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8人だから
心得
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桐郎の言葉にみんなが同意するようにうなずく。その気持ちはよくわかるが、無人島とクルーズ船での生活ってなんだ? サバイバル生活とはゆわれたが、あの言い草だとどちらかと言えば、ここで1年間生きられるか確かめると言った感じで、俺達を殺すことが目的ではない様だが。船内には水はろ過装置のお陰で今のところ無尽蔵だし食料もある。器具だってなんでも使えるらしいし……
「今ある自動販売機の食料は数に制限あるよね」
「甘味を除いたメインの食料が9つ、全部200あるってことを考えても……」
「8人の男が毎日食べとったらあっという間じゃろうなぁ」
「でも、最悪1日ぐらい何も食べなくても……すんません島っちパイセン、自分が悪かったんでそんな絶望した目で見ないでください」
「……中島さんの食い意地はさておいて、皆釣りや農業、罠作りをするのであれば力を得るために食事はするべきだとは思うぞ。最低でも1日に1回。理想は3食だが今はその様な贅沢も叶わんだろう」
食事処の窓から外を見た。海が広がっているだけで他には木しか見えない。深夜の無人島の景色は綺麗かもしれないが、やはり寂しさを感じる。遠くで鳥が飛んでいるのが目に入った、彼らのように羽が生えていたら簡単に家に帰れるのに、なんてことを考えるわけにはいかない。曲がりなりにも俺はリーダーなのだから。
浜辺はとても綺麗で、こんな状況じゃなけりゃ明日にでも遊びに行こうと言えるのだけども……幸いなことに全員サバイバル生活に関して不安はあるがマイナスな考えを持っている奴はいない。明日にでも自給自足の準備をはじめなければと思い直した。ここもリーダーとして何か言わないと。
「とりあえず今日は風呂に入って早めに寝るぞ。明日から本格的なサバイバル生活だからな」
「やった! みんな一緒にお風呂!」
ナタローは嬉しそうにピョコピョコと動いている。しかし桐郎、正宗さん、颯はちょっとバツが悪そうだ。どうした、まさか俺の言葉に不備があったか。
「圭吾くんあのね……」
「うん。わかるよ桐郎くん」
「…………」
桐郎と正宗さん、颯は視線を合わせてうなずきあう。一体なんなのだこの反応は。
「圭吾くん、ぼくたちは別々に入るよ」
ん、そうなのか。確かに俺は気にしないと言うだけで、友達であろうと誰かと風呂に入ることに緊張する奴は男女関係なく一定数いる。それでも桐郎とは小学校低学年までは一緒に風呂に入ってたんだがな。なんだか桐郎だけ大人になってるみたいだ。
「そうか……じゃあ先入るぜ」
「一緒やなの?」
「3人は一緒がいやみたいやな。ええやん、5人もおるんやし」
駄々をこねるナタローを広い大浴場に入れるぞといった感じで釣りながらなんとか宥める。先頭の信長は性格的にあまり人と並んで歩くことがないのだろう、俺たちをおいてスタスタ前に行く。同じ学年とは思えないぐらい社交性がある純次がわざわざ追いかけているのが微笑ましい。永作さんは俺達に付かず離れずな最後尾を維持していたが、ナタローの手により引っ張られ、先程俺の一歩半前に来た。
「そんなに急がんでも風呂場は無くなったりせえへんよ」
「違うもん、信長先輩に一番風呂取られちゃうじゃん! 1番風呂は永作先輩がいいの!」
「あいつ特にそう言うのは考えてないと思うぞ。ってか頼んだら普通に止まってくれるんじゃ……」
先輩思いなナタローにせめてものフォローした。真剣な話多分信長は本当にそういうのが頭にない。自分が快適な速度で歩き、俺たちだけじゃなく律儀に追いかける純次も突き放しているだけ。一番風呂なんて眼中にない、そんなやつだ。だからちょっと呼んで事情を説明したらすぐに止まってくれるはず。
「うーん……信長せんぱーい!」
「なんだ」
「イタッ」
案の定なんの躊躇いもなく止まった信長とあともうちょっとで追いつきそうだった純次がぶつかった。まさか追いかけていたやつが振り返るなんて考えもしなかったんだろう、かなりの速さを保ちながらぶつかった純次はフラフラとしている。それとは対照的に小柄な信長は全くと言っていいほど動揺を見せず、むしろ王子様の如く自分より身長が高い純次を抱きしめて支えている。あの頑強さ、サイボーグか何かか。
「加藤さん、大事はないか」
「あ、ありがとう……その、恥ずかしい」
「どういたしまして。そうか、悪いが我慢してほしい」
純次が照れくさそうに、しかししっかりと抱き返していて、なんだこの状況。まるでカップルみたいなやり取りをしている。でもすぐに切り替え信長は「田中さんどうかしたのか」と自分を呼び止めた聞き出している最中である。純次はせっかく同級生の信長と話せて嬉しそうだが、もうそれが終わってしまったと寂しそうにしていた。
「永作先輩の一番風呂!!」
「一番……そうか。この中では先達である工藤さんを優先しつつ入浴を実行すればいいんだな、理解した」
信長は純次を引き連れ最後尾についた。なんかよくわからんがこの2人は初対面とはいえ、仲は悪くはなさそうだ。まあ2人とも深い所ではマイペースだし、俺的には性格の違う似た者同士だ思うし、問題ないのかもしれない。
「今ある自動販売機の食料は数に制限あるよね」
「甘味を除いたメインの食料が9つ、全部200あるってことを考えても……」
「8人の男が毎日食べとったらあっという間じゃろうなぁ」
「でも、最悪1日ぐらい何も食べなくても……すんません島っちパイセン、自分が悪かったんでそんな絶望した目で見ないでください」
「……中島さんの食い意地はさておいて、皆釣りや農業、罠作りをするのであれば力を得るために食事はするべきだとは思うぞ。最低でも1日に1回。理想は3食だが今はその様な贅沢も叶わんだろう」
食事処の窓から外を見た。海が広がっているだけで他には木しか見えない。深夜の無人島の景色は綺麗かもしれないが、やはり寂しさを感じる。遠くで鳥が飛んでいるのが目に入った、彼らのように羽が生えていたら簡単に家に帰れるのに、なんてことを考えるわけにはいかない。曲がりなりにも俺はリーダーなのだから。
浜辺はとても綺麗で、こんな状況じゃなけりゃ明日にでも遊びに行こうと言えるのだけども……幸いなことに全員サバイバル生活に関して不安はあるがマイナスな考えを持っている奴はいない。明日にでも自給自足の準備をはじめなければと思い直した。ここもリーダーとして何か言わないと。
「とりあえず今日は風呂に入って早めに寝るぞ。明日から本格的なサバイバル生活だからな」
「やった! みんな一緒にお風呂!」
ナタローは嬉しそうにピョコピョコと動いている。しかし桐郎、正宗さん、颯はちょっとバツが悪そうだ。どうした、まさか俺の言葉に不備があったか。
「圭吾くんあのね……」
「うん。わかるよ桐郎くん」
「…………」
桐郎と正宗さん、颯は視線を合わせてうなずきあう。一体なんなのだこの反応は。
「圭吾くん、ぼくたちは別々に入るよ」
ん、そうなのか。確かに俺は気にしないと言うだけで、友達であろうと誰かと風呂に入ることに緊張する奴は男女関係なく一定数いる。それでも桐郎とは小学校低学年までは一緒に風呂に入ってたんだがな。なんだか桐郎だけ大人になってるみたいだ。
「そうか……じゃあ先入るぜ」
「一緒やなの?」
「3人は一緒がいやみたいやな。ええやん、5人もおるんやし」
駄々をこねるナタローを広い大浴場に入れるぞといった感じで釣りながらなんとか宥める。先頭の信長は性格的にあまり人と並んで歩くことがないのだろう、俺たちをおいてスタスタ前に行く。同じ学年とは思えないぐらい社交性がある純次がわざわざ追いかけているのが微笑ましい。永作さんは俺達に付かず離れずな最後尾を維持していたが、ナタローの手により引っ張られ、先程俺の一歩半前に来た。
「そんなに急がんでも風呂場は無くなったりせえへんよ」
「違うもん、信長先輩に一番風呂取られちゃうじゃん! 1番風呂は永作先輩がいいの!」
「あいつ特にそう言うのは考えてないと思うぞ。ってか頼んだら普通に止まってくれるんじゃ……」
先輩思いなナタローにせめてものフォローした。真剣な話多分信長は本当にそういうのが頭にない。自分が快適な速度で歩き、俺たちだけじゃなく律儀に追いかける純次も突き放しているだけ。一番風呂なんて眼中にない、そんなやつだ。だからちょっと呼んで事情を説明したらすぐに止まってくれるはず。
「うーん……信長せんぱーい!」
「なんだ」
「イタッ」
案の定なんの躊躇いもなく止まった信長とあともうちょっとで追いつきそうだった純次がぶつかった。まさか追いかけていたやつが振り返るなんて考えもしなかったんだろう、かなりの速さを保ちながらぶつかった純次はフラフラとしている。それとは対照的に小柄な信長は全くと言っていいほど動揺を見せず、むしろ王子様の如く自分より身長が高い純次を抱きしめて支えている。あの頑強さ、サイボーグか何かか。
「加藤さん、大事はないか」
「あ、ありがとう……その、恥ずかしい」
「どういたしまして。そうか、悪いが我慢してほしい」
純次が照れくさそうに、しかししっかりと抱き返していて、なんだこの状況。まるでカップルみたいなやり取りをしている。でもすぐに切り替え信長は「田中さんどうかしたのか」と自分を呼び止めた聞き出している最中である。純次はせっかく同級生の信長と話せて嬉しそうだが、もうそれが終わってしまったと寂しそうにしていた。
「永作先輩の一番風呂!!」
「一番……そうか。この中では先達である工藤さんを優先しつつ入浴を実行すればいいんだな、理解した」
信長は純次を引き連れ最後尾についた。なんかよくわからんがこの2人は初対面とはいえ、仲は悪くはなさそうだ。まあ2人とも深い所ではマイペースだし、俺的には性格の違う似た者同士だ思うし、問題ないのかもしれない。
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