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大也、デートを邪魔されて更に不機嫌になる

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 刹那忍軍のナンバー2、冷越我威が大鳥邸を襲撃していたまさにその時。

 大也は本当に客室の窓から外に抜け出して、風忍法を使って夜遊びに出掛けていた。

 ずばり、おデートである。

 デートの相手はミニスカワンピースを纏ったムーンリングの19歳のラテン系金髪美女のシャカリ・ロビンマンだった。

 何せ、シャカリは昼間の任務の結末を完全に誤解しており、大也の事を『抜け忍を難無く倒した凄腕』と勘違いしている。

 強い奴はどの世界でもモテるのだ。

 お陰でアメリカ大使館内での帰りの着替えでモニカが離れた隙にデートのお誘いを受けていた。

 無論、敗北してハッチャケたい大也が断る訳もなく、デートは実現していた。





 その大也の外出デートを尾行するのが護衛兼監視員の金馬リョウだった訳だが、そのリョウのスマホの電話が鳴った。相手は大鳥宗次だ。『またか』と思いながら、

「こちら異常なし」

 リョウはそう答えたが、宗次の方はテンションマックスで、

『こちらは異常おおありだっ! 今すぐ客人を大鳥邸に連れ帰れっ! 刹那忍軍に襲撃されてるからっ!』

「はあ? 今すぐですか?」

『そうだ、頼んだぞ』

 それで電話は切れた。

 リョウは切れたスマホを見た後、ゴクリッと喉を鳴らして大也がデートしてる建造物を見上げたのだった。





 大也とシャカリのデート場所はスカイツリーだった。

 それも展望台の屋根の上の風が吹きさらす場所だった。

 無論、そんな場所、一般には公開されていない。

 無断で風忍法で楽々と辿り付いて、座って肩を寄せ合い、夜景を見ていたが、その内、アメリカ人らしくシャカリの方がチュッチュしてきて、大也も感激しながらキスを続けていた。

 もう舌を絡めた大人のキスだ。

 今夜こそ

 少しシャカリの方は任務っぽいがそれでもヤレる。

 大也は興奮しつつ、舌を絡めてキスをして胸を揉みながらシャカリを押し倒したのだが、そこに、

「ハアハア、死ぬかと思った・・・」

 お邪魔虫のリョウが展望台の上に登ってきた。

(嘘だろ。嘘だと言ってくれ。この状況だぞ?)

「手塚様ーー」

「ダメだ。何も言うな。聞きたくない。この状況を見て分からないのか? マジで風で突き落とすぞ、それ以上、口を開いたら」

 大也はそうリョウに吐き捨てたが、

「大鳥邸が刹那忍軍の襲撃を受けてるとの事です。お帰り下さい」

 デートを中断するに足る帰還命令だった。

「大鳥忍軍ってナメられ過ぎてないか?」

「ともかくお戻り下さい」

 リョウに言われた大也は心底情けない顔を押し倒してるシャカリに向けた。

 シャカリも大也のその顔で理解を示し、

「大丈夫よ、また次があるわ、ダイヤ」

 そう慰めて舌を絡めるキスしてくれたが、大也の不機嫌さはマックスに達したのだった。





 ◇





 大也はシャカリの他に、仕方なくリョウも連れて地上に降りた。

 シャカリをタクシーに乗せてからリョウが乗ってきたワゴン車に乗る事もなく、風忍法で疾風のごとく僅か2分で大鳥邸に戻ったが・・・

 戦闘はもう終了していた。

 大鳥颯太と冷越我威の勝負は痛み分け。大鳥忍軍の増援が到着した事で劣勢と判断した我威が隙を見て逃げ出していた。

 大也が超特急で帰還したのに事態が既に終結していたその原因は、襲撃時に宗次が大鳥邸に不在だった事とリョウにあった。

 金馬一族の忍法は馬とは関係ない。妖怪憑きは『鉄鼠』なのだから。つまり肉体を石や鉄の強度に硬化出来る戦闘系。それだけだ。鉄に張り付ける等々の能力はないが護衛には適してる。

 リョウ自身、遠めから唇を読めたりと他の能力も高い。

 だが、スカイツリーだ。

 全長はともかく展望台の屋上までの高さは450メートル以上。それを強風で吹き荒れる中、道具なしで登ったのだ。

 自力のみで4分で踏破したリョウの忍者としての技量を褒めてやるべきだが、大鳥邸不在の宗次からの連絡が来た時点で各所に援軍手配を済ませた後だった事から6分が過ぎており、結果、大也が帰った時には決着の後だった。これならデートを続けていても良かったくらいだ。

 リョウを連れた大也は颯太の前に着地した。

 颯太の方は左足に凍結の負傷を負ってる訳だが、

「大也君、『七人ミサキ』を始末したそうだな」

(えっ、何の事だ? ああ、あのジョニーって奴、そうだったんだ~。道理で電撃なんて使う訳だ)

 新情報にそう思ったが、大也の方はヤル寸前で帰還命令を出されたのだ。さすがにまだ不機嫌で、その程度の情報では表情の不機嫌さに変化はなかった。

「口止めされてるので」

「ムーンリングにだよね?」

「ええ」

「どうしてムーンリングと一緒に行動してるんだい?」

「日本の同盟国ですから。協力しないと」

「・・・結果がこれなんだが?」

 屋敷の状態を見渡した。氷漬けになってる場所が少しある。焦げてる箇所も。

「ホント、警備が笊ですよね、この大鳥邸って。わざと警備を緩くして敵をおびき寄せてるんですか?」

「んな訳あるかっ!」

「つまり、大鳥忍軍はナメられてる訳だ」

 『全部おまえの所為だろうがっ!』と怒り任せに吠えたかった颯太だったが、グッと我慢して、

「大鳥忍軍の敵潰しもこれからはやって貰うからね」

「嫌に決まってるじゃないですか」

 大也は別にノーと言える日本人ではない。

 ヤル寸前のところで邪魔された直後(まだ3分後)だったからだ。男なら誰もがやる瀬ない心情で断るはずだ。

「比較的言う事を聞くという約束のはずだが?」

「なので、キスして押し倒してる最中に我慢して戻ってきましたよ」

 大也が言い、監視員のリョウがその背後で『今はダメです』って顔をしたので、

「・・・ふむ、なるほど。それは確かに・・・」

 颯太の方が理解を示し、

「オレはもう寝ますんで」

 大也はそう言って客間へと帰っていき、颯太がリョウに、

「そうなのか?」

「はい、服を脱がしてるところでした」

 その報告を聞いて颯太は、

「それは少し悪い事をしたな」

 と同情したのだった。
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