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異世界生活編
80.第一段階クリア
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数日俺は自分の魔力をどう感じたらいいのか試行錯誤していたんだけど、闇雲にただ念じててもだめだなと思ってあっちの世界の知識を上手く応用できないかなと思考を切り替えた。
とはいえ、あっちに魔法があるわけじゃないからアニメやらゲームやら色んなもののいいとこ取り……ってわけじゃないけど、まあでもそれに似た感じでいろいろ試してみた。結果、一番手応えを感じたのが『気功』みたいな感じ? 丹田に集中して~みたいなやつ。
自分の身体という器にうっすい少なーい魔力が散らばってると仮定して、それを感じるには濃くしなきゃいけないんじゃないかなって思ったから、一旦丹田に集めるようなイメージでね。これは全部俺の妄想ではあるんだけど。でも腹の下が温かくなってくる気がするんだよ! ルイの魔力のほわほわと似た感じの。
「やっぱ俺の魔力が少なすぎて感じにくいってことで合ってるんだよな……本当に集まってるのかは不明だけど集めるイメージすると温かくなるし。イメージやめるとなくなる気がするから……」
夜、部屋に戻ってからが俺の宿題タイム。
魔法の練習を始めてからは昼はお手伝いと鍛錬、夜は寝るまでの時間で魔力を感じるためのいろんな実験をしてるような感じだった。でも、この感じだったらヴァンに言ってみてもいいんじゃないかな? 数日試してみて毎回同じような感覚になるから偶然でもなさそうだし、ここまで頑張ったんだからこれが間違ってても少しはヒントとかくれてもいいと思う。
◇◇◇
いつもの鍛錬のあと、ヴァンに時間を取ってもらった。もちろんルイもいてくれる。
「おヘソの下に魔力を集めるのをやってみるね。俺は多分これできてると思ってるんだけど、客観的に見て教えて欲しい」
「いいよー。じゃあ、できたと思ったら声かけてね」
「まだ気が散ると上手くできないから、できたと思ったときに手を挙げるよ」
俺は地面に胡座をかいてお腹に両手を当てて集中を始める。部屋での練習がこのスタイルだったから、今はまだこれじゃないとピンとこないんだよね。座禅とか瞑想とか気功とかなんか色んなものをごちゃ混ぜにして作り上げちゃった俺のスタイル……。
自分の内側を意識して、ぎゅーっと集めていく感じ。俺が色々試した中で一番良かった気功っぽいスタイルを、もっと成功しやすくしたのは意外にも科学的なイメージ。昔、理科の実験でやっただろ? フラスコに栓をして空気を引くと内側が曇るやつ。あんな感じでお腹に置いた手でグッと引っ張る想像とそれによって自分の内側に雲ができるような想像をする。
ほら、ジワジワと温かくなってきた……大丈夫かなと思えたところで集中が切れないようにそっと右手を挙げた。
そしたら、ポンと頭に手が乗った。目を開けると満面の笑みを浮かべるヴァンとジッと俺を見てるルイがいた。
「上出来上出来!」
「イクミはやっぱりすごいな」
褒められた! って思った瞬間お腹の温かいのは消えちゃったけど、とりあえずはヴァンの宿題をクリアできたみたいだ。ちょっと時間はかかったけどちゃんとできたのが嬉しい。
「じゃあね、次! 魔力を移動させてみようね」
「は?」
「お腹に集めただけじゃ魔法使えないでしょ? 魔力コントロールのいい練習になりそうだから、お腹に集めた魔力を散らさないように手の平に移動させてみて。これが次の宿題ね」
「えええ……」
それはちょっと難易度高すぎないかな。やっとなんとかこれで感じられてるかな? ってとこにきたばかりなのに。
「オレはね、イクミにはこっちの常識を押しつけたくないんだよね。イクミの思うとおりに自由にいろいろ試してほしいんだよ。だってそれでもこうやってできてるじゃない? 前にも言ったけど、魔法はさ、魔力量は置いといて、発想力応用力が結局大事であとは魔力をいかに自分の手足みたいにコントロールするかなんだよ。だからイクミの感覚でやってみて?」
「もちろん意地悪じゃないってことはわかってるけどね……。実態のない未知のものをどうにかしろってのはなかなかさぁ。……ま、やってみるけど」
「ヴァンもこう言ってるんだから楽しみながらやればいい。毎日やらなくてもいいんだぞ。努力家なのはいいところだが、イクミは真面目すぎる」
もっと遊びながら学べってことなのかね。あれだな。小さい子どもみたいだ。
たださ、楽しみながらって言われても楽しめるところまで達してないんだよね。えっと、走ったりジャンプしたりしたいのにやっとつかまり立ちしました的な? もっと何かわかりやすいヒントとか欲しかったのに、あんなこと言われたらヴァンからは引き出せそうにないや。
「わかったよ……のんびりやってみる」
とりあえずはあれだな。あんなに一生懸命やらなくても魔力を集めるのができるようにならないとだよね。動かすのはそれができるようになってから。
あっちじゃ「ふーん」って聞き流していたスモールステップというやつ。大きな目標のために途中に小さな目標を立てて少しずつクリアして成功体験を積むとかいう……。
俺は今まで何かをやってみたときあまり考えなくてもそれなりにできてしまっていたから、そういう計画を立ててやってきたことがなかったからなぁ。でも、この世界に迷い込んじゃってから初めてのことが多くて、できなくても笑うんじゃなくて支えてくれる人がいて、ちょっとずつ頑張る自分を再発見したよね。日本でただぼーっと生きていたら今もそんなに頑張らないで適当に日々を過ごして、適当に就活して受かったところに就職してーみたいな未来が目に見えすぎてる。それはそれで俺の生き方っぽいっちゃそうなんだけど、今の自分は「生きてる!」って感じがするんだよね。
まあ実際、今は文字通り生きるために必死だとも言うんだけどさ……。
とはいえ、あっちに魔法があるわけじゃないからアニメやらゲームやら色んなもののいいとこ取り……ってわけじゃないけど、まあでもそれに似た感じでいろいろ試してみた。結果、一番手応えを感じたのが『気功』みたいな感じ? 丹田に集中して~みたいなやつ。
自分の身体という器にうっすい少なーい魔力が散らばってると仮定して、それを感じるには濃くしなきゃいけないんじゃないかなって思ったから、一旦丹田に集めるようなイメージでね。これは全部俺の妄想ではあるんだけど。でも腹の下が温かくなってくる気がするんだよ! ルイの魔力のほわほわと似た感じの。
「やっぱ俺の魔力が少なすぎて感じにくいってことで合ってるんだよな……本当に集まってるのかは不明だけど集めるイメージすると温かくなるし。イメージやめるとなくなる気がするから……」
夜、部屋に戻ってからが俺の宿題タイム。
魔法の練習を始めてからは昼はお手伝いと鍛錬、夜は寝るまでの時間で魔力を感じるためのいろんな実験をしてるような感じだった。でも、この感じだったらヴァンに言ってみてもいいんじゃないかな? 数日試してみて毎回同じような感覚になるから偶然でもなさそうだし、ここまで頑張ったんだからこれが間違ってても少しはヒントとかくれてもいいと思う。
◇◇◇
いつもの鍛錬のあと、ヴァンに時間を取ってもらった。もちろんルイもいてくれる。
「おヘソの下に魔力を集めるのをやってみるね。俺は多分これできてると思ってるんだけど、客観的に見て教えて欲しい」
「いいよー。じゃあ、できたと思ったら声かけてね」
「まだ気が散ると上手くできないから、できたと思ったときに手を挙げるよ」
俺は地面に胡座をかいてお腹に両手を当てて集中を始める。部屋での練習がこのスタイルだったから、今はまだこれじゃないとピンとこないんだよね。座禅とか瞑想とか気功とかなんか色んなものをごちゃ混ぜにして作り上げちゃった俺のスタイル……。
自分の内側を意識して、ぎゅーっと集めていく感じ。俺が色々試した中で一番良かった気功っぽいスタイルを、もっと成功しやすくしたのは意外にも科学的なイメージ。昔、理科の実験でやっただろ? フラスコに栓をして空気を引くと内側が曇るやつ。あんな感じでお腹に置いた手でグッと引っ張る想像とそれによって自分の内側に雲ができるような想像をする。
ほら、ジワジワと温かくなってきた……大丈夫かなと思えたところで集中が切れないようにそっと右手を挙げた。
そしたら、ポンと頭に手が乗った。目を開けると満面の笑みを浮かべるヴァンとジッと俺を見てるルイがいた。
「上出来上出来!」
「イクミはやっぱりすごいな」
褒められた! って思った瞬間お腹の温かいのは消えちゃったけど、とりあえずはヴァンの宿題をクリアできたみたいだ。ちょっと時間はかかったけどちゃんとできたのが嬉しい。
「じゃあね、次! 魔力を移動させてみようね」
「は?」
「お腹に集めただけじゃ魔法使えないでしょ? 魔力コントロールのいい練習になりそうだから、お腹に集めた魔力を散らさないように手の平に移動させてみて。これが次の宿題ね」
「えええ……」
それはちょっと難易度高すぎないかな。やっとなんとかこれで感じられてるかな? ってとこにきたばかりなのに。
「オレはね、イクミにはこっちの常識を押しつけたくないんだよね。イクミの思うとおりに自由にいろいろ試してほしいんだよ。だってそれでもこうやってできてるじゃない? 前にも言ったけど、魔法はさ、魔力量は置いといて、発想力応用力が結局大事であとは魔力をいかに自分の手足みたいにコントロールするかなんだよ。だからイクミの感覚でやってみて?」
「もちろん意地悪じゃないってことはわかってるけどね……。実態のない未知のものをどうにかしろってのはなかなかさぁ。……ま、やってみるけど」
「ヴァンもこう言ってるんだから楽しみながらやればいい。毎日やらなくてもいいんだぞ。努力家なのはいいところだが、イクミは真面目すぎる」
もっと遊びながら学べってことなのかね。あれだな。小さい子どもみたいだ。
たださ、楽しみながらって言われても楽しめるところまで達してないんだよね。えっと、走ったりジャンプしたりしたいのにやっとつかまり立ちしました的な? もっと何かわかりやすいヒントとか欲しかったのに、あんなこと言われたらヴァンからは引き出せそうにないや。
「わかったよ……のんびりやってみる」
とりあえずはあれだな。あんなに一生懸命やらなくても魔力を集めるのができるようにならないとだよね。動かすのはそれができるようになってから。
あっちじゃ「ふーん」って聞き流していたスモールステップというやつ。大きな目標のために途中に小さな目標を立てて少しずつクリアして成功体験を積むとかいう……。
俺は今まで何かをやってみたときあまり考えなくてもそれなりにできてしまっていたから、そういう計画を立ててやってきたことがなかったからなぁ。でも、この世界に迷い込んじゃってから初めてのことが多くて、できなくても笑うんじゃなくて支えてくれる人がいて、ちょっとずつ頑張る自分を再発見したよね。日本でただぼーっと生きていたら今もそんなに頑張らないで適当に日々を過ごして、適当に就活して受かったところに就職してーみたいな未来が目に見えすぎてる。それはそれで俺の生き方っぽいっちゃそうなんだけど、今の自分は「生きてる!」って感じがするんだよね。
まあ実際、今は文字通り生きるために必死だとも言うんだけどさ……。
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