなんとか、生ビールでほろ酔い加減の親父ジョークにドッという笑い声が起こり、思わず青山がこけそうになった。まぁ、知名度では、おてんばプロレスに叶うはずはなかったが、いつの日か必ず彼女らを超えてみせる――そんな熱い想いを胸に、イケメンプロレスの聖者たちは新たな第一歩を踏み出したのである。
超の字がつくほどのローカルデビューではあったが、それ以来、ニューおてんば温泉を会場として、おてんばプロレスの試合に出場できたことは、青山や中村の大きな自信につながっていた。ふだんの学生生活の中では、あまり大っぴらにしてこなかったのだが、ラクロス同好会に所属している同じクラスの女子(これがまた、かわい子ちゃん)に「僕たちプロレス団体をつくったんだ」という話をしたところ、「あっ、応援に行く。絶対に行く」といい張り、ちょっとした騒ぎになる始末。女子に騒がれるのは、悪い気がしなかった。
ラクロス同好会のアイドルの名前は典子で、正しくは「のりこ」と読むのだが、まわりからは「てんこ」という愛称で親しまれていた。茶髪をポニーテールにまとめて、ミニスカートがよく似合うその容姿からは、女子力満点のフェロモンがまき散らされていた。
「うん、わかった。しばらく試合の予定はないけど、スケジュールが決まったら声をかけるからさ」なんて、やたらクールな態度を装った青山だったが、クラスメイトの女子も応援してくれていると思うと、俄然やる気が出てきた。
「今度試合に出るときは、コスチュームにも凝ってみようかな」なーんて、男子特有のフェロモン出しまくりの自称・イケメン軍団。今はまだ既存の団体-おてんばプロレス-の人気にぶら下がっているようなものだが、いずれはイケメンプロレスだけで会場を一杯にしてみせると、青山と中村は心に誓うのであった。
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