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13章

333話 読み込むのは大事って話

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「うっわ、何だよ、この状況……」

 トカゲの奴が上から降りてきて、銃工房と私の惨状を見てドン引きする。色々なパーツが転がっている上に、私らしくない煩雑な状態、ゴミ屋敷の様に辺りにパーツが散らばっていて、ぐっちゃぐちゃ。

「人間上手い事行かないと駄目になるな」

 トカゲの声で少し我に返ったのでどかっと地べたに座って葉巻を咥えて火をつける。現実だったら火気厳禁なんだろうけど、私が自爆した一件でしっかり対策が取られているので問題無し。こういう時にゲームだって分かってると楽しめる。

「ばらしたパーツは流用出来る時もあるんだし、無駄にするんじゃねえぞ」
「使い回せていたら使ってるっての」
「って言うか何やってんだ……G4の残骸だってのは分かるけど、これ1丁10万くらいだろ」
「いや?7万くらいだけど」
「そんなもんだったか……それにしても何作ってるんだ」
「ダブルバレルのオートマチックって浪漫銃」

 失敗したダブルバレルのG4を手に取ってがしゃがしゃといじるのだが、うまい事コッキングが出来ない、発射する時に分離する、等々、素人がむりくりやっている割には形になってはいるが、発射したらダメになるパターンでもう何個も駄目にしている。

「1から全部作るってのは?」
「その可能性しかないって思ってるとこ……たださあ、G4の本体が金属と樹脂混ざってるし、手持ちの金属じゃ軽いのが無いでしょ」
「ああ、そこなあ」
「そうなのよ、鋳造さえできればさくっと完成出来る目処があるし、パーツを溶かして新しく成型ってのも考えたんだけど、そっちは無理だったから諦めてる」
「1から作ると素材の問題、製品から作ると弄り切れなくて失敗、か」

 トライアンドエラーで辿り着いた答えがこれと言うのはな。いや、そもそも金属の種類が足りないってのと、樹脂素材が今後必要になるというのは分かり切っていた話だ。共有のボックスに入っているのが鉄、銅、鋼、錫、鉛で、それ以外の金属も見つけていない状態でどう銃を作れと言うんだって事よ。

「そういえば銀と金って見つけた?」
「鍛冶クランではちらほらあるけど、武器としては弱いからあんまりだな」
「まあ、銃でも使うかって話になったら使わないんだけど」

 柔らかい金属はどっちかって言うと弾頭に使う方が効果的ではあるんだが、弾側の方で威力を上げるってのは安定供給が出来ているって条件で、なおかつ銃本体の方がよくないと弾を良くしたところでいまいち効果が良くない。って言うかぶっちゃけた話、銅と鉛さえあればダムダム弾作れるから、弾の問題はそこまでだって話になる。

「銀フレームの銃ってのは浪漫があるんだけどな」
「装飾重視の銃ってのはあんましなあ……」
「そういう浪漫は好きじゃないのか」
「銃に限って言えば、美術的な浪漫よりも機能美としての浪漫がいいかしらねえ」

 作っておいたダブルバレルG4をがちゃがちゃと弄って、失敗しているのが分かったのでばらして葉巻の紫煙を思いっきり吐き出す。なんかうまい事行かないなあ、これ。

「ニコイチって訳でもないから難しいか……オートマチックじゃ無理じゃないのか?」
「ペッパーボックスと中折れは成功すると思う、特に前者は装填の面倒さ、さえ省ければ刻印付けた鉄パイプで纏めるだけだし」

 前者は良いとして、後者はやってみないと分からない。
 中折れに関してはCHが逸れに該当するわけだけど、オートマチックよりも機構は簡単だし、やってみれば出来るような気がするが、あれ1本で50万くらいするので失敗した時の赤字がえげつない。ニコイチするとなると一本作るだけで100万よ、何回試作したら完成するかもわからん所に予算を突っ込むってかなりリスクがある。
 ある程度成功するビジョンがあるのなら良いんだが、全くもってその成功するビジョンが見えない所にじゃんじゃか金を突っ込むってのは厳しい。やりすぎたら確実にうちの秘書に使いすぎだって怒られるのも分かる。

「やっぱりギャザラーをスカウトするってのが早急だと思うのよねえ」
「そうだな……俺たちだけじゃ無理、ニーナは木工だから鉱石は専門外」
「ジャンキー、ポンコツ、紫はそもそもスキル2枠を使えないし、髭親父も金髪エルフも自分の関係ないのははからっきし」
「……よくもまあ、うちのクランを纏められてるもんだ」
「改めてそう思うわ」

 こう考えると癖しかない自分のクランだが、何をどう考えて纏まってるのか改めて不思議だわ。
 そんな事よりも、やっぱりうちのクランとして弱いのは生産力だ。製品を作るというよりも、素材を集めるという点で弱いのがやっぱり問題になる。
 
「いつかやろうと思っていた事がここにきてだなあ……」
「ギャザラーの紹介は?」
「犬野郎の紹介は空ぶったかな、何回か行ったけど、ずっと不在で1人も会えなかった」
「どん詰まりだなあ……じゃあ情報クランは?」
「素材があるかどうかくらいまでかな、それ以上もそれ以下もでなさそう」
「後はトライアンドエラーで試しまくる、いま手に入るアイテムでどうにかするってとこか」

 こうやって問題含めて色々考えていくと、問題が山積みだ。

「まずはこの残骸を片付けよう」
「接続パーツは死ぬほど余ったぞ」
「……一つ聞くけど、何個使ったんだ」
「ざっと20丁くらいかな」

 その個数を聞いてため息を思いっきり掛けられる。なんだよ。

「俺に言えばもうちょっと試作出来たろ……」
「そりゃそうなんだけど、こういうのはあれこれ試して自分でやりたいんだよ」

 21丁目のG4を取り出すと共に、まずは全てをバラシて左利き用に……。

「何やってんだ?」
「左利き用に改造してる」
「それ、アイテムの設定ですぐできるだろ」
「何でそんな事知ってるん」
「このゲームの仕様だよ、どの武器も利き手の切り替えが出来るからユーザーに優しいんだ」

 そうなると私は今まで右利き用の武器を左で使っていたという事になる。今まで特に問題も無いし、気にした事も無かったから良かったが。

「えー……そういうのはもっと早くいえよ」
「右利き左利き関係なく武器使えるだろ、ボスって」
「って言うかどこから設定するんだよ、それ」
「えーっと、アイテム詳細のオプションを開いて、アクセシビリティの項目、身体動作の項目に行って……」
 
 ずっとその設定を聞いていく訳だが、頭痛が痛いレベルで色々と項目を弄らないといけない。

「つまるところ、一般的じゃないゲームオプションを弄るんだよ」
「……めんどくせえ……ワンタッチで左と右切り替えたいんだけど……」
「その項目を弄るとアイテムの詳細画面で弄れるんだよ」
「分かった分かった、やるやる」
「よくもまあ弄るってのにオプションに目を通さなかったなあ……」
「普通は音量とグラフィックくらいしか弄らないのよ」

 オプションを隅々まで見てあれこれやる何て変態すぎるっての。

 
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